11.正義の詐欺師
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ー…バタバタバタ…バタン!!!
「佐奈さん…おかえりなさい。」
『…九条さん、私、小春さんを助けますから!!』
事務所に着くなり必死の形相で高らかに宣言する佐奈に、九条は不思議そうに答えた。
「…?私だって依頼は受けるって言ってるでしょう。仕事はします。」
『…小春さんは、九条さんに助けてもらうわけにはいかないって依頼を取り下げると言っていましたよ…。』
佐奈の言葉に九条はたいして興味を示さず、背を向けたまま答えた。
「それなら別事務所への紹介状でも妹さんに渡して今回の依頼は終了ですね。じゃあそう孝之助さんに伝えま…」
『私が助けるっていってるでしょーーーー!!!!!!そんな事言うなら九条さんは手を出して頂かなくて結・構・ですっ!!!』
「な…!?そんなの佐奈さん1人で無理に決まってるでしょう!!相手の男に直談判でもするつもりですか!?」
『私の全財産使ってわざと騙されて証拠を押さえます!!そうすれば芋ずる式に小春さんへの詐欺の余罪も…』
「…全財産っていくらですか…。」
『え…今通帳にある20万ですが…。』
「そんなはした金で尻尾をだす詐欺師なんていません。」
『……残りの作戦は秘密です。』
「考えなしに首突っ込んでうちの信用を落とさないで下さい。」
『~~~~~~!!!!!!!』
全ての言葉に蓋をされるような九条の言葉。
口で勝つことも丸め込むことも出来ないと踏んだ佐奈は、捨て身の行動に出た。
『…依頼としてお金を払えば仕事は受けてくれるんですよね?』
「…?だからそう言ってるじゃないですか。」
『じゃあ私のこの20万をお支払いしますので、小春さんと話をして下さい…!!』
「はあ?」
そう言って通帳をびしっと差し出した佐奈に九条が呆れていると、佐奈は必死に言葉を続けた。
『小春さんは九条さんと話がしたいと言ってらっしゃいました…一度ちゃんと話をしないと前に進めないと思うんです…。』
「ハア…分かりました…彼女に謝ります。恨み言を言いたいなら聞きますから彼女の為に佐奈さんがそんなお金を使わなくていいで…」
『違います!!!!違いますよ九条さん…!!』
九条の言葉を遮るように佐奈は必死の様相で九条に駆け寄った。
『九条さん、小春さんは九条さんを責めたいわけじゃないんです…謝りたいだけなんです!!』
「謝る…?何を言われたか知りませんがそんな訳ないでしょう。私は彼女の父親を自殺に追いやった張本人です、恨まれてるに決まって…」
『ああああああもう九条さん!!!!!!』
「!?」
突如大声を上げて九条の言葉を遮った佐奈は、頭をがしがしとかくとバンと机に手を置き九条に向き直った。
『前に、いつも彼女に"信じて貰えなくなるから別れる"んだって言ってましたよね?
自分が元詐欺師だからって…でも本当は九条さんが相手を信じられないからじゃないんですか…!?だから…相手も九条さんの事を信じられなくなってしまう。』
「…。」
『でも…私は信じますよ九条さんの事!!!何回疑われたって信じて貰えなくたって私は…どんなことがあったって信じ続けてやる!!!!!!
このお金だって九条さんが前に進む為に使いますからねーーーっっ!!以上っ!!!!!!!!!』
大声で言いたいことを言い放った佐奈はなんとなくその場にいづらくなり、その勢いのまま事務所を飛び出した。
かたや九条は佐奈の勢いに呆気にとられ、一言も発せぬまま佐奈の後姿を見送っていた。
「……。」
"一度ちゃんと話をしないと前に進めないと思うんです…"
"このお金だって九条さんが前に進む為に使いますからねーーーっっ!!"
「私の為…?何で…。」
「…何でもクソもあるか!!俺はお前を信じるって決めたんだ!!さあどっからでも疑ってかかって来い!!!!これからは俺が…」
『でも…私は信じますよ九条さんの事!!!何回疑われたって信じて貰えなくたって私は…』"
"どんなことがあったって…信じ続けてやる!!!!"
疑われ続けて怖くなって、
先に張り巡らせた疑いと諦めのレッテル。
そんなバカな私を救い上げようと必死に手を伸ばす。
あなた達はなんて強い人なんだろう。
「頑固な所も…ホントそっくりですね…。」
九条はそう言って笑うと、佐奈の後を追って事務所を後にした。
その横顔は今までの諦めたような顔とは違い、どこか吹っ切れたようにも見えるものだった…。