15.かけがえのないヒーロー
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ー…ピッ……
「てなわけだよ、今の会話聞いてたな?オタク君。」
「はい…しかと聞かせて頂きました…!!!」
「「…!?」」
電話口から聞こえた声に柿原が不思議そうな顔をしていると、いち早く孝之助の策に気付いたヒナが表情を強ばらせた。
「孝之助さん…何のつもりですか…?」
「今までの会話、録音させてもらったよ。今からこのデータを俺の知り合いのジャーナリストに送信する、明日の見出し…楽しみにしておいてくれよ?」
「…なっ……!?や…やれるものならやってみろ…その女の人生も道連れにしてやる!!!!」
「そっちこそやれるもんならやってみやがれ!!てめえの手札がもうないことくらい分かってる!!九条、送っちまえ!!」
睨み合う二人の傍らで九条が持っていたパソコンでデータをオタクに送ろうとすると、パソコンの画面が突然真っ暗になり起動しなくなってしまった。
ついさっきまで正常に作動していたパソコンの異変に、九条はある心当たりに顔をしかめた。
「…まさか…!!!」
「…データは送らせない…!!」
「ヒナ…!!」
目の前のヒナの手にはパソコンなどない、
殺気立った目で自分を見つめるヒナを前に、孝之助の言っていた事が事実だったのだと九条は痛切に思い知らされた。
「あはははは!!やはり素晴らしいよ、君のその力は!!そんなにあの娘を守りたいか…泣かせるじゃないかあはははは…!!」
「ヒナ…いい加減にしろ…俺達を信じろ…!!お前も佐奈も絶対に見捨てたりしない!!だから…」
「俺がここにいれば済むことなんです…だから佐奈を危険に晒さないでやって下さい…俺の姉と同じ苦しみを…与えないで下さい……!!!!」
『ヒナ…さん…。』
ヒナの必死の懇願に一同がとまどっていると、溢れ出る涙を拭った佐奈がヒナの前に立ち塞がった。
半年ぶりに間近でみるヒナの顔は今にも泣きそうで辛そうで…
傍に駆け寄って抱きしめたい思いを必死にこらえながら、佐奈はニコッと笑った。
『ヒナさん…私のために今まで本当にありがとうございます…私…ヒナさんのこと…大好きです!!』
「佐奈…?」
「だから今度は私があなたを守ってみせます。
私は南在事務所のお荷物でも、守られるだけのお姫様でもない…、探偵事務所の一員です…!!!!」
佐奈はそう言うと孝之助の持っていた電話を奪い取り、電話口のオタクに向かって意を決したように言った。
「オタクさん、渡していた盗撮カメラの映像、ネットに流して下さい。」
「「!!!!!???」」
突然の佐奈の行動に、柿原だけではなくそこにいた全員が驚きを隠せなかった。
「佐奈!!!!!!」
「…分かりました。」
「なっ……やめろ…やめろ…!!!!頼む!!やめてくれ!!」
ー…ピッ…
佐奈が電話を切るやいなやヒナは女の秘書が持っていたパソコンを奪い取り、オタクが流出させた映像をネット上で発見した。
躍起になって映像が掲載されたページを手当たり次第消し続けたが、オタクがどこに拡散したのか分からない以上これ以上は打つ手が見当たらなかった。
「佐奈…何でこんなこと……!!!!」
『…私なんかの日常生活なんて色気もなんにもないですよ…そんなものの為にヒナさんが犠牲になることなんてないんです。』
「佐奈はことの重大さが分かってない!!これからもうこのデータはネット上から永遠に消えない…!!好奇の目に晒され続ける…!!」
『いいですよ、それでも。』
「…!?」
『私はヒナさんがそばにいないことの方が辛いんです。戻ってきて下さい…ヒナさん…!!』
「……ー!!!!!!!」
佐奈は黙って涙をこぼすヒナを優しく抱きしめると、柿原をキッと睨んだ。
『…これでもうヒナさんを縛る切り札はありません、ヒナさんは返してもらいます!!!!』
「……ふざけるなよ…」
『……?』
「…お前ら何をぼさっとしている!!この女を捕まえろ!!次は監視カメラなんて生ぬるいことはしない!!この女を監禁して一生朝比奈を使ってや…」
ー…バキイッッ!!!!!!!!!!!!!!!!
「てめぇいい加減に黙れよ。」
我慢の限界に達した和泉の渾身の一撃に柿原はその場に倒れこんだ。
柿原は恨めしそうに和泉を見上げると、状況を静観していた部下に言葉を絞り出した。
「うっ…!!この…役立たず共が…早くこいつらを捕まえないかっ……はやく!!!!」
「……。」
だがそんな彼の支持に従う者は彼の周りには既に一人もいなかった。
部下との信頼関係をまるで築いてこなかった柿原は、犯罪に手を染め先がないだろうと部下達にあっさり見限られたのだった。
「…部下のほうがよっぽど利口じゃねえか、"優秀な"部下を持って良かったなあ。」
「…っ…くそっ…!!」
和泉がそう言って笑った瞬間、入口の扉が音を立てて勢い良く開いた。