13.引きかえに、守りたいもの
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ー…バタン!!
『あれ~…おかしいなあ…。』
翌日、佐奈はヒナの為に作ってきたクッキーを手に、見当たらないヒナを探していた。
「…おう…佐奈……。」
「おー…おはよう…。」
『……?二人とも何か元気ないですね…どうかしたんですか?』
佐奈を見て明らかに動揺した様子の和泉と孝之助を見て佐奈は不思議そうに首をかしげると、姿の見えないヒナについて尋ねた。
『ヒナさんってまた朝からお仕事なんですか?ヒナさんクッキー食べたことないなんて言うので皆の分作って来てみたんですが…良かったらどうぞ!!』
「おお…ありがとな……じゃなくて佐奈……あのな…。」
笑顔でクッキーを差し出す佐奈に孝之助が言い出しづらそうに口ごもると、佐奈の背後から九条が声をかけた。
「佐奈さん、おはようございます。」
『九条さんおはようございます!!昨日はケーキご馳走様でした!!あの…ヒナさん見ませんでしたか?』
「………佐奈さん、落ち着いて聞いてね。」
『え?』
そう言って孝之助に目線を向けた九条に、明らかにおかしな空気を醸し出す和泉と孝之助。
そしていつもと違ってやけに殺風景なヒナのデスクに、さすがの佐奈も事務所内の異変に気が付いた。
『え…あの……何が…?』
「ヒナ、辞めたよ…この事務所。」
『…へ…?』
言われた言葉の意味が一つも理解できない佐奈は、皆が冗談だとすぐに言ってくれるものだと信じて、必死に笑顔を取り繕った。
だがその努力は無情なまでに意味をなさず、皆の神妙な面持ちは崩れることは無かった。
「今日の朝来たら辞表だけが俺の机に置いてあって…部屋からもいなくなってて連絡もとれねぇ。」
『冗談…ですよね…?あ、この間孝之助さんのケーキ食べちゃったからでしょ?もう~…冗談が過ぎますよ!!』
「…佐奈。」
『何で……だってそんな事…一言も…クッキー食べてくれるって…約束したばっかりなんですよ…?』
『ヒナさん…あの…私のこと……迷惑ならそう言って下さい……。』
「…迷惑じゃない。」
『迷惑じゃないって……言ってくれたんです!!!!そんな筈……ないです!!!!!!!』
ー…バンッツ!!!!!!!!
「佐奈!!!!!!」
事務所を飛び出した佐奈とそれを追った和泉を見送ると、九条は頭を抱える孝之助に話しかけた。
「あの…孝之助さん…。」
「…ん?」
「相談が…あるんですけど。」
事務所を取り巻く暗雲は、かくもあっけなく佐奈から大切な人を奪い去った。
唯一の頼みの綱の携帯も無情なアナウンスを繰り返すばかりで大好きなヒナの声を聞かせてはくれず、
目は涙でかすみ、行くあてすら思い浮かばない。
佐奈はふらついた足取りで大通りに出ると、
万に一つの出会える可能性に懸けて、息が上手くできなくなるまで街を走り続けたのだった…。
【13】引きかえに、守りたいもの -END-
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