10.オタクジャーナリストの憂鬱
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それから数時間後、
その日のうちに例の"自殺の名所"のある県に辿り着いた五人は、休む間もなく太田を探しに向かった。
「じゃあ九条っちはとりあえずそのネットカフェ、お前ら3人は自殺スポットにへ向かえ。俺はこの辺の警察に太田が保護されてないか確認とってみる。」
「「はい。」」
少し肌寒い空港のロビーを抜けた五人は、孝之助の指示に従い三手に別れタクシーに乗り込んだ。
『ううう…私もどっちかっていうとネットカフェが良かったです…怖い…。』
「ウダウダ言ってねーでさっさと行くぞ!!さあにゃん!!!」
『その名前で呼ばないでくださいっっ!!!!』
目的の場所は空港から数十分の距離で、日が落ちる前に辿り着けたことに佐奈は少し安堵の表情を浮かべた。
だが到着したその場所は四方八方海に面した断崖絶壁で、自殺を止める注意書きや看板がおどろおどろしい雰囲気を醸し出していた。
ー…ヒュウウウウ…
『…霊感ないですけど…何か独特な嫌な感じですね…引きずり込まれそう…。』
「…九条を1人あっちにやった意味が分かったな…。」
ビクビクと脅えながら佐奈がなかなか進めずにいるのを見たヒナは、佐奈に手を差し出した。
「…つかまってれば。」
『あ…ありがとう…ございます…!!』
「悪いなヒナ…」
「和泉は逆回りで向こう、三人一緒じゃ効率悪い。」
「この人でなしメガネーーーーー!!!!俺が足踏み外して死んだら呪ってやるからなああああ!!!!!」
和泉はそう言い捨てると、怖さを振り切るように断崖絶壁を太田を探し走り去った。
とにかく太田がいるのかいないのか、それをハッキリさせないことには佐奈達はここから離れられないのだ。
『太田さーん!!いませんか!?』
懸命に名を呼びながら探し回るが、叫び声は波音にかき消され、足場の悪さからなかなかスムーズに探し回る事ができない。
そんななか、佐奈はまだギリギリ水平線上にある夕焼けに微かに動く人影を見た気がして足を止めた。
『………………あ!!!!!!!!!!!!!!!!』
「?」
突如佐奈は声をあげて何かを見つけたように岩壁に走り込んだ。
そして次の瞬間、ヒナの目の前からは佐奈の姿が消えていた。
「な………!?佐奈!!!!!!!!!」
佐奈の後を慌てて追ったヒナは、目の前の状況に驚く暇もなく佐奈の手を取った。
佐奈の体半分は岸壁から投げ出され、片手で飛び降りようとしていた太田久一郎の手を、もう片方の手で必死に掴める岩肌に手をかけている状態だったのだ。
「佐奈……!!手…離すな…!!!!!」
『ヒナさん…!!!!!』
何とか佐奈を引っ張り上げようとするが、その先には大の男がぶら下がっている。
いくらヒナと言えどもこの足場で軽々と持ち上げられる重量ではなかった。
「何…で…離してください…!!俺はもう…ここで死のうと決めたんです…!!!」
『死んじゃダメです…!!太田さん!!!!!』
「ど…どうして俺の名前…?」
ギリギリの状態で体勢を保っているヒナだったが、佐奈の掴んだ手が汗で次第に滑り落ちてしまいそうになっていた。
「く…っ……………!!!!!!!」
『ヒナ…さん‥もう…腕が…!!!!!』
「佐奈!!!!!」
ー…ガッ!!!!!!!!
佐奈の腕の力が限界に達しようとした瞬間、佐奈の手は更に別の手に掴まれ少し安定を取り戻した。
『い…和泉さん……!!!』
「ヒナ!!!一気に引くぞ!!せええええええのっっっ!!!!!」
ー…ドサッ!!!!!
『ハア…ハッ………。』
「な…。」
間一髪のところで太田を引き上げた三人は、すべての力を使い果たしたようにヨロヨロと崖の端から離れて倒れ込んだ。
『し…心臓が……死ぬかと思いました…』
「まさかこのシチュエーション本当に起こるとはな…まあ落ちたのは佐奈だけど。筋トレ役に立ったじゃねえか…あはは!!」
『ほとんど火事場のバカ力っぽいですけど…。』
そう言って笑い合う三人の様子を見ていた太田は、驚いた顔でまじまじと佐奈を見た。
「さ…さあにゃん…?」
「てめえ助けられといて第一声がそれかあああああああああああああ!!!!もっぺん突き落したろか!?」
「あいつら佐奈の写真送ったな…その写真出せ、削除してやる。」
突如助けられたかと思うと物凄い剣幕で二人にキレられた太田は、よく状況が分からないまま二人にペコペコと謝り続けていた。
『ま…まあまあ二人とも……。』
「おーいっ!!!!無事か!?」
「…何であの二人太田さんにキレてるの?」
『…孝之助さん!!九条さん!!』
三人の元に駆けつけた孝之助と九条によって太田に事の次第が伝えられ、太田久一郎は無事保護された。
ついさっきまで死ぬつもりでここに来ていた太田だったが、
自分の事を命懸けで助けてくれた三人を前に、何度も何度も涙を流しながら頭を下げた。
「本当に…俺なんかの為に…すいませんでした…俺ホントは怖くて…死ぬの…怖くて…!!!!」
『いやいや…泣かないでください!!みんな無事だったんですから…!!一緒に帰りましょう!!』
「…そうですね、早くここからは離れた方が良さそうですよ。」
「『え?』」
九条は佐奈達の後ろを指さし、ニコッと笑って言った。
「だってほら後ろ、山程。」
「『ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?ああああああああああ!!!!!!』」