12.偽物恋愛トラッパー
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翌日、早速九条は対象の女性に接近した。
誘いに乗せてデートに持ち込めるか否かで判断をするという事で話は進み、九条はいつも通りの手筈で一日でカタが付くものと思っていた。
ー…バタン
「…ただ今戻りました。」
「おー九条っちお帰り~流石仕事が早いね!!どんな子だった?何か分かった?」
夕方、予定よりも早く事務所に戻った九条に、孝之助は意気揚々と話しかけた。
「……分かりました。」
「うんうん、何が?」
「…あの女の目が節穴だということが、分かりました。」
「…へ?」
『え?』
驚く二人が九条から話を聞くに要約すると、デートに持ち込むどころか全く相手にされなかったらしく、
こと恋愛に関しては百発百中の精度を誇っていた九条なだけにそのダメージは大きかったようだった。
「孝之助さん…少し時間を下さい…そうすれば意地でも私なしじゃ生きていけないくらい惚れさせてやりますから…!!!!!」
『九条さんそれ目的違いますっ!!いや、良かったじゃないですか!!一途だったって事ですよ!!』
「うーん…まあ単純に好みじゃなかったってこともあるしな…もうちょい手を変え足掻いてみるか。」
『手を…変える?』
孝之助は不思議そうな佐奈にニヤッと笑うと、部屋の奥でゴロゴロしていた和泉を呼びつけた。
.......................
「おい、あんたちょっと付き合え。」
「お姉さん可愛いね、今から一緒にお茶でもどうですか?」
手を変え今度は孝之助と和泉が対象に声をかけに出掛けた。
だが当然の如く颯爽と撃沈し、事務所へあっという間に舞い戻って来ていた。
「…何なんだよ!!何で俺があんな好きでもねえ女にフラれなきゃなんねーんだよ!!!!」
「お前はそれ以前の問題だっ!!なんだあの背景!!ヤクザの恐喝か!!口説いてんのか脅してんのか分かったもんじゃねーわ!!!!」
「おっさんに言われたくねーわ!!なんだあの昭和風のプロトタイプの声のかけ方!!あんなんで捕まる女今時いねえわーーーーーー!!!!!」
「…ふん、私がダメだったのにモテない二人が行っても無理に決まってるじゃないですか。」
「何だとコラ!!てめえだってフラれてるじゃねえかバーカ!!!」
見事に三タテを喰らった事務所内で言い争う和泉と九条を見ながら、孝之助はハアと溜め息をついた。
「…あとはヒナだけだけどなぁ…うーん…。」
『…え…?』
そう言ってチラリと佐奈を見た孝之助に、佐奈は慌てて平静を装いながら答えた。
『な…何ですか?ヒ…ヒナさんを行かせるの…いいんじゃないですか?私は別に…なんでもないですし…。』
「……佐奈目ぇ凄い泳いでるぞ。まあどうせあいつが行ったってダメだろうしなあ…もうここで調査終了にしようか。」
『孝之助さん…。』
三人が撃沈して戻ってきた時、次はヒナが行かされるのではないかと佐奈は内心ヒヤヒヤしていた。
演技とはいえ好きな人が他の女性に声をかけデートをするのなんて見たくない。
仕事だという事を差し引いても、それが佐奈の素直な気持ちだった。
「じゃあ報告書まとめるか、佐奈。」
『…はいっ!!!』
孝之助は嬉しさを隠しきれない佐奈を見てフッと笑うと、報告書をまとめる為の準備に取り掛かった。
......................
ー…バサッ
「ということで…今回の調査では対象の素行には問題ないという結果でありました。」
「…ふーん…。」
孝之助の差し出した報告書を不服そうに見つめるモンスター依頼人は、全てを読み終えると何かに気付いたように口を開いた。
「…あら、おたくの調査員は女性以外に四人じゃなかったかしら?」
『!!』
「…はい、そうですがあと一人はこういった調査に根本的に向いていない為除外させて…」
「ふざけるんじゃないわよ、どういうタイプが引っかかるか分からないでしょ。その残りの一人も駄目だったら報告書持ってきて頂戴、まったく使えないんだから。」
『あの…でも婚約者の方は全く見向きもされず息子さんの事を一途に思っているのは明白でしたがこれ以上…』
「あんたみたいな小娘に何が分かるっていうの!!何の役にも立たないんだから男装でもして調査してきたらどうなの!!?」
『…す…すみません…。』
「あの、ちょっと言い過ぎでは。」
依頼人のあまりの態度と物言いに堪忍袋の緒が切れた孝之助は、依頼人を睨みつけ口を挟んだ。
「お客様と言えどもうちのスタッフを奴隷のように使っていいとは申し上げていないのですが。」
「とにかく調査は続行よ!!こっちはお金を払ってるのよ!!もう一人も無理だったならそれなりの証拠も一緒に見せなさい!!こっちはそんなに暇じゃないんだから頻繁に呼びつけないで頂戴!!!!」
ー…バタン!!!!!!!!!!!
「……。」
『すみません孝之助さん…私が余計なこと言ったせいで……孝之助さん…?』
「……あああああああああああああああああああああ佐奈塩撒け塩!!久々にこんなイラつく依頼人に当たったわ!!担当したのが和泉だったら首飛んでるぞ!!!!!!」
(確かに…。)
未だ怒りが収まらない孝之助は、ボスッとソファに腰を下ろすと申し訳なさそうに佐奈を見た。
「悪いがヒナに行って貰ってさっさと終わらせるしかないな…佐奈、ごめんな。」
『え!?いや…私は別に何も問題ないですよ!!仕事ですから当然です!!!』
佐奈はそう言うとニコッと笑顔を作って見せた。
その笑顔が無理に取り繕われていることは孝之助も承知していたが、やらないことには依頼がいつまでも終わらない。
孝之助は重い足取りで、ヒナの部屋のドアをノックした。