Re:3 孝之助の恋愛事情
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「あら、元カノが会いに来たのがそんなにマズイのかしら?ああ、あの"彼女"に怒られるから?」
そう言って椿が孝之助に詰め寄ると、孝之助は不思議そうな顔で一旦間を置いて考え、慌てて言葉を返した。
「か…彼女…?ああ…!!アハハ…それよりお前何でここが…」
「私の結婚相談所に回ってきた名簿に南在くんの名前見つけて、まさかと思って来てみたの。」
「お前今そんな仕事してんのね…ってあのなお前それ犯罪だからな!!人の個人情報勝手に使用しやがって…」
「それよりあの女はまだ一緒に働いてるんでしょ?どこにいるのよ。」
孝之助の言葉を椿が完全に遮ると、キョロキョロと誰かを探すようにあたりを見回した。
だがそこに椿の目的とする人物は見当たらなかったようで、椿は少しニヤッと笑いながら孝之助に言った。
「何、もう辞めちゃったの?…もしかして別れたとか?」
「えっといや…えー…」
『"あの女"って…誰なんですか…?』
状況に全くついていけていない佐奈が言い合う二人に不思議そうに尋ねると、椿は不機嫌そうにムスッとしながら言葉を返した。
「私が南在くんと付き合ってる時の南在くんの浮気相手。お陰で結婚間近だった私達は破局することになって…全く今思い出しても頭にくる…名前なんだったかしら…」
「いや、もうお前まじで過去ほじくり返すな帰れ帰れ!!おい、お引取り願え!!」
「………思い出した…誠子‥九条誠子よ!」
『へ?』
「えっ…?」
「……………。」
椿の口から出た予想外の、でも聞き覚えのある名前にその場にいる全員が凍りついた。
そして目の前で立ちすくむ九条に、恐る恐る目を向けたのだった。
ー…ヒソヒソ…
「おい…どういうことだよ…誠子ってあいつが女装した時の名前だろ?浮気ってまさかおっさんゲ…」
「馬鹿言ってんな!!いやー…実は昔椿と別れる為に九条っちに騙すの手伝ってもらったことがあってなあ…ハハハ…」
『どうするんですか孝之助さん…もう正直に本当のこと言ってちゃんと説明するかもう一回付き合った方が…』
「いや~それはマジ勘弁してくれ~あいつ結婚魔なんだよ…俺はあいつとはそんな気になれねえけどどうしても納得してくんなくてな…」
『ああ…では彼女が電話線バッサリの方なんですね。』
「電話線バッサリの方って…いや、ここはしょうがねえもう一回九条っちにお願いして…」
三人がヒソヒソと詮索を続ける中、椿は少し嬉しそうな表情を浮かべながら孝之助に詰め寄った。
だがそんな空気を割って入るように、沈痛な面持ちをした九条がポツリと言葉を漏らした。
「でもその子とも別れたんなら私ともう一回やりなおさない?こんな歳まで独身なんて後々寂しくなるわよ、ね?」
「えっと、いや、あの別れてない!!わかれてなくって…」
「……した。」
「へ?」
「誠子は現在消息不明です、のでご自由にどうぞ。」
(あいつ女装回避する為におっさん売ったぞ!!!)
(酷い!!九条っち酷い!!!!)
(よく考えて下さい!!一番酷いのは孝之助さんです!!)
オロオロと戸惑う三人を横目にそう言い捨てた九条は、何くわぬ顔で仕事に戻っていった。
だがその九条の吐いた適当な嘘に椿は少なからずショックを受けたようで、先程までの勢いとは打って変わって頭を垂れた。
「消息不明!?ごめんなさい…私…そんなこととは知らなくて…。」
「えっ!?あ…ああ…そうなんだ…まだあいつを失った悲しみが癒えてなくてな…全く情けない話だよ。」
「……プッ…ククク…ちょ…誰だよあいつって…あいつら誠子がいなくなったことにしんみりしてんの?やばいウケるwww」
『ちょっと和泉さん私も笑うの我慢してるんだからわっ…笑わないでくださいよ…www』
「……アホらし。」
事務所の真ん中で三文芝居を続ける孝之助とそれを影から必死に笑いをこらえながら見守る面々。
そのことに全く気付く様子のない椿は、目頭を押さえ迫真の演技を続ける孝之助を励ますように言葉をかけた。
「でも彼女だって何か理由があったのかもしれないしきっと無事でいるわよ…!!南在くんがいつまでも悲しがってちゃダメよ…そうでしょ?」
「うっ…そうだな、俺もこれからもアイツの事を胸に抱きながら生きて…」
「だったら!!」
「へ?」
「新しい恋に目を向けるのが一番の薬になると思うの…!!私で良かったら手伝うわ、南在くん!!」
(((えええーーーーーーーーーーー!?)))
『ふ…振り出しに戻りましたよ!!』
「あの女なかなか丸め込むのがうめえな…なんかおっさんが誠子使わないと別れらんなかったってのも分かる気が…。」
「まあそうでしょうねえ、あの人も元々やり手の弁護士ですから。」
『「えっ…!?弁護士!?」』
突然二人の背後に現れた九条の言葉に和泉と佐奈は驚いて後ろを振り返った。
九条はメガネを掛け顔を隠すようにすると、二人の影に隠れながら言葉を続けた。
「孝之助さんがフリーになるまでの弁護士事務所にいる頃からの付き合いだとか。フリーになってからは忙しくて疎遠になって、探偵事務所を立ち上げてすぐ別れたんですが…というか彼女私の顔覚えてそうなんでもう早く帰って欲しいんですけども…。」
「別れたって…別れさせたのはお前だろうがよ~誠子ちゃんよ~。」
「和泉…黙らないと今後奇跡的に和泉に出来た彼女に浮気相手だって誠子で名乗り出ますよ。」
「嘘ですごめんなさいやめてください。」
孝之助とヨリを戻そうと強硬姿勢をとる椿に、元来女性に強気に出るのが苦手な孝之助は完全に及び腰になってしまっていた。
チラチラと皆に助けを求める視線を送っていた孝之助だったが、誰一人そのことには気付いてはいなかった。
「ねっ?南在くん。」
「えっと…いやあ…それがなぁ…」
そうして誰も助けてくれず完全に追い詰められた孝之助は、
この状況を打破するべく、とっさに皆を巻き込むこととなる苦し紛れの嘘をついてしまったのだった…。