第二十四話 二番目の人間
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「痛っ…!!」
全身の痛みで目が覚めた一の傍らには、毛利成和公がうとうとと眠っていた。
見慣れた部屋で一が体を起こすと、眠っていた成和は目を覚ました。
「おお!!一、気がついたか!!まったく無茶しおって…。」
安堵した表情で毛利公が笑った。
「…何で俺はここに…。」
「才原総助がお前をかついで来てたんだ。後で礼でも言っておけ。」
「やっぱり…あれ…総助だったのか…。」
「何だ、知り合いだったのか。あいつもでかくなってるからなぁ…気づかなかったんじゃないか?」
「あの頃は…まだ小さかったからなぁ…」
「あいつも両親が死んでからはたった一人で家の家督継いで医者になって…苦労したみたいだぞ。」
「……。」
そして一は数日後、総助の家を訪れていた。
........................
―…ドサッ
「この間は…悪かったな。」
お礼にと持ってきた夏蜜柑を畳の上にぶっきらぼうに置きながら、一が言った。
「お礼なんてよかったのに。一、見事に俺の事忘れてたでしょ。」
「忘れてた訳じゃねーけど…それよりお前…ここ一人で住んでんのか?」
「ああ…うん。兄さんがいなくなって両親亡くなってからは…。誰も身寄りもいなかったしね。」
「……。」
総助は13歳の時に家督を継いだ。
そして頼るあてもなく一人で必死に才原家を守り続けていた。
自分と同じ身の上の総助がこんなに頑張っていたというのに、
一は他人を妬んでいじけてばかりだった自分自身が恥ずかしくなった。
「総助…一手、しおうてくれ。」
「まだ体ボロボロのくせに…治療しがいの無いことばっかして…。」
「いいから!!!」
そう言うと一は、総助に木刀を投げ渡し、自分も木刀を構えた。
「手ぇ抜いたらシバくぞ!!」
「はいはい…。」
―…ガツッ!!バキッ!!ドスッ!!
「おりゃああ!!!」
「くっ…!!」
二人の剣の腕はほぼ互角で、必死の攻防が続いていた。
だがその表情は二人ともとても楽しそうで
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まるで子供が遊んでいるようだった。
「はっ…やるな総助…でも…」
―…ガッッ!!!!
「おわっ!??」
―…ガツンッ!!!ガシャーン!!!!!!
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一がバランスを崩した瞬間、総助が一の木刀を弾き飛ばし一の喉元に木刀を向けて言った。
「ハァ…ハァ…勝負あったね…」
「……甘いわっ!!」
「え?」
ー…ガンッ!!!!
そう言うと一は総助のすねを思いきり蹴り、立ち上がった。
「ははは!!実践剣術だ!!」
「いったー…そんな事したら、もう剣術関係無いだ…ろっ!!!!!!!」
そう言うと二人は、取っ組み合いになり、散々暴れまわった。
だがそれも決着が着かないまま二人は疲れ果てて寝転んだ。
「ハァ…ハァ…久しぶりにこんな馬鹿みたいに暴れたわ…疲れた―…!!」
「ハァ…ハァ…俺だって…でも久しぶりに楽しかった~…!!」
「本当だよ!!あははは!!」
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そう言って二人は笑い合った。
一は総助が自分と同じ境遇にありながら、同じくらいの剣の腕を持っていた事が嬉しくてたまらなかった。
"総助はあいつらとは違う…卑怯者じゃない"
そんな思いが一の心を溶かしていった。
「そうだ一!!!一緒に杉先生の所で学ばないか?」
目を輝かせながら言う総助に、一は不思議そうに答えた。
「杉…先生?ってあの私塾を開いてる人か?」
「そう!!俺も行ってるんだけど、藩校に行くよりよっぽど為になる事を沢山教えてくれるよ。」
「…!!!」
一の答えはもちろん"YES"だった。
だがどうしてもひっかかる事があった。
「俺なんかが行ってもいいのか…?俺は…」
口ごもる一に総助は笑って答えた。
「朝倉との事気にしてるんなら関係ないよ。一は悪くないでしょ?」
「…!!」
総助の変わらぬ態度と言葉に一は込み上げる涙を抑えて笑顔で頷いた。
そうして一は、生涯の恩師となる杉生山のもとに通うこととなったのだった。