第八話 交錯する想い
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「楢崎さん、桜さん見ませんでしたか?酔い止めの薬作ったんですけど…」
一方、船酔いに苦しんでいない楢崎の部屋に顔を出した総助は、本を読んでいた楢崎に尋ねた。
「さっき甲板の方にいたようだったが。」
『あ、甲板か、なるほど!!じゃあ行ってみます。』
いそいそと部屋から甲板に向かおうとする総助に楢崎が話しかけた。
「一にしては珍しくお気に入りのようだな、あの桜とかいう娘。」
「え…?………いや…いつもと同じじゃないですか?」
そう楢崎に真顔で言うと、総助はそそくさと部屋を後にした。
楢崎はそんな総助の後ろ姿を見送ると、ハアと溜め息をついた。
「前途多難だな…。」
.......................
ー…バタン
(あ、いたいた…。)
「桜さー…」
桜に話しかけようとした総助の足が何かに気づいてピタッと止まった。
『んっ…!!』
桜は一に引っ張られたかと思うと強引にキスされていた。
びっくりして離れようとしたが、一の力が強く、全く歯がたたない。
『っ…!!高砂さ…』
一は桜の呼び掛けには耳もかさず、一行に桜を離さないまま、深く激しい口づけで桜の口を塞いだ。
そのまま一の手が着物の奥に入ると、桜の体はビクッと反応した。
『高…砂さん…まっ…』
「…。」
一の手が桜の肌をなぞり、唇は桜の首へと移っていった。
『っ…!!』
突然の出来事に頭も心臓も追い付かず、へたりと全身の力が抜けてしまった。
ところが突然一の手がピタッと止まり、桜の胸にボスッと頭を俯けた。
『…?』
「き…気持ち悪ぃー…。」
『へ…!?』
そう言うと一は桜から手を離し、よろりと立ち上がった。
「続きは長州着いたらな。船の上じゃ流石の俺も無理だわ…。」
『つ…続って…!!』
あまりにも予想外のオチに唖然とするやら安心したやら複雑な心境で呆然とする桜に一は耳元で囁いた。
「そんなによかったのかよ?」
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桜はその言葉にハッと我に帰り思わず顔を赤くした。
『ちっ…違…!!!!』
「あはは、じゃあまたな。」
焦る桜を見てケラケラ笑いながら一は甲板を後にした。
......................
「覗き見とはいい趣味してんな、総助。」
甲板につながる通路で立ちすくんでいた総助に一が声を掛けると、総助はもの凄い剣幕で一を睨んだ。
「またいつもみたいに遊んでるんなら止めろ。」
「……お前には関係ねーだろ。」
―…バキッ!!!
その言葉にプツンとキレた総助は、思いきり一を殴り飛ばした。
「いってー…なっ!!!!」
そう言うと一も総助を殴りとばし、取っ組み合いの喧嘩になった。
―ガシャーン!!!!
バキッ!!!ドスッ!!
「なっ…二人とも止めんか!!!どうした!?」
物音に気づいた楢崎が部屋から飛び出し、二人の間に入った。
「何だ!?一体何があった!!」
「……。」
「…。」
楢崎の問いに答えようとしない二人は、血だらけになった顔を抑えそのまま無言でその場を立ち去った。
それを見送ると、一もハアと溜め息をつきフラフラと部屋に戻って行った。
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「一…総助…。」
(原因は恐らく"アレ"か…―。)
嫌な予感が的中してしまった。
そう心のなかで思いながら楢崎は頭をかくと、楢崎も部屋へと戻った。
前途多難となった長州への旅路は
交錯する想いを乗せ、夜の海を突き進むこととなった。