10.オタクジャーナリストの憂鬱
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ー…バタバタバタ…バンッ!!!!!
「篠崎さん!!裏とれましたよ!!!これ……大スクープですよ!!!!間違いなく一面です!!!!!」
バタバタと息を切らせ駆け込んできた男とは対照的に、奥に座っていた男は渋い顔で溜め息をついた。
「…太田、その件からはもう手を引け。悪いがその記事は載せられない。」
「ど…どうしてですか!?日本の闇の一端を、やっと明るみに出せるかもしれないんですよ!?警察官からも…匿名ですがやっと証言取れたって言うのに…!!!!」
「お前の言うその警察官ってのは…こいつの事じゃないのか?」
「………え…?」
ー…グググググ
『いーっち…にーいっ……!!!!!』
「…………佐奈、お前何やってんの…?」
事務所の真ん中で1人ダンベルで体を鍛える佐奈に、孝之助が呆れた顔で尋ねた。
『何って……筋肉を……つけてるんですよ…!!』
「いや、俺が聞いてるのは何で今トレーニングしてんのって事だよ!!!!!」
「話せば理由は実に下らない事でですねえ…」
ー30分前ー
ー…ゴロン
1人暇を潰すようにテレビを見ていた和泉は、目に留まった映画のワンシーンを見てポツリと呟いた。
「佐奈ってこういう状況に俺とヒナがなったら、迷わず俺を落とすんだろうな~。」
和泉が見ていた映画には、"崖から落ちそうになった二人を必死に持ち上げようとして、片方を落としてしまう"というシーンが描かれていた。
『なっ…落としませんよ失礼な!!』
「嘘だね、物理的に二人持ち上げるのは佐奈には無理だから俺が落とされるんだぜ~絶対。」
少しいじけて皮肉を言う和泉に、佐奈は必死に弁明した。
『そんなことしませんっ!!大声出して助けを求めて二人とも助けます!!』
「…だいたいその状況になる前に重さに耐えられずに佐奈もろとも落ちると思う。それに俺はそんなヘマはしない。」
「例えばだよ!!黙ってろヒナ!!現実なら俺だってそんなヘマしねえわ!!」
言い争う二人を前に、佐奈は一人何かを決意したように立ち上がった。
『そんなに言うなら…二人持ち上げれるくらい力つけます。』
「「え!????」」
『和泉さん、ダンベル借ります。』
「ちょ…ちょ待った佐奈…そういう意味じゃねえから!!筋肉隆々の紅一点とかやだから!!おーい、佐奈?俺が悪かった、佐奈~~!!!!!」
「和泉のバカ。」
「ぷっ…くくく…。」
「…てなわけです。」(←一人で一部始終見ながら爆笑してた。)
「おいおい本当にくだらねぇな…てか九条っち見てたんなら止めてよ!!」
「やですよ。あの三人面白いし、何よりめんどくさい。」
そう言いながら笑う九条にガクッと肩を落とすと、孝之助は収拾のつかなくなった場をまとめるように声を上げた。
「あーもうお前ら仕事だ仕事っ!!!!佐奈も筋トレ止めて和泉もテレビ消せ!!全員暇なんだから手伝え!!緊急の捜索依頼だーーーっ!!!」
「『緊急の…捜索依頼?』」
キョトンとする面々を孝之助は真ん中のテーブルに集めると、依頼資料を並べ始めた。
「捜索対象は太田久一郎27歳、フリーの記者。依頼人は対象の姉であり、ライターの太田美香さん。」
「…あれ?俺、こいつどっかで見たことある。」
「だろうな、俺がお前の弁護士やってる時しょっちゅう取材しようと俺の回りうろちょろしてたやつだ。」
「あー…なるほど…。」
『…で、その人がどうして緊急の捜索依頼なんですか?』
不思議そうに尋ねた佐奈に、孝之助はフウと溜め息をつきながら答えた。
「警察と裏組織の"首突っ込んじゃいけない部分"を調べてたみたいでな、こいつが失踪する数日前にこいつに証言をした警察官が自殺してるんだよ。」
『…自…自殺!???』
「それは穏やかな話じゃないですねぇ…。」
「だからか知らねえが…警察は事件性は薄いって一点張りで捜索願受理してくれねーんだとさ。ま、警察からしても都合の悪い人間なんだろうよ。」
『そんな……。』
信じられないと言った表情で驚く佐奈に更に捜査資料を渡すと、孝之助は皆の顔を見ながら続けた。
「自殺か他殺か知らねえが、その警察官に圧力をかけた奴がもしいるのなら対象が命を落とす可能性もある。警察が動かねえなら、俺達が見つけ出してやろうじゃねえか。」
孝之助がそう言ってニッと笑うと、皆もそれに答えるように頷いた。
「対象は秋葉原のある店で失踪直前まで頻繁に目撃されていた、それが今一番の有力情報だ。まずはそこに向かって聞き込み調査、手掛かりなけりゃ佐奈、そこに潜入して調べてこい。」
『わ…私ですか!?』
「お前にしかできない仕事だ…頼んだぞ、佐奈。」
『…は…はいっ!!!!』
目を輝かせて返事をする佐奈の頭をポンポンと孝之助が撫でると、
四人はそれぞれ指示された秋葉原の店へと足を運んだのだった…。
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