Re:3 孝之助の恋愛事情
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ー…ガシッ…
「俺、実はもう付き合ってる奴がいるんだ、な?佐奈!!」
『……へ?』
「え!?」
「「えええええええええええ!?」」
がっしりと佐奈の肩を掴み引き寄せた孝之助に、皆は一斉に驚きの声を上げた。
佐奈は慌てて戸惑ったように孝之助を見上げると、孝之助は小さな声で佐奈に耳打ちした。
「悪い佐奈…ここは一つ話を合わせて協力してくれ…!!」
『か…構いませんが…また嘘でごまかす気ですか孝之助さん!?ちゃんと話し合った方が…』
「お前はあいつに論破されたことねえからそんなことが言えるんだよ!!あいつ怖えんだって!!」
「何二人でヒソヒソと話してるのよ…。」
「そうだぞおっさん…!!一体いつの間に抜け駆けをおおおお…!!!!」
「和泉はやはりアホですね。」
「はい。」
親子ほどに年の離れた不自然カップルを目の前にした椿は、
ポリポリと頬をかく孝之助に何かを言いたげにしながらも、グッとその言葉を飲み込んだ。
「………もういいわよ、お幸せに!!」
「…椿…。」
孝之助にそう言い捨てると、椿は少し目に涙をためながら事務所から足早に去っていった。
そんな椿の後ろ姿を見ながら、孝之助は呆然と立ちすくみながら頭をかいた。
「あー…悪かったなお前ら朝から…ささっ、気を取り直して仕事仕事!!」
「孝之助さんってああいう感じがタイプなんですか…?」
「いやあ…あいつもまあ昔は可愛かったのよ…はは…。」
「てかそんな事よりおっさん!!佐奈と付き合ってるってどういうことだよ!!俺聞いてねえぞ!!」
「何、和泉あれ信じちゃってんの?」
「話の流れから言って嘘って分かるでしょう…。」
「えっ!?何だよ嘘かよびっくりさせんなよ~!!俺佐奈が母ちゃんになるのかと思ったわ…」
『………。』
椿がいなくなりいつもの姿を取り戻した事務所で、皆はそれぞれ何事もなかったかのように仕事へと戻っていった。
だがそんな中、佐奈だけは去っていった椿の姿が頭から離れず、皆に気付かれないようにそっとその後を追ったのだった。
ー…バタバタバタ…
『あっ…あの…!!』
「………。」
事務所から少し離れた並木道で声をかけ駆け寄った佐奈に、椿はあからさまに怪訝そうな顔を見せた。
そしてハアとため息をついたかと思うと、スタスタと再び歩き始めた。
「…何か用でしょうか。」
『あの用…というか…本当にこのままで良かったんでしょうか?わざわざここに来たのは何か孝之助さんに話したいことがあったからなんじゃないんですか…?』
「…元彼女の心配までされるなんて、余裕ね。あなたに同情なんてしてもらいたくないわ。」
『そんなつもりじゃないです!!ただ…同じ女性として、どうしても気になって…』
「……。」
ギリギリと突き刺さる椿の視線にここまで来たことを少し後悔していた佐奈だったが、
佐奈のその本気で心配した様子に、つっけんどんな態度を取っていた椿も少し態度を丸め始めた。
「別に……ずっと忘れられなかったから会いに来ただけよ、やっとの思いで手に入れた人だっただから…余計にね。」
『やっとの思い…?』
「…本人あんな調子だし男ばっかりの職場であなたも気付いてないんでしょうけど、ああ見えて南在くん凄くモテるんだから。うかうかしてたら他の女に狙われるわよ、勿論私も含めてね。…じゃあ私はこれで。さよなら。」
『……あ…。』
椿はそう言うと、くるりと踵を返し、騒がしい雑踏の中に姿を消した。
佐奈はそれ以上はさすが後を追うことも声をかけることも出来ずに、どこか釈然としない風にトボトボと事務所に戻っていった。
(私が首を突っ込むことじゃないし、彼女って思われてる以上ややこしくするだけって分かってるんだけどね…でもなー…)
『……。』
(孝之助さんも…ホントにこれでいいのかなあ…?)
佐奈がそんな事を考えながら上の空で足を進めていると、いつの間にか目の前には佐奈を探していたらしいヒナの姿があった。
ヒナは佐奈を見るなり、少し急いだ様子で声をかけた。
「佐奈、もう行かないと間に合わない。」
『……え!?もうこんな時間!!すみません!!』
「タクシー呼んであるから準備して。」
『はい!!……………ん?』
「…どうした?」
『あ…いや、何でも…。』
佐奈はなにか自分に向けられた視線を感じたような気がしてキョロキョロとあたりを見回した。
だが二人の周りにはこれと言って人影もなく、佐奈は不思議そうに首を傾げながら急いで事務所に戻って行った。
(何か視線を感じた気がするんだけど……気のせいかな…?)
だが、それからというもの佐奈の感じた違和感は終わる気配をみせず、
日も暮れ佐奈が家に帰り着くまでずっと、その視線は佐奈にまとわり続けたのだった…。