第二十四話 二番目の人間
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杉が長州を経って数ヵ月。
一と総助の元に杉が獄中で亡くなったという知らせが入った。
案の定、幕府の要人に思想を説いたが捕えられ、処刑されたとのことだった。
「総助…俺達も京に上るぞ…先生を、取り戻す。」
「ああ…分かってる!!」
一と総助らは杉の遺体を奪い埋葬する為、すぐさま京へと向かった。
そしてその一行には他の杉の門下の生徒数名と、門下に入って間もなかった小忠太の姿もあった。
「初めての京がこんな…悲しい目的の為だなんて…うぅっ…先生ぇっ…!!」
「泣くんじゃねーよ!!うっとーしーなー!!」
「そうそう。泣くのはこれを成功させてからだよ、小忠太。」
「…うぅっ…はいッス!!!!」
そして一達は闇に乗じて杉の亡骸を奪い去り、墓を建て埋葬した。
「先生の意思は終わっちゃいない…!!俺達全員が引き継ぐんだ…!!」
「そうだな…俺達は二番手…革命を起こす!!やってやろうじゃねえか…!!!」
そしてその上京をきっかけに、
杉の意思を受け継いだ者達が各地で過激な攘夷活動を行った。
一や総助も例外ではなく、
品川公使館を焼き討ちし、有備館内で佐幕派暗殺。
果てには将軍暗殺計画(未遂)…など活動を行っていった。
全ては杉の意思を受け継ぎ、日本を諸外国から護る為、
一と総助、そして他の門下生達は奔走し続けたのだった。
.......................
「あれからまだ…三年しか経ってねぇのにな…あの時の仲間はもう…俺と小忠太しか残ってねぇよ…。」
茜色の空の下、総助の墓の前で一人酒を注ぎながら一が呟いた。
「総助…俺は三番目の人間に必ず託す。そしたらまた…そっちで一緒に呑もうや。」
![image](http://id54.fm-p.jp/data/369/ruru04251117/pri/360.jpg)
一はそう言って少し笑うと酒を注いだお猪口を墓前に置いて、その場を後にした。
![image](http://id54.fm-p.jp/data/369/ruru04251117/pri/361.jpg)
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―…ガラッ
『高砂さん…おかえりなさい…。』
「おお…ただいま。どうかしたのか…桜…?」
まだ総助の不在をうまく受け入れられない桜は、何かを握りしめて立ちすくんでいた。
『高砂さん…これ…』
「…?」
桜が一に涙ながらに差し出したものは、総助がよく使っていた綴り帳だった。
その綴り帳の中にはびっしりと文字が書き連ねてあって、
最後のページには、丸がつけてこう記されていた。
"労咳ノ薬、試作"と…。
「…!!!」
恐らく一の病を知ってからずっと、治してやれないかとずっと研究を続けていたような記述が見受けられた。
それは本当にギリギリまで、総助が死ぬ、その前日で記述は終了していた。
『それの最後のページに…はさまっていました…。』
そう言って桜が差し出したのは、小さな紙の包みだった。
綴り帳を握りしめたまま桜の手から包みを受け取ると、
一は顔を押さえて言った。
![image](http://id54.fm-p.jp/data/369/ruru04251117/pri/362.jpg)
「お前の薬は…苦くて飲めねぇっつの…。」
![image](http://id54.fm-p.jp/data/369/ruru04251117/pri/363.jpg)
そして、ずっと気丈に振る舞い続けていた一が、
初めて声を出して 泣いたのだった……
【第二十四話】二番目の人間 -END-