05.夜蝶の姫君
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ー…バンッ!!!!!!
「この携帯を使わなければもうこれ以上私の居場所を知られる事は無いんでしょ?なら後はあいつを捕まえるまで私を守って…!!」
るなはわなわなと震える拳を握りしめると、強い意志を持った目で孝之助にそう訴えた。
「そうですね…ストーカーの証拠がキッチリ押さえられれば警察も動くでしょうし…ボディーガードしながら証拠おさえる方向でいきましょうか。
あとじゃあこっちの携帯はヒナに渡しておいてもらっていいかな、何か分かるかもしれないし。」
「……うん、携帯二台あるから大丈夫。お願い。でも、ボディガードは誰が?」
そう言ってるながあたりを見回すと、孝之助は事務所の奥で相変わらずゲームをしていた和泉を引きずり出した。
「ああああちょ!!おっさんあと5分待って…やっとラスボス…」
「はい、こいつがその間ボディーガードしますので。」
「は?…この人!?この人で…大丈夫なの?」
「戦車でも持ってこられない限りは大丈夫ですよ。」
PSPを握りしめ相も変わらずゲームを続ける和泉をるなは心底不安そうに見つめると、何かを思いついたようにヒナの腕を握った。
「あ、じゃあこのメガネのお兄さんもお店に連れて行っていい?」
(なっ…にいいいいい!!!!!!???????????)
ヒナの腕に触れ寄り掛かるるなに、覗き見していた佐奈の心中は心底穏やかではなくなっていた。
その声なき声に当然気付いていないるなは、更にぐっとヒナとの距離を詰めた。
「店のスタッフで他にも同じようになってる子がいるの、だからその子の携帯もこのお兄さんに見て貰いたくって。」
「そっか…じゃあヒナ、和泉と一緒に行って貰っていいか?」
「はあ…。」
「仕事でキャバクラとは、探偵もやっとくもんだな~♪」
「…和泉、あくまで仕事だからな、飲むなよ。」
「えええええええええええ???」
ヒナがるなの申し出に気のない返事をし、不満を漏らす和泉と孝之助の話がまとまろうとした…その瞬間だった。
『あのっっっ…私も行きますっ!!!!!!!!』
「佐奈?」
突如勢いよく応接室に入って来た佐奈に一同が驚いていると、佐奈は必死に孝之助に詰め寄った。
『い…依頼人は女性です、私も一緒にいた方が何かと便利かと!!それに…ヒナさんが行くなら一緒に組んでいる私も、行くしかないと、いうか!!!!』
「…佐奈…わ…わかったわかった。落ち着きなさい…。」
しどろもどろながらも必死な佐奈の様子に、孝之助は瞬時に状況を察知し、笑うのをこらえながら言った。
「……そうだな、じゃあ佐奈とヒナと和泉、三人で行ってくるといい。」
『…はいっっ!!!が…頑張りますっっ!!』
「…何お前そんな張り切ってんの?」
「……。」
こうして佐奈は一人密かに美しい依頼人に闘志を燃やしながら、
半ば強引に夜の街、歌舞伎町へと向かうこととなったのであった…。
............................................................
ー…ガヤガヤ…
「「いらっしゃいませ~!!」」
『・・・!!』
煌びやかな店内に煌びやかなスタッフ。
そこは女である佐奈がもちろん足を踏み入れた事のない、どこか現実離れした世界だった。
(ま…眩しすぎる…そして私、場違い感半端ない!!!!)
スーツ姿の佐奈が浮きまくる状況の中、席に着いた和泉とヒナの周りには数人の綺麗なお姉さんが集まっていた。
「え~こんな若くてかっこいいお兄さんが探偵なの~?私も色々調べてもらいた~い♪」
「いいよ~俺が隅々まで調べてやろうか~♪」
「え~なにそれエローい♪」
『…………。』
明らかに顔が緩みっぱなしの和泉を思いっきり軽蔑した目で見ると、佐奈はヒナに近づくキャバクラ嬢達に目線を向けた。
「お兄さんさん背、高い~!!私背の高い人好きなんですよ~!」
「何で髪伸ばしてるんですか~?てか眼鏡男子いいですよね~かっこいいです~!!」
「………。」
(よっしゃ!!ヒナさん相変わらずの超絶塩対応!!!!!!)
相変わらず愛想笑いも返事もしないヒナの様子に内心少しホッとしていると、佐奈の前に綺麗な色のグラスが差し出された。
「はい、一杯どうぞ?えーと…佐奈ちゃんだっけ?」
『あ…姫…川さん…ありがとうございます。』
有無を言わせぬ笑顔に負けて佐奈がグラスを受け取ると、るなは飲み物を注ぎながらおもむろに尋ねた。
「佐奈ちゃん、あのメガネ君が好きなんだ?」
『ブハッ!!!!!!!!!!!!!!!!な…なんで…!?』
「ええ~?あれだけ目で追ってたら普通バレバレでしょ~。にしてもあの事務所イケメン揃いなのに何で彼?あ、やるのが上手いとか!?」
『変な事言わないで下さいっっ!!…ヒ…ヒナさんの良さは…好きになられると困るので教えられません。』
顔を真っ赤にしながら尻すぼみに絞り出した佐奈の言葉にクスクスと笑うと、るなは羨ましそうに佐奈を見た。
「いいなぁ…私もそんな恋がしたいなあ。」
『そんな…姫川さんならいくらでも出来るじゃありませんか…綺麗だし…。』
「……さあ、どうかしらね~…。」
どこをどうとっても自分より明らかに美人で、全てにおいて恵まれているように思えるるな。
そんなるなの言葉に、佐奈は不思議そうな顔で首をかしげた。
「自分から人を好きになって振り向いてもらうのってすごく大変よね…。
私はもう、そんなの疲れちゃって、好きになってくれた人をズルズルと好きになるばっかり。」
『…誰も好きになってくれるあてが無いから自分から好きになるしかないだけですけどね、私は。』
ふてくされたように言う佐奈に、るなはまた笑いながら言った。
「そんな事無いわよ。少なくともあなたの事務所の人はみんなあなたの事が大好きなように見えたよ?羨ましいくらいに。」
『へ…?』
「だからちょっとの間だけ、二人貸してね♪」
そう言ってニコッと可愛らしい笑顔を向けるるなに、佐奈は思わず顔を赤くしながら頷いた。
この笑顔にはどうも適わない。女の身ながら佐奈は、№1キャバ嬢というものを身を持って実感していた…。