13.引きかえに、守りたいもの
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『おっはよーございますっ!!!』
「…お…おう…何かえらく今度は元気になったな…。」
昨日の花占いの代わりの花束を持って元気に出勤してきた佐奈は、明るい笑顔で皆に挨拶して回った。
『ヒナさん!!おっはようございまー…す…あれ?』
「ヒナならなんか依頼人から連絡があったって朝一で出てるよ。」
『そう…なんですか。』
ヒナがいないことに若干気を落とした佐奈がすごすごと自分のデスクに向かおうとしていると、
突如何かが佐奈を引っ張り、佐奈は驚き声を上げた。
ー…ぐいっ
『わあああっ!!!え!?』
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「お姉ちゃん探偵さんでしょ?私の赤ちゃん…探してほしいの!!」
『へ…?あ…赤ちゃん…?』
....................................................
ー…ザク…ザク…
『…無いなあ…。』
佐奈はあれから、少女に言われた事務所の近くの河川敷に佇んでいた。
今回の"依頼"である少女の"赤ちゃん"を探す為、腰まである草を掻き分け目を凝らしていたのだ。
『お姉ちゃんに任せてなんて調子いい事言っちゃったけど…見つかるかなぁ…。』
少女から言われた唯一の手がかりである河川敷の想像以上の広さに、佐奈は思わす目を細めた。
だが涙目で自分に助けを求めた少女の為、佐奈はもう一度気合いを入れ袖をまくった。
ー…ザッ…ザッ…
ー…ザッ…ザッ…
(…なんか…黙々と一人で作業してると考え込んじゃうな…。)
黙々と地面と向き合う事早数時間。
次第に赤くなりつつあった空の下、佐奈は体に付いた草を払いながら河川敷の土手に腰を下ろした。
『……ふぅ…寒くなってきたなぁ…。』
少し眩しい夕日を見ながら佐奈は、ただずっとヒナの事を思い出していた。
(ヒナさんに…会いたいなぁ…。)
1人になると、やっぱり自分はどうしようもなくヒナの事が好きなんだと思い知らされる。
だがそれと同時に、ヒナの事をほとんど知らない自分にも気付かされて嫌になる。
『私…ヒナさんの誕生日すら知らないんだよなぁ……ヒナさんの過去なんて…分かんないし聞けないよ…。』
ー…カア…カア
『…ん?んん!???』
滲む涙を拭った先に佐奈の目に入ったものは、木の上で騒ぐカラスだった。
そのカラスの先にあったのは、なぜだか木に引っ掛かってしまっている佐奈の探していた"人形"だった。
『あっ…たあああああああ!!!!!』
佐奈はガバッと飛び起きると、人形の引っかかった木に手を伸ばした。
『あとちょっと…届かない…!!!!』
……カア!!カア!!!!!カアアアア!!!
『ちょ…人形取ってるだけでしょ!!静かにして…!!ちょ…きゃああああ!!!』
威嚇を繰り返し佐奈に攻撃を仕掛けてきたカラスに佐奈がひるんでいると、背後から何者かが人形を手に取った。
「はい。」
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『ヒ…ヒナさん…!?』
思いもよらない、だが今一番顔が見たかったヒナの登場に、佐奈は驚き慌てふためいた。
ヒナはカラスを追い払うと、驚く佐奈の手に人形を持たせた。
「何やってんの…?」
『あ…えっと…このお人形探しが今回の依頼でして…。』
「変な依頼。」
『しかも成功報酬、飴玉ですから♪』
そう言って笑った佐奈の笑顔を見たヒナはつられたように笑い、申し訳なさそうに俯いた。
「……この間の事…悪かったと思ってる…佐奈が悪いとかじゃ……無いから…。」
『ヒナさん…。』
必死にたどたどしい言葉でヒナはそう言うと、戸惑う佐奈の手をとり、自分の首筋に当てた。
『…え……?』
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「ごめん……あの時…」
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「朝比奈さん。」
「『!!?』」
突如背後からかけられた声に二人が驚き振り向くと、そこにはヒナに依頼を繰り返していたあの依頼人の男が立っていた。
その男に見覚えのない佐奈は、一人キョトンとした顔でヒナと男を見た。
「…佐奈、先に戻ってて。」
『え…あ…はい…。』
(…ヒナさん…?)
ヒナのいつもと違う様子を心配そうに見つめながらも、佐奈は男に軽く会釈をし言われた通りその場を離れた。