14.ヒナの傷跡
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『…そんな…。』
ヒナの過去を聞いた和泉と佐奈は言葉を失っていた。
想像もしなかった過去に、ヒナといた時に感じた様々な疑問や違和感がパチパチと音を立ててピースが揃っていくようだった。
「ヒナの首筋には今も消えない手術の傷跡が残ってる…それ隠す為に髪もあんな伸びちまってな……。」
『………あの時…だから…?』
佐奈はヒナが自分を突き放した時の事を思い出した。
あれはきっと…自分に"そのこと"を知られまいとしただけだった事、そして、自分に本当の事を話そうとしてくれていた事を理解した。
「それにしたって電極を頭に入れてコンピューターを操作ですか…まるでSF映画ですね…。」
「あいつもそれを日常的に使ってるわけじゃ無いと思うが…ほら、佐奈とヒナが冴嶋組に捕まった時とか…覚えてないか?」
『…あ…!!メール…ですか?』
あの時孝之助に届いたメールの事は、当時佐奈自身も不思議に感じていた事だった。
そして驚く佐奈を見ると、孝之助は少年のような顔で笑った。
「あの時ヒナ、パソコン手元になかったのに俺に"パソコンのメール"で連絡してきたんだよ。そういうのあっただろ、今までにも。
ヒナはサイボーグだとか気持ち悪いとか言われ続けて嫌がってたけど…俺は純粋に凄いと思ったよ。」
『…孝之助さん…。』
孝之助のこういう、偏見を持たずに子供のようなまっさらな目で人を見れる所に皆救われてきたんだろう。
佐奈はそんな孝之助を見ながら思わず笑みをこぼしていた。
『ヒナさんってお姉さんがいたんですね…!!孝之助さんは会った事ありますか?』
「あ…いや…。」
『?』
佐奈のその問いに、孝之助は一瞬言葉を詰まらせた。
先程とは打って変わって、ピンと張りつめた空気が流れると、孝之助の口からは思ってもみなかった答えが返ってきた。
「…もう亡くなってるよ。」
『……え?』
「俺もヒナの姉さんの事は詳しくは知らんが…大学で出会った男から酷いストーカー被害を受けてたらしくてな…」
佐奈は真っ白になった頭を整理しながら、この時ほど神様というものを恨めしく思った事は無かった。
特に苦労もなく生きてきた自分がいる一方、どうしてこんなにも神様は彼に冷たくあたるのだろう、
これではあまりにも…彼が…。
「ヒナは日本に戻ってすぐ警察のサイバー犯罪対策に力を貸しててな、その頃ちょうどヒナの姉さんは警察にストーカー被害を訴えてたんだ。
でも警察は動いてくれなかったみたいで後でその経緯を知ったヒナが逆上して、警察のデータベースを攻撃して逮捕された…ってのが当時のこの事件の通説だったんだよ。」
「私もそう記憶していますが…先程の話からすると本当は……」
『機械の…暴発…?』
佐奈の言葉に孝之助は静かに頷いた。
「その後案の定、某国の圧力でヒナの事件はもみ消されてな…当時ヒナの口から何も聞きだせなかった俺は訳も分からずヒナの身柄を引き渡した。ヒナからこの話を聞いたのは、それからもうずっと後のことだったからな…。」
『…。』
佐奈の頭には孝之助の言葉がとぎれとぎれに聞こえていた。
過去、生い立ち、ヒナの背負ったものと罪、かつて佐奈が知りたいと思っていたヒナの事。
それはあまりにも……残酷な現実の積み重ねだった…。
「長々と喋っちまったが俺が話せるあいつの事はこれだけだ、ヒナをあいつらが欲しがった理由はBCI絡みで間違いない。佐奈…お前はどうしたい?」
『私は…!!』
"今すぐヒナさんを助けに行きます"と返そうとした佐奈だったが、隣にいる和泉を見てとっさにその言葉を飲み込んだ。
自分は昨日、和泉にあんなに思わせぶりな事を言っておいて…今更…?
だが当の和泉は佐奈の迷いもすべて見透かしたように笑うと、佐奈の背中をポンと押した。
「俺の事は気にすんな、お前がどれだけヒナを好きか…俺が一番知ってる。それにヒナは俺にとっても仲間だ、そんな理由で…奪われてたまるか!!」
『和泉さん…。』
「でも…諦めるとは一言も言ってねえからな!!」
『はいっ…!!』
そう言って笑いあう二人を、九条と孝之助はこの上なく甘酸っぱいものを微笑ましい視線で見つめていた。
「…和泉…。」
「青春ですねえ…。」
「な…何だよ…!!そんな目で見るなぁぁぁ!!!!」
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ー…バサッ…
「いいか、目標は日本シーギミック本社、あっちは間違いなく警察沙汰にはしたくないだろうからそこを突く。油断は絶対にするなよ。」
『はいっ!!!』
「データの回収はまかせて下さい。全て回収して見せます。」
「警察沙汰にしたくねえなら思う存分暴れられるな!!SPは任せろっ!!」
「でも和泉…ほどほどにしてよ?裁判になってももう弁護出来ないからね…?」
「佐奈さん。」
『はい!!』
九条は意気込む佐奈の肩をポンと叩くと、穏やかな口調で佐奈に告げた。
「…きっとこれからヒナは佐奈さんを守る為に徹底的に遠ざけようとするし拒絶すると思う。でも本心は全部反対だって……信じてあげて…。」
『………はいっ!!!!!!』
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ー…ザッ…
「救出作戦……つっても可愛げも何もないお姫様だがね…」
「行くぞ!!俺の可愛い部下に手を出して…タダで済むと思うなよ…!!!!」
【14】ヒナの傷跡 -END-
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