【続サクラ花火 最終話】優しい手
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ー…ガチャ
「ただいま…桜?起きてたのか。」
『親瑛さん、お帰りなさい。』
今日も夜遅くに帰宅した親瑛を、桜はどこかぎこちない笑顔で出迎えた。
『ご飯…食べます?』
「あ、いや…食ってきたから…ありがとな。」
親瑛はそう言うと、申し訳なさそうに腰を下ろした。
「…どうした?」
『親瑛さん…一さんの時の記憶って…全部あるんですか?』
「まあ…普通に忘れてる事もあるかもだけど、だいたい覚えてるぞ。なんだよ急に?」
『私が初めて二人の前に現れた時…怪しい奴だとか思わなかったんですか?』
「目が覚めるまでは異人だと思ってたな。髪があんなに短い女なんてめったに見ねえからな。」
親瑛の言葉に二人は顔を合わせて笑い、桜は感慨深そうにあの日の事を思い出した。
『あの時私を救ってくれた事…感謝しても…しきれません。二人に出会わなかったら私は奉行所か女郎屋に送られてたでしょう。』
「ははっ!!ありえねえ話じゃねえな!!飛んできた三味線には当たっとくもんだな。」
ケタケタと笑う親瑛に、桜は姿勢を正し、改まって口を開いた。
『一さんと総助さんに出会ったお陰で私の命も人生も…救われたんです。だからずっとお二人のお役にたちたいと、恩返しがしたいと思ってきました。』
「何だよ急に改まって…桜?」
『親瑛さんと侑さんに生まれ変わろうとも、その想いは変わることはありません…なのに…』
『役に立つどころか…お二人の優しさに甘え続けて…本当に…申し訳ありませんでした…!!』
「桜…。」
..........................
ー…ドサッ
「ふう…。」
慣れない車椅子からベッドに体を移すと、侑はベットに倒れ込んだ。
(腕の筋肉付けないと…全部の動作が一苦労だな…。)
やっと自分でベットから車椅子へと移動できるまでになっていた侑は天井に手を伸ばし、それをぼんやりと眺めた。
ー…バタバタバタ
「…?」
廊下から響く足音に侑が気を取られていると、病室のドアが壊れそうなほどの勢いで開いた。
ー…バンッ!!!!!
「……!!」
「みつけたあああ…桜が来るとでも思ったかこのバカ!!!!」
「親瑛…。」
突然現れた懐かしい顔に侑は困ったような顔でため息をついた。
「俊輔から聞いたの…?」
「やっぱりあいつ知ってやがったのか…聞かずともなあ…俺の経済力とコネ、なめんじゃねえぞ。」
「はぁ…自慢することじゃないでしょ。」
「ったく…まさか県外の病院だとはまあなかなか見つからねぇワケだ。手間かけさせやがって!!」
「見つからないようにわざわざやったのに…台無しだよもう。」
いつも通り話す二人だったが、どこかお互い居たたまれない空気を感じていた。
そうして一旦間を置いた後、親瑛が口を開いた。
「桜なら来ねぇぞ。」
「知ってるよ。…わざわざそんな事言いに来たの?」
侑の言葉に親瑛はニコッと笑うと、おもむろに立ち上がり、振り上げた拳を思い切り降り下ろした。
ー…バキィッ!!!!!!!!!!!!!!ガシャーン!!!!!
「お前を一発殴りに来たに決まってんだろクソマリモ!!!!!!!!!」
「なっ…!?」
状況を飲み込めない侑は、突然の出来事にあっけにとられていた。
「悔しかったら殴りに来い、いつでも相手してやらぁ。」
親瑛はニッと笑うと、じゃあなとだけ言い病室のドアに手をかけた。
「あ、そうそう、俺は諦めるわけじゃねえからな。最終的に勝つのは俺だ。」
「…?何言ってんの…?」
そう言い残すと、解せない顔の侑を一人残し、親瑛はバタバタと侑の病室を後にした。
「回診ですー…って…え…才原さん!!大丈夫ですか!?」
「あ…はい…。」
"悔しかったらまた殴りに来い、いつでも相手してやらぁ。"
頭のなかにぐるぐる回る親瑛の言葉がずっと
"早く元気になって戻ってこい"
そう言ったような気がして…
侑は殴られた頬を押さえながらも
どこかほんの少し嬉しそうに、笑った。