10.オタクジャーナリストの憂鬱
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ー翌日ー
『お帰りなさいませー…ご主人様…。』
「………!!」
「………!!」
早速メイドカフェの店員となった佐奈を心配し店に訪れたヒナと和泉は、可愛いメイド姿の佐奈に思わず固まった。
一方佐奈はどうもまだ恥を捨てきれないようで、照れながら二人のテーブルに近づいた。
『あの…恥ずかしいんであんまり見ないでください…。』
「バ…ッカ見てねえよ!!俺が見てんのは周囲に太田が来てねえか見てるだけだ!!!な、ヒナ!?」
「…うん。」
焦って照れを隠すように返事をする二人に、佐奈は少し小さな声で耳打ちした。
『…そうえば早速いい情報ゲットしましたよ、お店の子達裏では客の事愚痴ってばっかだったんであっさり太田さんの名前が出てきました。』
「なんて言ってた?」
『太田さん裏でも案の定オタクって呼ばれてて毎週金曜日に必ず現れるかなりの常連さんらしいんですが突然ぱったり現れなくなったと…』
「金曜って…今日じゃねえか。」
『はい、それとオタクさんと仲良くしてた常連客がいて、その人達もだいたい金曜に現れるみたいなんです。その方達に聞いても何か分かるかもしれません。』
「…分かった。」
和泉とヒナと話し込んでいた佐奈は、奥から店長らしき人物の視線を感じ、そそくさと二人に注文をとった。
『怪しまれるので…とりあえず何にします?』
「じゃー俺オムライス。」
「チャーハン。」
『オムライスと…チャーハン……ですか…?あの…違うのにしません?ケーキとか、コーヒーとか…。』
二人の注文を聞いて明らかに焦って別メニューを薦める佐奈に二人は不思議そうに言った。
「何で。」
「やだよ、俺朝飯食ってねーもん。なに?不味いの?」
「さあにゃん(佐奈のメイド源氏名)ご主人様の注文聞いたら教えてね~!!」
『あ…は…はーい☆かしこまりましたご主人様~♪』
「さあにゃん…?」
「…ぷっ…あんま笑わせんなよ。」
『勝手につけられたんです!!』
ニヤニヤと楽しそうにする二人を恨めしそうに見ながら、佐奈はすごすごとカウンターの奥に入って行った。
「…どう思う、和泉。」
「まあまあじゃねーの?あいつもまあ一般的に見れば中の上くらいには入るし可愛い方じゃ…」
「太田の事だ。」
「あー…はいはい。分かってるよ冗談だよ。オタクね。」
焦って平静を取り繕う和泉にヒナが呆れながら続けた。
「二人してこんなとこで待つなら一人は対象の家をもう少し調べた方がいいと思う。」
「そーかよ、じゃあここは俺に任せてヒナ対象の自宅調べに行ってこいよ。」
「…和泉が行け。」
「…やなこった、てめえが行け。」
「「………………。」」
『お…お待たせ致しました~…。』
静かに火花を散らす二人の間を割って入るように現れた佐奈は、ぎこちなく二人が注文した料理をテーブルに並べた。
『えー…と…チャーハンとオムライスそれぞれにメイドさんからの素敵なサービスがつきまーす。(棒読み)』
「…は?」
お腹がすいていたようで早速料理に手を着けようとしていた二人が不思議そうに佐奈を見ると、佐奈は顔を赤くしながらヒナのチャーハンをスプーンですくって差し出した。
『はい…あーん☆』
「…………………はい?」
照れながらスプーンを差し出す佐奈は、まさしく秋葉原で言うところの"萌え"で、あまりの出来事にヒナは照れて顔を背けた。
「いや…自分で食べる。」
『ヒナさん…一口だけ我慢してください…これが決まりなんでしないと終われないんです……。』
(ヒナさんだから勿論嫌なワケじゃないけど…これは…恥ずかしいよ~!!)
「………。」
ギラリと光る店長の監視の視線を気にして小声で言う佐奈に、佐奈がさっきメニューの変更をしきりに薦めた理由をヒナはやっと理解した。
顔を赤くする佐奈にヒナも覚悟を決め、佐奈が差し出した一口を食べた。
『お…美味しいですか…?』
「……………………うん。」
「…………………おいコラ。」
顔を赤くしてうつむく二人をイライラした様子で見ていた和泉は、佐奈に向かって面白がったような様子で言った。
「オムライスにも何かあんだろ?ご奉仕してもらおうか~……さあにゃん♪」
『…オムライスのお客様にはメイドさんからのケチャップでお絵描きサービスとなっておりまーす。(棒読み)』
ヒナの程濃厚なサービスではなかったことに少し不服そうな和泉だったが、かたや佐奈は意気揚々とケチャップを構えた。
『…では、ピカチュウ描きますね☆』
「やだ。」
『え、じゃあ何がいいですか?』
「サグラダファミリア。」
『ピカチュウ描きますねー。』
有無を言わせず和泉のオムライスにピカチュウを描き始めた佐奈だったが、次第に佐奈の顔は渋い顔になっていった。
ー…コトッ
『………出来…ました…?』
「…これは……!?」
恐る恐る佐奈が差し出したオムライスに描かれたものはおよそピカチュウと呼べる可愛らしいものではなく、ケチャップが血と見まごう様なホラーなネズミの絵だった。
「すいませーん、このメイド、人のオムライスにスプラッタなネズミ描くんですけどーーーーー。」
『あああああすみませんんん!!!!!』
「ったく…お前絶対美術2だっただろ!!!」
『ほっといてください…。』
そう言って和泉がスプラッタなネズミの絵ごとオムライスを口に運ぶと、
にぎやかになった店内に、常連客と思しき三人組の男達が店内に入ってきた。