11.正義の詐欺師
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ー…ピー…チチチチ…
『おはようございます…。』
「うおっ!?なんだお前その顔っ!???」
昨日あれからほとんど眠れずに、泣きはらしたボロボロの状態で出勤してきた佐奈に、孝之助は驚き声をかけた。
「な…何があったんだよ?」
『孝之助さん…孝之助さ…う…うわああああああん!!!!!』
「え!?何!?何何何!?俺???」
「おっさん何佐奈泣かせてんだよ!!」
「孝之助さん…ついに佐奈さんに手を…!?」
「違うわバカ!!佐奈、どうしたの!?顔とか言ったからか!?ごめんってば佐奈~~~~!!!」
孝之助の顔を見た途端に止まらなくなった涙。
突然の出来事に動揺する孝之助は、ひとまず佐奈を奥の応接室へと連れて行った。
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ー…コトッ
「はいよ、落ち着いたか?」
『はい…取り乱してすみませんでした…。』
孝之助に事の次第を話した佐奈は、孝之助が出した温かいお茶を飲み冷静さを取り戻した。
「まぁ…お母さんの言う事も分かるんだよな、佐奈の事心配してくれてるんだろうし。」
『それは分かってます…分かってますけど…皆私の大切な人なのに…そんな風に言われて悔しくて…。』
「…ありがとうな、あいつらや九条っちの事も、そんな風に思ってくれて…。」
『孝之助さん…。』
孝之助は佐奈の言葉を嬉しそうに噛み締めると、手に持っていたお茶を口に運びながらポツリポツリと続けた。
「…九条っちの母親さ、父親が残した闇金の借金を全て被って、取り立てに追いつめられて自殺したんだよ。」
『…え…?』
「九条は闇金排除を警察に散々訴えたんだけど中々動いてくれなくてね…次第に九条は自分で闇金の連中を追い詰め始めたんだ。
あいつは元々ヘッドハンターやってて口も上手くてさ、上手く騙して丸め込んで、一人一人弱い所から喰い潰していってね。」
初めて聞いた九条の過去。
それはもう、10年近くも前の話だった。
そのうち九条は大人数の詐欺グループを作り闇金組織の人間から金を奪い続け、
法外な利息に困窮した母のような人間に、その金を渡すという義賊じみたことをやり始めた。
相手は犯罪者ばかりということもあったが、
皆九条の巧妙な手口と話術にほだされ、九条達を告訴しようとする者は誰一人として現れなかった。
「…だけどな、それからすぐ母親を自殺に追いやった闇金の男が、九条達に破綻させられて自殺したんだ。」
『・・・え?』
「やっと復讐が果たせたはずなのにな、質素な葬儀をする闇金の男の家族を見て、
あいつはそれからすぐに警察に出頭してきたんだよ…。」
『……!!』
「あいつが出頭したお陰で相手の闇金グループも芋づる式に検挙させざるを得なくなってな。まあ…あいつの事だからそれも計算ずくだったんだろうけどさ。」
思いもよらなかった九条の過去。
九条の過去を話し終えた孝之助は、真面目な顔でじっと佐奈を見ながら言った。
「九条も、そしてヒナも和泉も、どんな理由があったにせよ過ちを犯したことは間違いない。でも…絶対に、性根は腐っちゃいないと俺は思うよ。」
『…………私もそう…思います…!!!!!』
唇をぎゅっと噛み締め、強い意志を持った瞳で佐奈は頷いた。
それを見て孝之助は佐奈の頭をガシガシと撫で、嬉しそうにニッと笑った。
「…よーし!!じゃあ今日も仕事に励もうかね、佐奈ちゃんよ。」
『はいっ!!どこまでもお供致しま…』
ー…ガシャーン!!!!!!!
『…え?』
突如佐奈の言葉を遮るように聞こえた音に、二人は何事かと慌てて応接室を後にした。
「ど…どうしたってんだ!?」
『九条…さん…?』
二人が駆けつけた先には、入り口そばで立ちすくむ一人の女性と、驚いてコップを落としたらしい九条が立っていた。
「九条誠一さん…ですよね…?」
「…!!」
九条の前に現れたその女性は、先日の結婚詐欺の被害者として名前の上がっていた安懸小春という女性だった。
小春は九条に近づくと、おもむろにその場で頭を下げたのだった。