09.ある波乱の休日
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翌日、佐奈は朝から部屋を隅々まで掃除をし、念入りにおめかしをしていた。
『メイクよーし、服よーし、部屋の掃除よーし、カレーよしっっっ!!!!!』
意気込んで部屋のど真ん中で気合を入れた佐奈は、約束の時間が近づくにつれ落ち着かないように部屋中をウロウロ歩き続けた。
(一応…本当に一応だけど、下着だって可愛い勝負下着だもん!!どこからでもかかってこーいっっっ!!!!!!!!!)
ー…チッチッチッ
ー…チッチッチッ
ー…チッチッチッ
『…。』
刻一刻と進む時計。
時計の針とにらめっこしていた佐奈は、なかなか到着しないヒナに不安を覚え始めていた。
『あれ…来ないなあ…道迷ってたりして…?』
ー…ピンポーン…
『~~~~!!!!!!!!!!は…はーいっ!!』
(来たーーーーーーーーーっ!!!!!)
平静を必死に装い返事を返すと、佐奈は深呼吸をして最高の笑顔でドアを開けた。
『ヒナさ…』
「宅配便でーす。」
『…え、ああ、はい…。』
完全に拍子抜けをくらった佐奈が肩を落として荷物を受け取りドアを閉めようとすると、後ろから聞きなれた低い声が聞こえた。
「ごめん、遅くなった。」
『ヒ…ヒナさん!!!!!』
予期せぬタイミングで現れた待ち焦がれた姿に、佐奈はパアッと明るい笑顔を見せた。
『ヒ…ヒナさん…!!良かった!!道すぐ分かりました?』
「…道は分かってたんだけど、思ったより手こずった。」
『…へ?手こずった?何に……?』
ヒナの言葉の意味がよく分からず佐奈は首をかしげながらヒナを部屋に通した。
ヒナはお邪魔しますと少し頭を下げると、初めて入った佐奈の部屋を物珍しそうに見渡した。
『あ、お茶とか…注ぎますので、適当に座ってて下さいね!!』
「…うん。」
190㎝近い長身のヒナが女子の部屋に入るとそれは想像以上の違和感で、佐奈はその光景に思わず頬を緩めた。
いつも事務所でしか見ないヒナが今自分の部屋にいる。その事実がどうしようもなく嬉しかった。
『ご…ご飯…まだ夕方ですけど…お腹すきました?食べます?』
「うん。」
『じゃあ…準備しますね!!!』
ヒナは元々無口なので話題を振るのはだいたい佐奈ばかり。
だが今日ばかりは緊張でその余裕もあまりなく、佐奈は台所と居間を準備と称してせわしなく動き続けていた。
ー…コトッ
『はいっ!!どうぞ!!お口に合うといいんですが…。』
「…いただきます。」
ヒナがカレーを食べるのを祈るような思いで見つめていた佐奈をよそに、ヒナはカレーを黙々と食べ続けた。
『ヒナさん…あの、美味しいですか?』
「…モグモグ。」(頷き)
恐る恐る尋ねた佐奈に、ヒナはすごい勢いで食べ進めながら頷いた。
その様子を見た佐奈は不安そうな顔から一転、とても嬉しそうな笑顔を見せ胸を撫で下ろした。
『よ…かったぁ!!!!あ、あの…沢山あるんでいっぱい食べてくださいね!!』
「うん、おかわり。」
『…はいっ!!』
その後ヒナはカレーをあっさりと4杯平らげ、ご馳走様と佐奈に頭を下げた。
そして佐奈も無事にカレーを振る舞い終え、少し安心したように腰を下ろした。
『少しは回復しましたか?』
「うん、…ありがとう。」
『…!!』
初めて事務所に入った時、何を言っても無視、返ってくる返事もたかが知れていた頃からすると、まさかヒナからこんな言葉が聞けるとは思ってもみなかった。
それだけでも十分すぎると幸せを噛み締める佐奈に、ヒナは更に言葉を続けた。
「礼は…どうすればいい?こういうことに慣れてないから、言って貰えた方が助かる。」
『えっ!???い、いや…お礼なんていいんですよ!!私がしたくてやっただけですし!!』
「いいから、何がいい。」
『な…何って…』
佐奈をじっと見て尋ねるヒナに佐奈は顔を赤くした。
素直にただ聞いているだけなのか、からかっているのかさっぱり分からないヒナに佐奈の頭はパニックになり、
思わず頭にあった素直な言葉を口にしてしまった。
『キス…して欲しいです…。』
「……。」
『あはは!!な…なーんちゃっ…!!!!!』
『んっ…………!!!』
ヒナは佐奈の言葉を遮るように唇を塞ぐと、舌を絡ませ何度も口づけた。
激しいキスで息も切れ切れになった佐奈は、目を潤ませ頬を紅潮させながらヒナを見た。
『…………ヒナさん…。』
「…また作って。」
『…はい…!!』
佐奈の言葉に嬉しそうに微笑んだヒナは、佐奈の髪を撫でながらもう一度優しくキスをした。
いまだ夢なのか現実なのかぼうっとしている佐奈は、大きくて安心するヒナの胸に顔を埋め、なされるがままベッドに倒れ込んだ。