10.オタクジャーナリストの憂鬱
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ー…カランカラン
「お帰りなさいませ~!!ご主人様!!」
「いやあ~みいぽんは今日も素敵でござるな~敬礼ッッ!!」
「ちょちょちょ、みいぽんは吾輩の嫁だって言ってるでしょ~!!!」
「おおおトーマス氏!!ちょwwww新しい娘も何だかカワユスですぞ!!!」
『・・・。』
「・・・。」
入ってきた男達の独特な言葉運びとオーラに三人が呆気にとられていると、佐奈が恐る恐る口を開いた。
『和泉さんヒナさん…多分オタクさんの知り合いってあの方々だと思います…裏で聞いた特徴と一致してます…。』
「おいおい…あれマジじゃん。俺通訳ねえと会話すら成り立たねぇかもだぞ。」
「…。」
三人が店内で男達に話しかけようかたじろいでいると、一人の男性が持っていたノートパソコンをを開きながら対象の名前を口にした。
「そう言えば太田氏は最近お姿拝見しないが大丈夫だろうか?」
「サイトの更新も停止してますしな~はてさて…お、注文を忘れておった、失敬失敬www」
男達が店員を呼ぶしぐさをしたのを見て、佐奈がすかさず注文を受けに男達のテーブルに近づいた。
『今日から入りましたさあにゃんです…☆ご注文をどうぞご主人様~…』
「ブフォっwwwwwさあにゃんテラカワユス~!!!ではでは私チャーハンを!!」
「貴~~様~~魂胆がミエミエだぞ~~!!」
「さあにゃんさあにゃん一枚!!…新人メイドの写真など送れば太田氏も現れてくれるやもしれぬ♪」
不意打ちで写真を撮られた佐奈が引きつった顔で必死にオーダーを聞いていると、
男達の背後におどろおどろしい顔の和泉とヒナが立ちふさがった。
「…おい、チャーハンは品切れだ…ちょっとツラ貸せコラ。」
「今撮った写真…ネット上に流したらパソコンの全データごと再起不能にしてやる…。」
『い…和泉さん…ヒナさん!!』
「あばばばばばwww極道さんに絡まれこちら緊急事態発生中!!!悪霊退散悪霊退散~www」
「極道さん言うな!!!てめーら以後www←コレ使ったら窓から放り投げるからな、真面目に答えやがれ。」
「……は~い。」
我慢の限界に達した和泉の威圧感に大人しくなった男達は、素直に和泉とヒナの話に耳を傾けた。
「太田久一郎を知ってるな、あいつの居場所知らねぇか?」
「太田氏?いや、それが我々も最近心配しておりましたところで…。」
「心配?」
「はい…仲間内の掲示板にこんな書込みを残してから姿が見えませんので…いつも非常に明るい太田氏にしては珍しいカキコなのであります。」
そう言って一人の男性が見せたのはあるメイドファンが集う個人サイトの掲示板で、
そこには"くいっち"というハンドルネームの人物が"この世はバカばっかりだ腐ってる、もういい死にたい"とだけ書かれていた。
「大半のユーザーからしてみれば厨二乙な発言でありますが我らは太田氏の普段を知っているが故、何か不可思議に思い‥。」
「その掲示板…管理者は?」
「わたくしでありますが…?」
「太田さんを助けたいので協力お願いします、少し…調べさせて貰えませんか?」
「はい…でも調べるとは…?」
ヒナは管理人の男性の許可を取ると置いてあったパソコンを借り、素早く掲示板の何かを調べ始めた。
『ヒナさん…?』
「これで発信場所が特定できる。」
ー…カチカチカチカチ
ー…カチカチカチカチ パチッ…
「おおおお!!…これは…ヒナ氏、お主神か!!」
「ちょっと…邪魔…。」
ヒナがパソコンを使って何かを調べているのを食い入るように見つめていた男たちは、その技術とタイピングの速さに感嘆の声をもらした。
「…発信元はネットカフェ…店舗までは分かった。和泉、孝之助さんにすぐ連絡して。」
「よっしゃ、これで情報はもう充分だろ!!行くぞ佐奈!!さっさと辞めてこい!!」
『ええっ!?…は、はいっ!!!あ…皆さん、本当にありがとうございます!!お陰で助かりました!!』
「は…はい…何だかよく分かりませんが…とりあえずさあにゃん…萌えェェェェェェェェ!!!!!!!!!!!」
協力してくれた男達の声援を受け佐奈は笑顔で頭を下げると、メイドカフェを強引に辞めヒナと和泉に合流した。
ー…バタバタハバタ…
『…孝之助さん、何てですか?』
「九条さんが調べたらやっぱりそのネットカフェのある県に向かうチケットをとってたみたいだから、俺達も急いで向かう。」
『向かうって…県とネットカフェの店舗が分かったくらいで…どうやって探すっていうんですか…?』
不思議そうにする佐奈に、ヒナはある場所の心当たりを口にした。
「そのネットカフェの近くには全国的に有名な自殺の名所がある…太田にそれ以外その地に縁もないらしいから十中八九そこに間違いない。」
『自殺…!!!!!』
嫌な言葉が現実味を帯びてきたことに佐奈はゴクリと唾を飲み込んだ。
『あの、このまま5人で向かうんですか!?』
「依頼人は金は厭わないから一刻も早く助け出してくれって言ってるらしいからいいんじゃね?」
『…なんか五人で旅行みたいですね。』
「自殺の名所に…?」
そうして呑気な会話をしながら三人は秋葉原からタクシーに走りこみ、九条と孝之助の待つ空港へと向かったのだった。