15.かけがえのないヒーロー
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
突然の破壊音に柿原が驚き振り返ると、そこには先ほど自分が渡したUSBを真っ二つにへし折った秘書が立っていた。
「お前…それは…何をやっている!!!!気でも触れたのか!?」
「気でも触れたのかですか…そうですね、気が触れそうでしたよ。」
ー…バサッ…
「相澤…お前……!!?」
「あなたみたいなバカのそばに四六時中仕えて…有能な秘書も持ち腐れですね。」
「貴様は…九条…誠一……!!」
驚く柿原の前でカツラと眼鏡を外したのは、先にシーギミックに潜入し秘書に扮していた九条だった。
九条は折って粉々になったUSBメモリを更に足で踏みつけ、その様子を見たボディーガード達は一斉に九条を取り押さえようと動き出した。
ー…ザッ!!!!!!ガンッ!!
「おっと、動くんじゃねえぞ…。」
「…!!」
「動くなら俺は本気でお前らを落としにかかるぞ…俺はあのクソ社長のせいで今心底イラついてんだ…手加減は出来ないからな…。」
和泉に動きを止められたボディーガードの男五人が、たった一人の和泉の気迫に完全に圧倒されていた。
それは辿ってきた過去の経験と背負ったものの重さの違い、男達は本能的にそれを感じ取って動けずにいた。
「貴様…本物のうちの相澤はどこへやった…!?いつから入れ替わっていた…!!!!」
「入れ替わる?あなた本当に馬鹿ですね。初めからずっと…私はあなたの優秀な秘書、相澤悟だったんですよ。」
「何…だと…!?」
自分の右腕であった有能な秘書の事実を柿原がいまだ飲み込めずにいると、九条はそれを見て嘲笑うかのように言った。
「私、昔ヘッドハンターをやってましてね…その伝であなたが他社から優秀な秘書を引き抜こうとしていた事は容易に知ることが出来た、その時からですよ…
この半年間…"他社から引き抜かれた有能な秘書"を演じていたんです。お陰で10本のUSBメモリ、全てを手に入れることが出来ました。この11本目で最後だ…。」
ー…グシャ…!!!!
「貴様…貴様あああああああ!!!!!!」
「今更事態が飲み込めてももう手遅れです…帰りますよヒナ、もうここにいる必要はありません。」
「九条さん…。」
九条に言葉をかけられたヒナはこの状況に戸惑っていた。
もう戻れないと覚悟していた大切な居場所、ヒナが恐る恐る孝之助達の元に歩き出そうとした…その時だった。
「甘いな…!!USBのコピーはまだあるんだよ…朝比奈くん。」
「…!?」
「まだコピーを自宅で保管している…君は我が社の社員でいるべきなんじゃないのかい?」
ヒナに圧力をかけるように突如言葉を発した柿原を、九条は呆れたように睨み付けた。
「下らないでまかせを…ヒナ、耳を貸さなくていい。データは全部押さえてる。」
「本当だぞ!!この用心深い俺が隠し持ってないとでも思ったか?お前がいなくなったらどうなるか…分かっているんだろうな?」
「ヒナ!!!!いいから早く来て!!!!」
「………!!!!!!」
九条と柿原の言葉が飛び交う中、ヒナは焦点のうまく定まらない目で顔を上げ、ゆっくりと柿原の元へと戻った。
「ヒナ…どうして…?」
『ヒナさん!!』
「ヒナ!!!!」
「そうだ、戻れないよなあ…朝比奈…"また"同じように大切な人を失うのは嫌だものなぁ…。」
「"また"…?どういう意味だ…。」
柿原の隣で明らかに動揺を隠し切れないヒナの表情に、孝之助が不思議そうに尋ねると、
柿原はアハハと高笑いを返し、余裕たっぷりに信じられない言葉を返した。
「…こいつの姉はストーカーに盗撮されてそれをネットに晒されたのを苦に自殺したんだよ…!!」
「え…?」
『……!?』
「どれだけお前らがデータを集めようと、こいつは俺の元から離れられない!!怖いもんなあ…?また映像が流出して今度はあの女が死んでしまうかもしれないからなあああははははは!!!!」
「……。」
何かに脅えたように俯くヒナに、不快な高笑いを響かせる柿原。
二人をじっと見据えていた孝之助は、沸き上がる怒りを抑えながら静かに問いかけた。
「じゃあなんだ…?お前はヒナを得るためにこいつのトラウマまでご丁寧に調べ上げて、その傷に塩を塗り込むようにわざわざ同じことを佐奈でしたっていうのか………?」
「ふふふ…いい案だったでしょう、南在さん。」
ー…ガッ!!!!
「……ふ…ざけんなああぁあ!!!!!!!!!!!!!!!!」
怒りに身を震わせながら、孝之助は柿原の胸ぐらを掴みあげた。
自分の息子同然のヒナや佐奈をここまで愚弄され、今すぐにでも虫の息にしてやりたい思いを必死にこらえ柿原を睨み付けた。
「ふざけているのはあなたですよ南在さん、あなたは彼の有用性を少しも理解していない。」
「……!?」
「彼のBCIを解明して利用すれば、膨大な利益を生むだけでなく世界だってひっくり返せる。
それをあなたは自己満足であんなちっぽけな探偵事務所に縛り付け、下らない市民の悩み相談に使うなんて…逸材の無駄遣いだ。」
ー…ググッ…
「九条さんに冴島さん、私はあなた方の事も欲しかったのですよ。九条さんにはこのまま秘書として…冴島さんにはそこの役立たずに変わってボディーガードとして…どうです?今の給料の10倍は出しますよ?私は有能な人材への投資は惜しみませんから。」
「…ふざけんな…!!誰がてめえの下なんかで働くか…!!!!」
「同感です、愚問ですね。」
「そうですか…それは残念です。」
そう言って自分を睨む二人を見て、柿原はクスクスと笑い声を上げた。
そんな柿原を見ながら、怒りが頂点に達した孝之助は意を決したように持っていた携帯電話を取り出した。