19.佐々の彼氏検定
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ー…ピーチチチ…
『改めて紹介します…私の彼の朝比奈了さん。』
「どうも…。」
「……。」
ヒナが彼氏と分かり佐々は本来の目的を果たすため、孝之助達の計らいで三人で話す席を設けることとなった。
佐々は目の前のヒナへの憧れの思いをぐっと封じ込め、真面目な面持ちで本題に入った。
「とにかく…俺は姉ちゃんの彼氏が本当に姉ちゃんのことを大切に出来るのか見極めにきたんだ。」
『もう…そんなこと佐々が決めることじゃないでしょ!?それに私が選んだ人なんだから信じてよ!!』
「姉ちゃんは黙ってて!!」
佐々はそう言うと、さっき和泉に尋ねたのと同じ質問をヒナに向かって尋ねた。
だが案の定ヒナは何一つ答えられず申し訳無さそうにするヒナの前で佐々はハアと溜め息をついた。
「ほら、姉ちゃんのことだってなんにも知らんやんか。そんなんで姉ちゃんを幸せに出来るんですか?」
「……。」
(プックククク…ヒナざまあwwwww)
(こら和泉、あんまり笑うと覗き見てるのバレちゃうでしょ。)
三人の様子をこっそり部屋の外から覗き見ていた和泉と九条と孝之助。
自分と同じ質問に答えられなかったヒナを見て和泉は嬉々として笑っていた。
『あのね…そんな事答えられなくて当たり前でしょ!?特に後半!!もう佐々仕事中にいい加減にして!!!!』
「こんなん序の口や、俺を納得させられんなら父ちゃんたちを納得させるなんて夢のまた夢……」
ー…がしっ…
「!?」
「ヒ…ヒナさん…?」
それまで黙って佐々の言葉を聞いていたヒナだったが、突如立ち上がり佐々の腕を掴んだ。
突然の出来事に佐奈と佐々が驚いていると、ヒナは必死に言葉をひねり出すように口を開いた。
「俺は話すのも得意じゃないし、正直佐奈を楽しませてあげられているのかは分からない。でも…佐奈の事は何だって知りたいって思うし誰よりも大切にしたいと思ってる。だから佐奈とのこと認めてはもらえませんか。」
『ヒナ…さん…。』
「……かっ…けええええええ!!!!!!」
「『え?』」
「俺なんかが変な質問してすんませんっした!!!!はい!!認めます合格っ!!なんかもう俺のが結婚して欲しいくらいっす!!!!」
『…ちょっと佐々何訳の分かんない事言ってんのよヒナさんと結婚するのは私なんだからっっ!!』
「ちょっと待ててめえコラ佐々変わり身早すぎだろ!!もちょっと粘れよ!!俺の時とずいぶん違う態度じゃねえかあああ!!!!」
「だって…俺今朝比奈さんの中に侍のような不器用な男らしさと優しさを見たんっすもんん!!!アニキはほら、もうマイナススタートだったっすから…!!」
「てめえ俺のこと絶対アニキと思ってねえだろーーーーー!!!!!!」
「ぎゃああああ!!アニキちょ…勘弁して下さいいいいい!!!!!!」
「侍……?」
ー…ギャーギャー…
「和泉の橘姉弟に対する影響力薄‥。」
「まあそこは期待を裏切らない和泉とでも言いますか。」
「そだな…。」
なんだかあっけない形で、と言うよりも認められた理由がほとんど長髪のおかげだったという不可思議な結末を迎えた佐々の彼氏検定。
だが実は事態の本題はこれで終わってはいなかったのだ。
「俺も朝比奈さんと姉ちゃんのこと応援します、検討を祈ってるっす!!はいこれ!!」
『…ん?何これ。』
「父ちゃんとじいちゃん達からの手紙!!今年の天狗祭りうちが夜羽締めなんだ。だから認めて欲しいなら彼氏と手伝いに帰って来いってさ。」
『えっ……!?』
「?」
突然佐々から告げられた事実に佐奈が驚き慌てていると、状況がよくつかめないヒナと和泉は不思議そうに佐奈を見た。
「何なんだよその天狗祭りっつーのは。」
『わ…私の地元で毎年あるお祭りなんです…昔から伝わる天狗伝説があって、それになぞらえて天狗の格好したりするお祭りなんですが…
そのお祭りの総責任者が夜羽締めって言って今年は私の家なんだそうなんです、まあこれが結構大変で…。』
「うちの集落完全に過疎化してて男手万年不足してるんっすよ、うちの家は毎年神楽の踊り手もやってるから夜羽締めなんかしたら完全に人手不足のキャパオーバーで。」
『佐々…というか初めからそっちが本題だったんでしょ…?』
「あ、ばれた?」
「『・・・・。』」
そう言ってニコリと笑って頷く佐々に佐奈はガクッと肩を落とすと、申し訳なさそうにヒナを見上げた。
『す…すみませんヒナさん…変な事になってしまって…。』
「俺は行ってもいいよ。」
『え…?』
「これで佐奈の育ったところ、見に行ける。それにこれからずっと一緒にいるなら挨拶には行ったほうがいいと思ってたから。」
『ヒナさん……!!』
佐奈はヒナの言葉に思わず感極まり、潤んだ瞳をごしごしとこすると嬉しそうに頷いた。
「…じゃあまた来月お待ちしてます、朝比奈さん!!皆さんお騒がせをしました!!」
「ったくまったくだ。」
「あはは、またいつでもおいで、佐々くん。」
佐々は嬉しそうにコクリと頷くと事務所の皆に深々と頭を下げ事務所を後にした。
一ヶ月後の実家訪問。
佐奈はこみ上げてくる期待と不安を胸に秘め、その背中を見送ったのだった。