【続サクラ花火 其ノ八】今太閤
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「あ…あのっ…さっきはありがとうございましたッス…!!」
小忠太は、そう言うと一に深々と頭を下げた。
「別にお前の為にやったんじゃねーよ。俺が気にくわなかっただけだ。」
「一、誰?その子。」
後ろから顔を出した背の高い少年に小忠太は頭を下げながら答えた。
「あ…自分…谷小忠太と言います…!!」
「ああ…!!掃除してくれてる子だよね!!俺は才原総助。」
総助はそう言うと、小忠太にニコッと笑った。
「才原さんと…えと…」
「疫病神!!!!!!!」
「!?」
小忠太が一に名前を聞こうとした瞬間、背後から罵声が響いた。
「朝倉を潰した疫病神が!!調子に乗るんじゃねーよ!!」
「そいつに関わるとろくなこと起こらねぇぞ~!!」
「お前らいい加減に…」
![image](http://id54.fm-p.jp/data/369/ruru04251117/pri/113.jpg)
…―バキィッ!!!!
「ほーお。言いたいことはそれだけか?」
![image](http://id54.fm-p.jp/data/369/ruru04251117/pri/114.jpg)
「うわああ!!に…逃げろ~!!!」
一が背後から少年らを殴り飛ばすと、少年らはその場から逃げ去った。
「一!!何にも懲りてないね…そんな事ばっかしてたら何も変わらないでしょ!!」
「うるせーな!!俺にはこれしか対処法は思いつかねーんだよ!!」
言い争う二人をよそに、小忠太は一人驚きを隠せなかった。
(この人…あの朝倉事件の高砂一…だったんスか…!!それに才原さんって…15で藩医の家督を継いだって言う…あの…。)
一と総助の事は萩中に知れわたっており、もちろん小忠太も話には聞いていた。
(二人とも早くに親を亡くしてそれでも頑張ってるッス…それなのに俺は……。)
小忠太は二人を横目に自分が恥ずかしくなった。
すべてを境遇のせいにして、努力することすら諦めていた自分。
何一つ変えられないと初めから決めつけていた自分。
(俺は……。)
「高砂さん…才原さん…いくら…いくら用意したら自分も勉強できますか…!?」
「小忠太?」
「俺も…こんな俺でも…日本を変える力になれるって信じてみたいんッス…!!お金は一生かかってでも払います…だから…!!!」
必死に頭を下げる小忠太を見て、一と総助は顔を見合わせニッと笑った。
「だそうだぜ、杉先生。」
「え…?」
驚く小忠太の後ろを振り返ると、そこには杉が笑顔で立っていた。
「あなたのような方、大歓迎ですよ。」
「本当ですか!??一生かかってもお金は支払い…」
小忠太がそう言いかけると、杉は笑顔で小忠太の額をパチンと弾いた。
![image](http://id54.fm-p.jp/data/369/ruru04251117/pri/115.jpg)
「知識や経験はお金で買えるものではありません。努力で買いなさい。現にあなたはもう、持っているでしょう?」
「え…―?」
![image](http://id54.fm-p.jp/data/369/ruru04251117/pri/116.jpg)
「それにあなたは人の間に立つのがとても上手い。いい政治家になりそうです。」
「俺が…ッスか…?」
驚く小忠太に杉は"また明日"とだけ言い残し去っていった。
「ゆ…夢みたいッス…!!」
「小忠太、明日からよろしくね。」
「寝坊すんじゃねーぞー。」
「……はいっ!!!」
小忠太は嬉しそうに返事をすると、子どものようにはしゃぎながら家路についたのだった。
![image](http://id54.fm-p.jp/data/369/ruru04251117/pri/117.jpg)
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