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ムナカタ海姫




ー…ザザーン…


「サヌイ…みんな助かったから安心してね…?うっ……うわあああああ…!!」



タギリはそう言って傷だらけのサヌイの頬を撫でると、こらえていた大粒の涙を流しながらサヌイを抱きしめた。

目の前で泣き崩れる姉を不憫に思ったタギツは、無理を承知でスサノオに尋ねた。


「お父様…人間を生きかえらせることは出来ないのでございますか…?」


「ええー!?人間なんて生き返らせたってまたあっという間に死んじまうじゃねーか。無駄無駄。」

「う…うわあああああああああああん!!!!」


「お父様!!この状況でなんてこと言うんですか最低です!!」

「とうさま、さいていです!!」


「い…イチキシマまで…ご…ごめんって、いや、今のは失言だった、生き返らせたって割とすぐ死んじまう、これでどーだ!!」

「そういう事を言ってるんじゃありません!!!!!!!!!!!!!!」


鬼の形相のタギツに一喝されふてくされたスサノオは、困ったように眉間にしわを寄せて考え込んだ。



(…死者っつたら黄泉の国か…?)

(あそこから母ちゃんとあのうるせー姉貴の目を盗んで何千人といる人間の魂の中からこいつの魂を探して戻せってか…それは…)



「めんどくせ…。」

「お父様!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



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「いや、でもマジな話そう言う特別扱いは神としてしちゃいかん、だいたいタギリと人間の男が一緒になるなんて俺は許さないからな!!」



スサノオはそうバツが悪そうに言い捨てると、三女神達を残しまた空に消えていってしまった。

最後の望みが潰えたタギリは更に絶望し、涙が枯れるまで泣きに泣いた。



それから三日三晩数週間、一年そしてまた一年、

彼の一族を守りながらも、十年一日の如くサヌイの墓の前でタギリはサヌイを思って泣き暮らした。


タギリの涙は海となり海の水を増幅させ、元は一つであった日本の大陸から遂には九州を分断させてしまった。


さすがにこれには暴君スサノオも困り果て、


渋々黄泉の国へと足を踏み入れる事となったのであった…。




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ー…ザアッ



「サヌイ…もうあれから9回目の桜が咲きましたよ…。」



あれから九年。

神にとっては取るに足らない年月、人にとっては長い月日の経過を、タギリはサヌイの植えてくれた桜を前に実感していた。



「サヌイ…父上に聞いたのですが、遠く遠く海の向こうでは花言葉というものがあるのだそうです。

桜の花言葉、私はその言葉を聞いて私の気持ちそのままだと驚いたのです。何と言うか…知っておられますか?それはですね……」





ー…ザアッ…





「私を忘れないで、ですよね?」



「え……?」



「一瞬たりとも忘れたことなどありませんよ、タギリ様。」



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「サヌイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」






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.......................



ー…ザクザク…


「あ~疲れた~これでやっと休めるわー。」

「お父様お父様、どうしてサヌイは神様に生まれ変わったのですか?」



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サヌイを神として呼び戻しここまで送ってきたスサノオは、久しぶりに会ったイチキシマを肩車して島を散歩していた。


「ん~?だって肉体がもうないんじゃ人間に戻せないじゃんよ。それともイチキシマはゾンビのサヌイが良かったか~?」

「イヤです~!!怖い怖いです!!」



「でもま…」



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「?」



「あれなら何千年何万年でも、タギリを守ってやれるだろ?」




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「とうさまぐっじょぶ!!」

「だろ~?でもイチキシマは嫁とか行かないでくれよ~?父様泣いちゃうよ。」



「え~いやですぅ~。」







-終-
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