【続サクラ花火 其ノ十一】分かって欲しい気持ち
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『眠い…。』
あれからろくに眠れなかった桜は、眠たい目をこすりながら病院に出勤した。
ー…カチャ
『おはようございま…』
「はい、はい…元気ですよ。」
『!!』
(侑さん…こんな時間に電話…?)
電話で話す侑に気付いた桜は、侑に話しかけるのをやめ隣の部屋で静かに荷物を下ろした。
「いえ…由美さんもでしょう。」
『…。』
(女の人…?)
聞き耳を立てるつもりはないのだが、昨日の今日で耳が勝手に侑の言葉を聞き取ってしまい、桜は思わず動きを止めた。
「浮気?アハハ…してませんよ。」
『…。』
「…由美さんが一番ですから。」
『…!!!!!』
「え?今日来られるんですか?分かりました。じゃあお待ちしてます!!はい、また後で。はーい。」
『・・・・。』
ー…ピッ
「あ、桜さん来てたんですね、おはようございます。」
『あ…はい…おはようございます…。』
「何か顔色悪いですけど…大丈夫ですか?」
『へ?あ、いや…気にしないでください…。』
そう言うと、桜は侑とまともに目を合わせずによろよろと受付の席に向かった。
(ど…どうしよう…想像以上に…ショックだった…。)
「…由美さんが一番ですから。」
(ダメだダメだ!!考えちゃダメだっ!!!!)
何度も頭の中でリフレインする侑の言葉を必死で振り払いながら、桜はパソコンのマウスを握りしめ仕事を始めた。
.............................
『次の方どうぞっ!!!!』
「桜ちゃんどうしたの~今日顔怖いよ~?分かった、今日はあの日か?」
『…村上さん…さっさと入らないと順番飛ばしますよ…。』
「おお~こわこわっ!!」
おじいさん達のセクハラ発言を笑って許せる程の心の余裕は今の桜にはなく、必死に忘れようともがいていた。
そうしているうちに午後の診察もピークを過ぎ、患者さんもほとんどいなくなっていた。
『ふうー…。』
(由美さんって方…今日見えるって言ってたけど…まだ来ないな…侑さんの…恋人…。)
「お願いします。」
ー…ドキッ
『!!』
ぼんやりと考え込んでいた桜の目の前には、綺麗な黒髪の女の人が診察券を出して立っていた。
『あ…すみません!!えと…お名前よろしいですか?』
「斉藤由美です。」
『斉藤…由…美…さん?』
桜は震える手で目の前の女の人から診察券を受け取ると、へたりと椅子に腰を下ろした。
綺麗な人…侑さんに…すごくよく似合う…。
私なんかより…ずっと…
「由美さん、いらっしゃってたんですね。」
『侑さん…。』
診察室から出てきた侑は笑顔でその女の人の方に近寄った。
ー…ギイ
「侑ちゃん、相変わらずかわいい顔しとるねえ。」
『え…?』
「ハハ…由美さんもお元気そうで!!」
侑は扉の近くに駆け寄ると、腰の曲がった優しそうなおばあさんに手を貸した。
「じゃあおばあちゃん、診察の間、私スーパーで買い物してくるね。」
「はいよ、ありがとうね、彩乃ちゃん。」
女の人はそう言うと、おばあちゃんに手を振り病院を出て行った。
『彩乃…さん?』
頭の中がこんがらまったまま呆然と立ち尽くす桜を見て侑は少し笑うと
"手伝って"と小さく口を動かし桜に手招きした。
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