03.スクリプトキディ
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ー…ガチャ
『戻りました~…。』
「おお、佐奈おかえり。ちょうど今からヒナが状況説明するってだからお前も来い!!」
『…はい!!』
事務所に到着し、武蔵や孝之助らと共にヒナの部屋に入ると、
ヒナはいつもと変わらぬ淡々とした口調で武蔵のパソコンの状況を説明し始めた。
「掲示板の削除要請は対応してくれないのでこっちから強制的にダウンさせました。あとパソコンのディレクトリに複数回アタックされた形跡があってバックドアがしこまれてます。恐らくボット系のウイルスだと思いますからハーダーから情報を抜き取られるのは勿論他サーバーに対してDoS攻撃を仕掛ける発信源になるとも…」
「…ヒナ。」
「…はい?」
「ほとんど何言ってるのか分からん。未だワープロ&ガラケー使用のおっさんを気遣え。」
「…。」
全員の頭にクエスチョンマークがついている状況を見て、ヒナは説明を止め武蔵に尋ねた。
「…メールか何か…受け取った?」
「…?小次郎から…ってことですか…?そういえばちょっと前に変なメール貰いました。」
「どんな?」
「この写真ばら撒くぞ、ってタイトルでリンクが貼ってあったんですけど、リンク先の写真に俺見覚えなくて小次郎勘違いしてるんだと思ってメール消したんですが…。」
武蔵の言葉にヒナは頷きパソコンの方に向きなおした。
「多分その時にウイルスをしこまれたんだと思います。ボット系のウイルスは送り主に情報を漏洩する。写真もよく使ってる掲示板の情報もそれで手に入れたのかと。」
「そんな…。」
「関係上怖くてリンクを開いたんだろうが、今後は不用意に開かない方がいい。個人のそれも高校生のパソコンの情報を他人がクラックなんてしても何のメリットもないから恐らく相手はその同級生だろう。」
武蔵は涙目で頷くと、孝之助がヒナに尋ねた。
「何とかならねえのか?写真を取り返してもう取られなくするような…。」
「今やってます。………!!」
「どうした?」
突如ヒナが何かに気付き武蔵のパソコンの前に居直ると、パソコン画面は数多くのタブが開かれ真っ暗になってしまった。
「ちょ…ヒナこれ何かやばいんじゃないの!?画面がおかしんですけど大丈夫か!?」
『これって…ハッキングってやつじゃ…。』
「…来た。」
ヒナは一言そう呟くとパソコンのキーボードに向かい、物凄い勢いでタイピングを始めた。
真っ黒な画面にあっという間に英数字が羅列され、何が起こっているかほぼ分からない佐奈達にもその緊張感だけは伝わっていた。
....................
ー…カタカタカタカタカタ…
「くそ…なんで写真が無くなってんだ…しかも何だこのセキュリティ…!?」
一方、家に帰り鬱憤を今度はネットで武蔵に晴らそうとしていた小次郎はパソコン画面にくぎ付けになっていた。
ー…カタカタカタカタカタ…
ー…カタカタカタカタカタ…
「…武蔵がやってるっていうのか…!?ちっ……もっと楽しみたかったけどしょうがねえ………お前の人生終わらせてやる…!!!!」
ー…カタカタカタカタカタ…
ー…カタカタカタカタカタ…
ー…カタカタカタカタカタ…
「…あれ?…え…なんだこれ!?なんで…!?」
今まで思い通りに動いていた小次郎のパソコンは突如言うことを聞かなくなり、小次郎の顔からはみるみる余裕が消えていった。
ー…カタカタカタカタカタ…
ー…カタカタカタカタカタ…カタ…
「…捕まえた。」
ー……バンッ!!!!!!!!
「くっそおおおおおおおおおおおお!!!!!」
小次郎のパソコンは完全に動作を停止し、部屋には小次郎の狂気にも似た叫び声だけが虚しくこだましていた。
..........................
ー…パタン
「…ヒナ?」
『どう…なったんですか?』
嵐が去ったようにタイプの音が止み静かになった部屋で、ヒナはふうっと息を吐いた。
「セキュリティを組み直します。とりあえず追い出しましたが相手も多少なりともクラッキングの知識があるみたいですし。」
「防げるか?」
「相手は他人の作ったクラッキングツールを使っているだけの子供です。馬鹿にしないでください。」
ヒナはそう言うとまたパソコンのモニターに向かって作業を始めた。
ー…ズキッ…
「…。」
「……ヒナ…どうした?」
一瞬タイプをしていた手を止め顔を歪めたヒナに、孝之助が心配そうに尋ねた。
「いえ…大丈夫です。」
「ヒナ…?」
「あの…朝比奈さん…ありがとうございます。」
「…別に…仕事だから。もう出てって。」
頭を下げ礼を言う武蔵にそっけなく返事をするヒナに佐奈が思わず駆け寄った。
『武蔵君!!ヒナさん怒ってるわけじゃないのよ?要約すると"気にすんな、後は俺に任せとけ☆"って感じで♪』
「このインテリメガネ、ツンデレだからな~パソコン関係の時だけよく喋るよな~ははは!!!!」
ー…がしっ
「いいからで・て・け………!!」
ギャーギャーと騒ぐ佐奈や和泉をつまみ出すヒナを、孝之助はぼんやり眺めていた。
「何か気になることでも?」
「九条っち……。いや、なんでもない!!」
孝之助はそう言うと、いつもの笑顔を作り席を立った。
「じゃあそろそろ私も行ってきますね。学校側も話を聞いてくれるようですので。」
「おう、悪いが頼んだぞ。」
「はい、任せてください。」