10.オタクジャーナリストの憂鬱
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ー…ガチャ……
「おかえりなさいませご主人様!!!!」
「…。」
「…。」
『…メイド……!?????』
秋葉原のビルの一角、対象が頻繁に出入りしているという店のドアを開けた三人は言葉を失っていた。
そこは可愛い店員の多さと、露出度高めの制服とで人気急上昇中の有名なメイド喫茶だったのだ。
完全に場違い感溢れる空気に圧倒された三人は、出迎えてくれたメイドさんに連れられるがまま怪しげな雰囲気の店内に足を進めた。
『私…今更ですが初めて入りました…。』
「俺だって初めてだよ…なんだあの鷲掴んでくれといわんばかりのムネは…最近のメイドカフェえぐいな…。」
「…。」
周りにはきゃぴきゃぴとしたメイドさんに嬉々として接客してもらう男性客達。
とんでもないアウェー感にいたたまれなくなった三人は、周りに視線を向けないように椅子に座った
「あの腹黒男(九条)…絶対このこと気付いてて一人別行動するってぬかしやがったな…。」
『あの…潜入しろって…私この店に潜入するんですか…?』
「「!!!!!」」
佐奈の言葉にハッと顔を上げた二人は、一瞬佐奈のメイド姿が見たいなどとも思ったが、こんなところで佐奈を働かせられないと首を横に振った。
「手がかりさえ聞き込みで掴めれば、潜入捜査なんてする必要はない。」
「そーだよ、こんなとこ潜入してみろ、鼻の下伸ばした男どものオカズにされんのがオチだぜ。ちょっと待ってろ。」
『・・・!!!』
和泉の言葉に背筋がぞくっとした佐奈を置いて潜入を回避する為に必死に聞き込みを行ったヒナと和泉だったが…
皆メイド達は言葉を濁すばかりで有力と言える情報は得られなかった。
「申し訳ございません、私がお仕えしているのはご主人様だけです、他の方の事はよく存じ上げておりません♪」
『…そう…でございますか…。』
「ったく…こんなとこの何が楽しいんだかわかったもんじゃねえな~この太田久一郎ってのもここにいるオタクの中にいるんじゃねーの…ん?」
『…どうしました?』
何かに気付いたようにハッとする和泉に、佐奈は期待を込めて和泉を見た。
「コイツ…名前からして生粋のオタクじゃねえか…!!!ほら、オ…オタク一郎…あははははははは!!!!!」
『……期待した私がバカでした…和泉さんのバカーーーー!!!』
爆笑する和泉をポカポカと佐奈が殴っていると、突如ヒナの携帯の着信が鳴った。
ー…プルルルルルルル
「……孝之助さん…?」
行き詰りつつあった三人の空気を破るように鳴り響いた着信音にヒナが電話を取ると、電話口で孝之助がその様子を見透かしたように言った。
「誰も口割ってくんないだろ?」
「…はあ…何かはぐらかされてますね…。」
「だろーね。そこの店の系列、客の個人情報の類絶対教えてくんねーんだよな~昔っから。じゃあやっぱ、佐奈潜入させて内側から聞き出してきて。」
「あの…孝之助さん…俺がここで毎日張り込みますので…それは勘弁してやってくれませんか…?これは…ちょっと…。」
言葉を濁しながらも必死に佐奈をかばうヒナに、孝之助は少し驚きながらも嬉しそうに笑った。
「お前の口からそんな他人を思いやる言葉が聞ける日が来るなんて嬉しいよ…ヒナ。」
「じゃあ…」
「却下。事は一刻を争うって言っただろ、だいたい数日間もメイドカフェにいりびたるような経費は出せません。」
「じゃあ…俺と和泉が…」
「190の大女と顔に傷のある人相悪い女、女装したって雇って貰えるわけないだろ!!以上!!」
「…。」
ー…ピッ
「おっさん何だって?」
「…メイドになって情報得てこいって。」
『……。』
佐奈は青ざめた顔でゴクリと唾を飲み込んだ。
だが人一人の命がかかってるかもしれないのだと自分を奮い立たせ、佐奈は頷いた。
「俺達も傍で見張ってるから…絶対に客の男達に手出しなんてさせない。」
「お前に手ぇ出す奴がいたら俺がボコボコニしてやるから、安心して聞き出してこい!!」
『…はいっ!!!』
心強い二人の言葉に笑顔を見せた佐奈は、二人に心配しないでくださいとだけ言い、メイドカフェの店長と思しき人物に話しかけたのだった。
.............................
ー…プルルルル………カチャ
「なーにメイドカフェ回避してんの。」
電話口から聞こえてきた孝之助の面白がったような声に、九条は心底嫌そうに答えた。
「下手したら佐奈さんだけじゃなく私までメイドさせられるかと踏んだので。」
「ご名答!!そのつもりだったのにあいつら自分が代わりにとかまで言ってたよ、いやあ愛だねぇ~♪」
「あの二人じゃ特殊メイクしたって女には見えないですよ…。」
九条の言葉に孝之助は声をあげて笑うと、笑いをこらえながら話の続きを尋ねた。
「で、太田の事は何か分かったかい?」
「今から渡航記録とか中心に調べようとは思ってますが、ひとつだけ…やっぱり彼が調べていたのは裏の組織と警察の繋がりで、何らかの圧力がかけられていたようです。」
「裏の組織……ねぇ…やぶ蛇だなぁ。」
「私達も、対象を見つけたらすぐ手を引いた方がいい。それこそやぶ蛇です。」
「そうだな…。」
孝之助はそう言って頷くと、九条に頼んだよとだけ伝え電話を切った。