09.ある波乱の休日
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ー…ピンポーン
『!!』
ー…ピンポーンピンポンピンポンピンポン
『へっ!?だ…誰?!』
「…………。」
突如鳴り響いた雰囲気をぶち壊すラップピンポンに佐奈が驚き慌てふためいていると、
ヒナがあからさまに嫌そうな顔で起き上がり、チェーン越しにドアを開いた。
ー…ガチャ
「…しつこい。」
「てめえヒナ電車のドア閉まる寸前に降りやがってこの!!チェーン外せ!!!」
「ヒナちゃーん、探偵をナメて貰っちゃ困るよ~♪俺らも混ぜてよ~!!」
「結局ヒナ見失って佐奈さんの履歴書の住所見て来たんだけどね。ごめんね佐奈さん…この1人者コンビ止められなかったよ…。」
『和泉さん!?それに孝之助さんと九条さんまで!!』
「帰れ。」
「誰が帰るか!!チェーン外しやがれ!!二人でカレーパーティーなんぞさせてたまるか!!!」
ドアを引っ張り合うヒナと和泉をなだめドアのチェーンを外すと、佐奈は呆れたような顔でため息をついた。
『何で今日ヒナさんにカレー作るってばれてるんですか~…探偵怖いです。』
「いや~あれはバレバレでしたよ?」
「俺にもカレー食わせろ佐奈!!!」
「佐奈~俺にも俺にも!!」
「和泉に食わすカレーは無い。」
「何だとコラ!!!!」
さっきまでのまったりした空気と一変した室内を見て呆気にとられた佐奈に、九条が申し訳なさそうに言った。
「ごめんね、折角"大好きな"ヒナと二人きりだったのに。」
『あ、いえ…逆に何かホッとしました……ってえ!?何で九条さん私がヒナさん好きって知って…!???』
驚く佐奈に、何を今さらと言わんばかりの表情で九条が答えた。
「だから佐奈さんは顔から情報がだだ漏れてるって言ってるじゃないですか。それよりお酒買って来たんでみんなで飲みましょう♪」
『やっぱり探偵って怖いです……。』
「あ、 佐奈さんもうヒナに食われましたか?」
『な…ヒナさんが食べたのはカレーだけですっ!!!!!!!変なこと爽やかに言わないで下さい!!!!』
「佐奈腹減った~!!」
『は…はーい!!』
佐奈の狭い部屋に男4人はさすがに窮屈そうでもあったが、何だか温かくて楽しい雰囲気に、佐奈もヒナも思わず頬を緩めた。
「では、無理やり押し掛けましたが…仕切り直してかんぱーいっ!!!!!!」
「「乾杯~!!!!!!」」
佐奈の作ったカレーと孝之助達の持ってきたお酒とつまみを囲み、佐奈の部屋はあっという間に宴会場へと姿を変えた。
(想像してたのとはだいぶ違っちゃったけど…これはこれで楽しいな…!!)
「何か俺女子の部屋とか数年ぶりに入ったわ~いいね、女子の部屋なんかいい香りするわ♪」
「孝之助さんスレスレな発言しないで下さいよ。」
「なんだよ~九条っちと違ってなかなかおっさんにそんな機会はないんだからいいだろ~たまには。」
そう言って笑う孝之助に、九条は缶ビールを傾けながら淡々と言った。
「僕だってあんまりないですよ、大概長続きしないから。今の彼女だってどうせもうすぐ終わりますし。」
『えっ…別れちゃうんですか…?何で…』
「………さあ、何ででしょうね…。」
佐奈の問いに九条は一瞬寂しげな表情を見せたが、またすぐいつもの笑顔に戻り佐奈をじっと見た。
「今の彼女と別れたら次は佐奈さんに付き合って貰おうかな。そうすれば長く続きそうだ。」
『「「えっ?!」」』
「あはは、冗談だよ。」
九条の言葉に焦って返事を返した三人を見て、九条は楽しそうに笑った。
こうして休みの日に集まってご飯を食べるなんて初めてで、皆が妙なハイテンションで酒を飲み進めていた。
目の前にあったビール缶や酒瓶は恐ろしいスピードで空になっていき、当然それと比例するように、場も着々と出来上がっていった。
.....................
「うお~い酒もってこぉーい!!」
『そうだ~そうだ~!!』
「全然足りてねえぞこらあああ…ぐー…。」
「…。」
「…いっつもこの状態になるよねえ…あの三人酒弱いくせに張り切るから。」
夜もとっぷり更け、泥酔状態でフラフラと暴れる三人を酒に強いヒナと九条は冷ややかな目線で見つめていた。
「九条さんて絶対潰れないですよね。」
「酒は飲んでも飲まれるなってね、潰れた人の醜態見て笑うのが好きなんだよ。」
「性悪…。」
「何か言ったかなぁヒナ?」
そう言う九条の期待に応えるように、フラフラと立ち上がった孝之助が何かにつまずき派手にすっ転んだ。
「いてて…何だこれ…ってうああああああああ!!!!!!生首っ!!!!!…」
「うおあああ気持ち悪ぃぃ!!!!!!!」
驚いた孝之助と和泉に九条が駆け寄ると、そこには美容室などでよく見かけるマネキンの頭が転がっていた。
『それは実は昔美容師になりたくってですねぇ…その時の思い出の品なんです………ヒック…』
「…にしても怖いわ、部屋にこんなもん置いとくなよー…。」
『あ、そうだ!!誰か髪切ってあげますよぉ~!!このカリスマ美容師佐奈ちゃんが★』
そう言って酩酊状態でハサミを構えた佐奈を、さすがに九条とヒナが止めに入った。
「いやいや佐奈さん危ないからハサミ置きましょう?髪ならシラフの時に切らせてあげますから!」
『ヒナさんが一番髪長いですよね~切ってあげます!!』
「九条さん、俺急用思い出しましたのでコンビニ行ってきます。」
「あっ!!ヒナこら逃げるな!!」
身の(髪の)危険を感じたヒナが部屋を出るのに九条が気をとられている隙に、佐奈は孝之助の髪に鋏を入れようとしていた。
『孝之助さんも髪長いですよね~切ってあげます!!』
「おう、いいね~切って切って♪」
「あっ!!!佐奈さんちょ待っ………!!!!」
ー…ジャキンジャキンジャキン!!
『はぁい出来ましたよ~!!アハハ!!!』
「お!!かっこいいね~!!いいじゃんハハハハ!!」
「………。」
孝之助のガタガタに切られた髪型を見て二人は笑い合うと、そのまま寝潰れた。
佐奈を叱りながら美容室に駆け込む孝之助と、泣いて謝る佐奈の姿。
容易に明日の情景が想像できたが、九条は心底見て見ぬふりを決め込もうと誓った。
(もう知らん…と言いたいとこですがそうもいきませんよね。)
ハアとめんどくさそうにため息をついた九条はタクシーを呼び、とりあえず孝之助と和泉を帰すことにした。