09.ある波乱の休日
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「和泉、和泉起きて。」
「…んん?」
「孝之助さん先にタクシー乗せてくるから、それまでに酔い覚ましといてよ。」
「了解いたしましたあーっ!!」
元気よく返事をした和泉に呆れたような顔を返すと、九条は孝之助を支え部屋から出て行った。
その様子を見送った和泉が案の定もう一度寝ようと手元に目をやると、そこには酔いつぶれ眠ってしまった佐奈がいた。
「…佐奈。」
酔いつぶれて完全に眠りに落ちた佐奈を、和泉はぼんやりと眺めていた。
酒でほんのり赤みを帯びた柔らかそうな肌。
幸せそうに自分の隣ですやすや眠る佐奈のほっぺたに、和泉は思わず手を伸ばした。
「柔らか…おわっ!??」
『…うーん。』
柔らかい肌に和泉が触れると、佐奈は無意識にその手を引っ張り握り締めた。
佐奈のかわいらしい寝顔とそのしぐさは、酒の力もあったが和泉の頭のネジを外させるには十分すぎるものだった。
「…。」
部屋には二人きり、全てを自分にゆだねたようにくっつく佐奈が可愛くて可愛くて、
和泉は佐奈の頭を撫でながらそっとキスをした。
きっと佐奈はこのことを覚えていないだろう。
そんな虚しさもあったが愛おしさに負けた和泉が名残惜しそうに唇を離した、その時だった。
『……ヒナさん……。』
「…!!」
突如聞こえた聞きたくもなかった佐奈の寝言。
その名を口にした佐奈の顔は嬉しそうで幸せそうで、
泥酔状態でフラフラしていた頭からも一瞬で酔いが覚め、和泉は佐奈から体を離した。
「和泉…?」
ー…バッ!!!
「!!!…ヒナ。」
突如背後から声をかけられ驚いた和泉が振り返ると、そこにはコンビニから戻ったヒナが立っていた。
「何やってる。」
「…何もやってねーよ!!マヌケな顔で寝てるなと思って見てただけだ!!!」
「和泉、お前…」
「うるせえな!!!!!彼氏ヅラしてんじゃねえぞこの野郎!!!!!」
ー…バタバタバタ…
突如目の前に現れたヒナを押しのけた和泉は、そのまま一人佐奈の家を後にした。
立ちすくむヒナの少し後ろで事の一部始終を見ていた九条は、出ていくタイミングを失い柱の陰でハアと溜め息をついた。
「ヒナ。」
「九条さん…。」
「カギかけて帰ろうか。」
「…はい。」
ヒナはそう返事をすると、リビングで眠った佐奈に毛布をかけ部屋を後にした。
楽しかった夜は一転、
それぞれの想いをこげつかせこじらせた。
暗闇には慣れていたはずなのに、今までいた部屋があまりにも明るくて楽しくて
再び投げ出された夜はより一層暗さが増して見えた。
そして暗闇の中ひたひたと近づく寂しさという感情が
ただ、容赦なく牙をむくのだ。