【続サクラ花火 其ノ八】今太閤
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―…ザッ…ザッザッ
「綺麗ッス…。」
桜が春風に舞い散り始める頃
12歳になったばかりの小忠太は貧しい家の家計を助けるため働きに出ていた。
「あ、始まった…!!」
小忠太の今の仕事は村の寺子屋の庭掃除。
寺子屋に行く余裕などない小忠太は、そこで行われる講義を外でこっそり聞くのが唯一の楽しみだった。
(今日は攘夷について…難しい話ッス…。)
小忠太は話の内容をただ暗記するばかりだったが、自分の知らない外国の話を聞くのが一番好きだった。
「この地図が、エゲレスですね。」
(エゲレス…!!いいなぁ…俺も地図見たいなぁ…。)
![image](http://id54.fm-p.jp/data/369/ruru04251117/pri/110.jpg)
「…何やってんだお前?」
![image](http://id54.fm-p.jp/data/369/ruru04251117/pri/111.jpg)
「え?う…うわぁぁ!!」
寺子屋の講義に思わず聞き入っていた小忠太は、背後にいた少年に全く気付かなかった。
「すみませんっ…!!何でもないんッス…!!」
小忠太は少年に頭を下げると、そそくさと掃除に取り掛かり始めた
その瞬間だった。
―…ガッツ
「痛っ…!!」
小忠太の額に鈍い痛みが走ると共に、寺子屋の中から小さな笑い声が聞こえた。
「やったぜ命中!!うっとーしいんだよあいつ。」
「俺も俺も!!立ち聞きなんざしやがって気持ち悪ぃ!!」
「こら、そこ何やってるんですか。」
「すみませーん、野良犬が入ってこようとしてたんで追い払ってました。」
「……。」
寺子屋から聞こえる会話を背に、小忠太は黙って掃除を続けていた。
「気に入らねぇな。」
「え…?」
小忠太の背後にいた少年はボソッと呟くと、寺子屋の扉を勢いよく開けた。
―…バンッ!!!!グィッ
「一!?」
「うわっ!!何しやが…」
―…バキィッ ドサッ!!!!!
「へ…!??」
少年は小忠太に石を投げつけた少年二人を障子を突き破って外に放り投げた。
「いっ…一ぃぃぃ!!!!!遅刻してきた上に何やってんの!!!!!!」
「野良犬を外に出してやったんだよ。」
「……!!」
「先生、障子は今度直す。桜が綺麗だし、今日はこのまま講義してくれよ。」
少年はそう言うと驚く小忠太を横目にニッと笑った。
(地図が…見えるッス…もしかしてあの人…わざと…。)
一が突き破った障子ごしに見えた地図を見ながら
小忠太は嬉しそうに講義に耳を傾けていた。
![image](http://id54.fm-p.jp/data/369/ruru04251117/pri/112.jpg)
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