【続サクラ花火 最終話】優しい手
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ー…コツコツコツコツ
ー…コツコツコツコツ
『…。』
侑の病室への階段を行ったり来たり。
桜はかれこれもう30分は階段を上っては降り、を繰り返していた。
(…昨日迷惑だって言われたばっかりなのに…いや…でも…。)
桜は大きく深呼吸し呼吸を整えると、一気に侑の病室のドアを開けた。
『侑さん!!あの…私………え?』
ドアを開けた先のベットは布団が綺麗に畳まれており、昨日まであった侑の荷物も全てが無くなっていた。
状況が呑み込めずに辺りを見回す桜は、通りがかった看護師に尋ねた。
『あの…才原侑さんは、部屋を移動したんですか?』
桜の問いに看護師は不思議そうな顔で答えた。
「才原さんですか?昨日他病院へ転院されましたよ。」
『…え?』
予想外の返事に戸惑う桜は、立ち去ろうとする看護師の腕を掴み、更に尋ね続けた。
『転院って…なんでですか!?侑さんは…今どこの病院に…?』
「転院は才原さんのご希望ですよ。失礼ですが…才原さんのご家族の方ですか?」
『いえ…家族では…ありませんが…。』
「ご家族の方以外には口外しないよう言われておりますので…申し訳ありませんがご理解下さい。」
看護師はそう言うと、そっと桜の手を外しそそくさとその場から立ち去って行った。
『…なんで…?』
戸惑いと焦りと悲しみが一気に押し寄せて、桜は思わず廊下にへたり込んだ。
家族のもういない侑が家族以外に口外するなと言うのは、誰にも言うなと同じこと。
侑は桜にも親瑛にも一言も告げず、最低限の荷物だけを持っていなくなってしまっていた。
昨日の侑さんはもうそのことを決めていたんだろう。
だから、あんな風に言ったんだ。
『ー…!!』
桜は鞄から携帯を取り出すと、震える手で侑の携帯へ電話をかけた。
「お掛けになった電話番号は、現在使われておりません。番号を…」
『…!!』
電話口から聞こえてきた無情なアナウンスに唇を噛み締めると、桜はすぐに親瑛の携帯へと電話を繋げた。
「…桜?どうした。」
『親瑛さん…侑さんが…侑さんが…いなくなって……どこに行ったのか…教えてくれません…親瑛さん何か聞いてますよね!?どうしたら…なんで!!!!』
桜のただならぬ様子に、親瑛は電話口から桜を落ち着けた。
「そっちに俺もすぐ行く。そこで待ってろ。」
そう言って親瑛が電話を切ると、桜は携帯を投げ捨てるように鞄に放り込み、ナースステーションへと走った。
........................
ー…ザワ…ザワ
「ん…?」
たまたま手続きに来ていた俊輔は、向かいのナースステーションから聞こえる声と人だかりを遠巻きに眺めていた。
「………え?桜さん!?」
俊輔の目に映ったのは、ナースステーションで看護師達にしゃがみ込んで頭を下げる桜の姿だった。
『…お願いします!!侑さんの居場所を…教えて下さい!!お願いします!!』
「頭を上げてください…!!個人情報ですので、ご家族以外にはお教えすることが出来ないんです。」
『侑さんは家族同然でした!!ずっと一緒だったんです!!だから…だから…!!』
泣きながら頭を下げる桜はほとんど錯乱状態で、立ち上がらせようとする看護師たちの手を振りほどきながら頭を下げ続けていた。
『お願いします!!お願いします!!!!!』
桜の痛々しい姿に俊輔が声をかけようとすると、人だかりを掻き分け親瑛が息を切らしながら飛び込んできた。
「桜!!何やってんだ!!おい!!」
『お願いします…お願いします…!!!!!』
「桜!!しっかりしろ!!俺だ!!」
![image](http://id42.fm-p.jp/data/242/ruruyuno/pri/144.jpg)
しゃがみこむ桜を強引に自分の方へ向けると、桜は焦点の定まらない目で親瑛を見た。
『親…瑛…さん…うわああああああああああああ!!!』
「桜…大丈夫…大丈夫だから…。」
![image](http://id42.fm-p.jp/data/242/ruruyuno/pri/145.jpg)
親瑛の顔を見た途端泣き崩れた桜の背中をポンポンと撫でると、
親瑛は看護師達に頭を下げ、桜を病院から連れ出した。