19.佐々の彼氏検定
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ー…バタン…
「あ!!姉ちゃん!!」
『さ‥佐々!?な…何で佐々が和泉さんと一緒に帰ってくるの!?』
突然目の前に現れた弟に佐奈が驚いていると、佐々は久しぶりに会えた姉に嬉しそうに駆け寄った。
「姉ちゃんひっさしぶり~!!中々帰って来んけん会いに来てやったよ♪」
『あ…会いに来てやったってまたそんな勝手に…だいたい仕事場に勝手に来たら迷惑かかるでしょ!?』
「すでにコイツ事務所に来るなり竹刀で襲いかかってきたぞ。」
「和泉さん~そんな昔のこともう水に流してくださいよ~!!」
『佐々ああああ…謝りなさいっ!!すみませんでした和泉さん…それに皆さん…!!』
申し訳無さそうに皆に頭を下げる佐奈と佐々に孝之助はお茶を出しながら笑った。
「いーっていーって、別に暇だったし面白かったし。それにしても何でいきなりそんなに和泉に懐いて帰ってきたのよ?」
「いやあ~和泉のアニキの漢を見たっていいますか…とにかくかっこよかったんッス!!」
「…和泉、またどこぞで暴れたんじゃあないでしょうね。」
「あ…暴れてねーよ!!人助けだ人助け。」
疑いの目を向ける九条の言及から逃れるように和泉は言葉を濁すと、楽しみにしていたドラマに目を向けた。
『それにしても佐々髪切ったんだね、こんなに短いの中学の頃彼女にフラれて泣きながら切ってた以来じゃない?』
「姉ちゃん…こんなとこで俺の黒歴史バラさんでおくれよ…。」
バツが悪そうな顔を浮かべる佐々に佐奈が笑って謝ると、佐々はゴホンと咳払いをして話題を変えた。
「それはともかく…俺はもう男らしくなることに決めたんよ、日舞ももう辞めるつもりやし。」
『え?そうなの!?』
「日舞?」
『あ、はい。うちの祖父が日舞の師範をしてまして…佐々はずっと日本舞踊をやってたんです。結構地元じゃ有名な踊り手で…公演の時に地髪で結えるよう髪の毛も伸ばしてたんです。』
「へえ~、すごいじゃない。佐奈はやってなかったの?」
『…少しやってましたけど、お前はガサツで向いてないって早々に閉めだされました。』
「佐奈…ドンマイ。」
いじけたようにふてくされる佐奈をそう言って励ますと、孝之助と九条はアハハと笑った。
確かにそう言われてみれば佐々は言葉遣いこそ荒いものの、所作はどこか品がいいというか綺麗であり、
顔も佐奈によく似た女顔なので女形もさぞ映えただろうと孝之助も九条も納得した。
「でも俺は男なのに綺麗だとか美しいだとかもううんざりなの、女男だとか言ってバカにされるしさ…」
『佐々…。』
昔から女の子によく間違われてはからかわれて泣いていた佐々と、日舞が本当に好きで嬉しそうに稽古場に通っていた佐々。
その両方を知っていた佐奈は、佐々のその言葉を聞いて少し寂しげな顔を浮かべた。
「やっぱ男は強くて男らしく!!あんな長い髪で男らしくなんて無理に決まってるし!!もういいんだよ……」
佐奈に心配をかけまいと明るい笑顔を見せる佐々。
そんな中、一人仕事を終わらせて佐奈より遅れて戻ったヒナが事務所のドアを開けた。
「…戻りました。孝之助さん、ここに書類置いておきますね。」
「おお、ありがとな~!!お前もちょっとこっち来いヒナ!!」
「…?」
孝之助に呼ばれ応接室にヒナが顔を出すと、そこにいた佐奈によく似たもう一人の存在にヒナは静かに目を丸くして驚いた。
「佐奈の弟なんだと、そっくりでびっくりするよな!!」
「……はい。」
『あ…ヒナさんこの子私の弟の橘佐々って言います!!佐々、こちら朝比奈了さん!!私の会社の先輩で…ほら、挨拶して!!』
「どうも、橘佐々で………え!?」
「?」
ヒナを見るなり突如佐々は何かに衝撃を受けたようにその場に立ちすくんだ。
だが佐々はすぐにハッと我に返ると、バタバタとヒナに駆け寄りおもむろに頭を下げた。
「あのっ…あのっ…朝比奈さん…!!」
「?」
「ぜひ俺を弟子に…師匠と呼ばせて下さい!!!!」
「「『!!?』」」
「……は?」
突然の佐々の意味不明な態度と言葉に佐奈だけでなくその場にいた全員が戸惑い硬直していると、
佐々はキラキラした瞳で嬉しそうに佐奈の方を振り返った。
「姉ちゃんすげえよ…俺こんな髪長いのに男っぽい人初めて見たよ!!俺…何か今すごい勇気づけられた…髪の毛を理由に男らしさも日舞も諦めてた自分が恥ずかしくなった…!!俺…もう一回頑張ってみるよ…!!」
(感動したとこ…そこ…!?)
佐奈が我が弟の思考に全くついていけず参っていると、横でテレビを見ていた和泉が少しふてくされたように言葉を挟んだ。
「てめえ何あっさりヒナに鞍替えしてやがるんだ!!さっきは俺にアニキアニキ言って付いてくるとか言ってたくせに!!」←悔しい
「和泉さんは勿論俺のアニキっすよ!!ですが朝比奈さんは俺の師匠っす!!(師匠≧アニキ)…俺も朝比奈さんみたいになりたいんっす!!」
「けっ…お前とヒナじゃ憧れてもそもそもタッパが大幅に違うだろ…。」
わいわいと盛り上がるこの状況に全く付いていけていないヒナは、少し困ったように佐奈を見た。
「佐奈…これは…。」
『ヒ…ヒナさんすみません…あの佐々ちょっと盛り上がってるとこ悪いんだけど、ヒナさんは私とお付き合いしている人で…だからちょっと師匠ってのは…。』
「ん?何だって、姉ちゃん。」
『だから…ヒナさんは私とお付き合いしてる人なの!!』
「え…?・・・・・えええええええええええええ!?ええ!?だって…和泉さん!?」
思いもよらぬ事実を突然告げられた佐々はあたふたと驚きながら和泉の方を見た。
「今更俺のせいにすんじゃねーよ。俺は何っっ回もお前に違うって言ったぞ。」
「ええええええ!?!?だ…だって姉ちゃん彼氏は前科があるって…だから俺はてっきりそれっぽい和泉さんかと…」
「てめえそんな理由で俺だと思ってたのか!!はっ倒すぞ!!!!!!」
「佐々くん、うちの事務所は実は特殊でね、俺と佐奈以外はみんな警察にご厄介になったことのある連中なんだよ。でもこいつらの人柄は保証するからさ、安心してよ。」
「……!!」
そう言ってニコッと笑う孝之助を前に、
佐々は突然知らされた事実を整理するように頭をガシガシとかいた。