13.引きかえに、守りたいもの
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ー…ブチッ…ブチッ…ブチッ……
『……聞く…聞かない…聞く…聞かない…。』
ー…ブチッ
『聞く……!!!!!』
あれからさらに数日、
相も変わらない状況は続き、佐奈は花占いの残骸からガバリと顔を上げた。
『そうよね!聞いた方がいいに決まってる!!聞いた方がいいんだ!!』
「お前それ何本やってんだよ!?花瓶の花全部バラバラになってんじゃねーか!!」
『…うっ。』
和泉の言葉にぎゅっと唇を噛み締めると、佐奈はいじけたように帰る準備を始めた。
『……新しいの明日買って来ます…では…お疲れ様です…。』
落ち込み一人すごすごと帰路につく佐奈を和泉と九条は不思議そうに見送ると、
九条が何か言いたげな目で和泉をじとっと見た。
ー…バタン
「…あいつ何であんな落ち込んでんの?」
「…和泉が余計なこと言ったからでしょ。」
「俺は本当の事言っただけだろ!!」
「和泉…モテないわけだね…。」
..............................................
ー…ピッ
『いざ…。』
あれからヒナに会う事なく自宅に戻った佐奈は、携帯を前に一人姿勢を正していた。
(結局直接聞くのは怖くて電話になっちゃったけど……花占いだって(5本目にして)聞くって出たんだし…聞く!!)
佐奈は深く息を吸うと意を決したように携帯を握りしめ、ヒナの携帯へと電話を繋げた。
ー…プルルル…カチャ
「はい。」
『あ……ヒナさん…あの…今大丈夫ですか?』
「…うん。」
電話口から聞こえる少し眠たそうなヒナの声、その愛おしい声に佐奈の胸はいつもより早く脈打った。
『もう…ご飯食べました?』
「うん。」
『今、私クッキー焼いてて…あ、クッキー好きですか?』
「食べたことない。」
『…え!?食べたこと無いんですか!?手作りのクッキーって美味しいんですよ~……
(……ってじゃなーいっ!!!!!!!これじゃまたいつもと同じで意味のない会話じゃない!聞くんだ佐奈!!!聞くんだーーっっ!!!!!!!!)
自分で自分に渇とツッコミを入れると、佐奈は覚悟を決めたようにヒナにあの日の事を尋ねた。
『ヒナさん…あの…私のこと……迷惑ならそう言って下さい……。』
佐奈の口から絞り出したように出たその言葉に、ヒナは少し驚き黙りこんだ。
佐奈にとってはその数秒が死刑を宣告されるように辛い時間だったが、ヒナの口から出たのは予想外な言葉だった。
「…迷惑じゃない。」
『…じゃああれは…どうして…。』
「…………。」
佐奈の質問に今度は更に長く黙り込んだヒナに、佐奈は慌てて取り繕うように返した。
『すみません、立ち入った事まで聞いて…でも、迷惑に思われてないって分かっただけでも十分です…!!』
「佐奈…。」
『あとヒナさん…まだクッキー一度も食べたことないなら今度…クッキー作ってくるので食べて貰えませんか…?』
「うん…食べる。」
『じ…じゃあ…ヒナさんの一番最初に食べるクッキー、美味しいって言われるように頑張りますね!!』
「うん…。」
『じゃあ…おやすみなさい…!!!』
ー…ピッ…ガタン…
『……よ…良かったあああ…嫌われてなかった~……!!!!』
ヒナとの電話を切った佐奈は、力が抜けたようにヨロヨロとその場にへたり込んだ。
好きだと言われたわけでもない、ただ迷惑じゃないと言われただけ。でもそれが今の佐奈にとっては天にも昇る程嬉しい言葉であった。
『ヒナさん…大好きです…。』
先程までヒナの声が聞こえていた携帯を愛おしそうに握り締めると、佐奈は安堵したようにその場で眠りについたのだった…。