12.偽物恋愛トラッパー
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「嫌です。」
「嫌ってお前…あのね…。」
想像通りのヒナの返事に孝之助はガクッと肩を落とした。
「そういうのは九条さんが得意でしょう。」
「だから…お前以外は全員撃沈したんだって。」
その言葉にヒナは更に怪訝そうな顔を浮かべると、余程嫌なようで孝之助に背を向けパソコンに向かった。
『ヒナさん…お願いします。依頼人が全員やれとおっしゃっているので…。』
「今お前がやってる依頼の納期伸ばしてもらうよう言っとくからさ、頼むよ。駄目だったらもうそれでいんだから。」
「……。」
二人の懇願にヒナはハァと溜め息をつくと、分かりましたと頷いた。
その様子を見て佐奈は、喜びと不安が入り交じったような複雑な表情を浮かべた。
(…仕事だもん!気にすることなんてない…!!)
そう何度も頭の中で言い聞かせ自分を必死に奮い立たせると、佐奈は調査に向かうヒナを事務所から笑顔で見送ったのだった。
................................
ー…コソッ
「あのインテリがどうやって玉砕するか見物だな~。」
「ヒナには悪いですが同感ですね。」
『なっ…!?和泉さんに九条さんまで…何でここに?!』
対象のもとへ向かったヒナを見送ったはずの佐奈だったがどうしても気になってしまい、ヒナの後を追って街中まで着いて来てしまっていた。
「お前こそ何やってんだよ。」
『わっ…私は仕事上のパートナーとして見守る義務があると思いここにいるまでで…!!』
「"仕事上のパートナー"ねえ……。」
『…な、なんですか!?』
和泉が佐奈に疑いの眼差しを向けていると、対象の女性がヒナの方へと歩いて来ていた。
女性はキョロキョロしながら路面店に出入りを繰り返し、1人買い物を楽しんでいるようだった。
「お、来たぞ来たぞ~…ん?」
「……ヒナ…あれ声かける気絶対無いでしょ。」
『ヒナさん…。』
ヒナは携帯を見ながら壁に寄りかかって立っていたのだが、対象が前を通り過ぎても話しかける事はせずただ黙ってそれを見送った。
だが次の瞬間、三人が目を疑う光景が目の前で繰り広げられた。
「ん…?あれ…対象が引き返してきてヒナに声かけたぞ…何で?」
「え…ヒナ今何かしました?何で…。」
『ま…ままままさか逆ナンパ…ですか!?』
状況をうまく呑み込めず動揺する三人をよそに、
対象とヒナは少し話をするとそのまま二人でファッションビルの中に消えて行ってしまった。
『「……。」』
『九条さん…対象は素行に問題ありかと思われます。即刻報告を。』
「…佐奈さん、目が座ってますよ。」
「解せん…!!!!なんであんな根暗メガネがモテるんだよ!!メガネ男子ブームのせいか!?世の女は皆バカばっかりだ!!」
三人が呆然と状況を飲み込めないままでいると、九条の携帯に孝之助からの着信が入った。
「あ、はい九条で…」
「だあああれが全員でヒナの調査に着いて行けって言ったーーーーー!?事務所無人だったじゃねえかさっさと三人戻って来い!!!!!」
「…すみません…つい…。」
『あの、孝之助さん…ヒナさん対象と一緒にいなくなっちゃったんですが…。』
電話口から聞こえてきた佐奈の不安げな声に、孝之助は少し言い出しづらそうに答えた。
「対象に今日一日付き合って欲しいって言われたんだとよ。俺もどういう経緯か詳しくはまだ聞いてないんだが…。」
『………そう…ですか…!!ならいいんです、分かりました!!』
佐奈は急きょ取り繕った明るい声で返事をすると、孝之助との電話を切り九条に携帯を返した。
「…とりあえず事務所に戻りましょうか。」
『あ、は…はい…!!』
「……。」
心臓がドクドクと振動を感じるほどに脈打つ。
公私混同してはいけない。これは仕事で、ヒナさんもこんな事に流されるタイプじゃない。
でも…
今あの女の子とヒナは楽しく買い物しているんだろうか、回りから見たらあの子はヒナの彼女に見えるのだろうか。
ヒナが好きにならなくとも、女の子の方がヒナを好きになってしまっているんじゃないだろうか。
佐奈の妄想はとどまる事を知らず不安ばかりが堂々巡りを繰り返していた。
仕事だろうとなんだろうと嫌なものは嫌だなんて思う私は…やっぱり子供じみてるんだ。
(いいなあ…ヒナさんとデートなんて…私がしたいよ…。)
佐奈は重い重い足取りで事務所へと戻り、
その日は案の定、一日中仕事が身に入らなかった…。