09.ある波乱の休日
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ー…ピーチチチ……
『ヒナさんってどうして皆と一緒にお昼食べないんですか?』
ある日の昼下がり、
たまたま同じ時間にお昼を食べていた和泉と九条に佐奈は尋ねた。
「お前が来るまでは男四人だぞ、四人揃ってメシ食ってたらキモイだろ!!女子高生かよ。」
「まあヒナは基本自分の部屋から出てこなかったからねえ…佐奈さんが来てから結構出てくるようになった方だよ。」
『そうなんですか…こっちにはそういえばヒナさんのデスクも無いですもんね…。』
「昔はヒナのデスクもこっちにあったんだけど、ヒナがあっちに持ってっちゃってね。」
『……。』
事務所スペースに現在あるデスクは四人分だけ。
ヒナは仕事中や休憩中も基本的には今も皆と馴れ合おうとはしない、佐奈はそれがどうしても気にかかっていた。
「あいつはほら、昼飯ガソリンなんだよ!!だから来ないの、もうほっとけよ。」
『そんな訳ないです!!!!いや、ご飯はみんなで食べた方が美味しいに決まってます!!呼んできます!!』
「ちょ…おい!!佐奈!!!!」
佐奈はそう言うと持っていたお弁当を置き、颯爽とヒナの部屋へと向かって行った。
「ったく……。」
「…。」
「…なんだよ。」
「別にい。」
佐奈の後姿を見つめる和泉の様子を、九条はニヤニヤしながら見ていた。
そんな九条の様子に気付き、和泉はバツが悪そうに腰を下ろしてふてくされた。
ー…コンコン
『ヒナさーん…?』
佐奈が部屋のドアを開けるとそこは相変わらず昼間とも思えないほど薄暗く
ぼうっと光ったパソコンモニタの前のソファベッドに、横になっていたヒナの姿を見つけた。
(…寝てる…?)
眼鏡を外した無防備な寝顔に佐奈がそうっと近づくと、そこにはヒナが食べたのであろう昼食の残りが置かれていた。
(良かった、お昼ガソリンじゃなかった…でも水と栄養補助食品っぽいものだけ…最近仕事忙しそうだったけどこれは…。)
疲れ果てたように目を閉じたヒナの寝顔を佐奈はまじまじと見つめた。
目鼻立ちが整った綺麗な顔、でもどことなく子供のようなあどけない寝顔にキュンときた佐奈は、思わずヒナの髪を撫でた。
(かわいいなあ…あんな大きいのに寝てるとちっちゃく感じる…)
「…何?」
『…へ?う…わあああああああすみませんっ!!!!』
突如目を覚ましたヒナに佐奈が驚き慌てて離れると、ヒナは目を擦りながら体を起こした。
「何か仕事…?」
『あ、いえ…ヒナさんお昼一緒に食べないかなあと思いまして…。』
佐奈の言葉にヒナは少し驚いたような表情で佐奈に尋ねた。
「…何で?」
『え…っと…ご飯はみんなで食べたら美味しいかなと思いまして…お昼…食べました?』
「…食べた…と思う…眠くて最近何食べたか覚えてない。」
ヒナはここ数日徹夜で多数のネット関連の依頼を片づけており、昨日はその反動でほぼ一日中眠り続けていた。
そんな状態でご飯もまともに食べていないことを心配した佐奈は、思い切ってある提案をした。
『ヒナさん…良かったら私、ご飯作りましょうか…?』
「…?」
『いや、あの…コンビニ弁当にパンとかばっかりじゃ元気も出ないかなぁって…ここ調理器具無いから私の家で…ってことにはなりますが…。』
「………。」
『………。』
『なーんちゃって☆すみません出過ぎたことを言いましたすみません忘れて下さいでは失礼致しました!!!!!』
沈黙に耐えられなくなった佐奈が顔を真っ赤にしてヒナの部屋から出ようとすると、ヒナがぼそりと返事をした。
「いつ?」
『・・・・・・・へ?…い…いつでも大丈夫です!!!!』
「じゃあ明日。」
『……も…もちろん大丈夫です!!!!!』
明日は週に一度の事務所の定休日。
ヒナと休日の約束をとりつけられた佐奈はその場で飛び上がって喜びたいのを必死でこらえながら、早く脈打つ胸を押さえた。
『えっと…じゃあ…なにか食べたいものありませんか…?カレーとか…ハンバーグとか…。』
「…カレー。」
『は…はいっ!!了解しました!!!腕によりをかけて作らせて頂きます!!!!では…私は仕事に戻りますねっ!!』
佐奈がとても嬉しそうにそう言うと、ヒナも少し笑って頷いた。
ヒナの部屋を出た佐奈はにやける自分の顔を手で押さえながらデスクへと弾んだ足取りで戻って行った。
ー…パタパタ
(やばいやばいやばいどうしよう!!!!ヒナさんが明日うちに来る!!!私何かすごい事言っちゃった気がするけどもういいや!!!一回目のデートで家…いや、これ別にデートじゃないから!!!ご飯作るんだもん家しかないもの!!でも密室で…そのまま…なんて事になったら………×●△◎!!!!いーや、私ももういい大人なんだから何を言ってるのって話よ!!ヒナさんと…………ぎゃああああああ!!!!私の妄想ストップ!!!!!!というかヒナさんが私の事好きなわけじゃないし、でも家に来るってのは脈ありじゃ…いや関係ないかもヒナさん俗世から離れてそうだしって今はそれより美味しいカレーを作る事に専念しなくちゃ…!!!!)
「…佐奈さん、妄想がだだ漏れてますよ。仕事中にカレーのレシピ検索しないでくださいね~。」
『九条さん…カレーに乗ってて嬉しいのはやっぱり温玉でしょうか…?』
「そうですねぇ…温玉乗ってたら嬉しいですね…って話聞いてます?」
『はい!!やっぱりそうですよね、カツだと何か頑張りすぎな気もしますし温玉がベストですよね!!ありがとうございます!!!!!!』
「…おーい、佐奈さーん。」
完全に浮足立った佐奈とふてくされた和泉を見ながら、全てを悟った九条はハアと一人溜め息をついたのだった。
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