08.仲間
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あれから数日後、普段の日常を取り戻していた佐奈は、コンビニで一人昼食の買い物をしていた。
『お昼…メロンパンとおにぎりでいっか…。』
メロンパンとおにぎりを握りしめ佐奈がレジに向かおうとすると、背後から聞き覚えのある声が響いた。
「そんなのばっか食べてるから色気のない貧相な体になんのよ~?」
『こっ…琴子さん!?』
「あんたねぇ…野菜に肉も食べなさいよ、炭水化物ばっか食べて……メガネ君がお色気美女に持ってかれるわよ。」
『うう…久しぶりの登場なのにこの勢いと存在感なんなんですか…。』
琴子に圧倒された佐奈はすごすごとメロンパンとサラダを交換し、レジへと向かった。
「あ、そうだ。さっき和泉ちゃん見かけたんだけどさぁ…。」
『はあ。』
「何か…目が緑だった気がするんだけど私の気のせい?」
『……ああ、それはですね…。』
......................................
ー…バンッ……
「えええっ?い…和泉ちゃんが実は冴嶋組跡取りで碧眼のハーフぅぅ!?!」
『まあでも冴嶋組継ぐ気はないみたいですし…目は最近あんまりカラコンつけなくなったので、割と碧眼和泉さん見れると思いますよ。』
事のいきさつをざっくり聞いた琴子は、驚きながらも顔を赤らめた。
「なにそれかっこいいじゃない…!!」
『はあ…そうですねぇ…。』
気のない返事をしながら事務所へ戻る佐奈に、くっついて来た琴子は少しいじけたように呟いた。
「でもそれって佐奈が綺麗だって言ったから…和泉ちゃんコンタクトつけなくなったんじゃないの?」
『へ?それは関係ないでしょー…だって…あれ?』
佐奈が事務所への階段を上ると、ドアの前に立っていたのは見覚えのある人影だった。
『……高虎さん!?』
「あ…えーっと佐奈さん、ですよね?ご無沙汰しております。」
ドアの前に立っていた高虎は、佐奈の姿を見ると、ニコッと笑って頭を下げた。
「…誰よこのイケメン。」
『和泉さんの冴嶋組でのお兄さんのような方です。』
「えっ!?和泉ちゃんの?ってかこの人ヤクザなの?!!見えないわよ。」
コソコソと話す二人を不思議そうに見ながら、高虎は持っていたお菓子の袋を佐奈に差し出した。
「先日のお詫びにお菓子を持ってきたんですが、皆さんいらっしゃらないようだったのでまた出直しますね。」
『あ、もうすぐ皆さん帰ってきますのでもし良かったらお茶でも飲んでいかれませんか?』
「そうしましょ、私の分もお願いね~佐奈♪」
「あ、あなたも事務所の方ですか?若がいつもお世話になっております!!」
「はい!!琴子と申しますお兄様♪」
『高虎さん、違いますから。』
佐奈と琴子に半ば強引に事務所に連れ込まれた高虎は、言われるがままソファに腰を下ろし、事務所を見渡した。
「ここが若の働いている事務所なんですね…あ、もしかしてこれは若のですか?」
『そうです!!よく分かりましたね。』
「昔から若はゲーム大好きでしたから…懐かしいなぁ…。」
置いてあったPSPを手に取り、高虎は懐かしそうにそれを眺めた。
『あ…あれからどうですか?渋沢さんは…まだ和泉さんの事を…?』
「あれから渋沢達は破門という事となっていたのですが、それではまた恨みが事務所の皆さんや若に向いてしまうかもしれないので、私の監視下に置くことになりました。」
『そうなんですか…でもそれじゃあ高虎さんが危なくないんですか?』
心配そうに尋ねる佐奈に高虎は笑い、佐奈をまっすぐ見ながら言った。
「私の事は大丈夫ですよ。この命に代えても、皆さんの事は必ずお守りしますから。」
『…!!』
(か…かっこいい…!!!!一生生きていてほとんど言われることは無い憧れのセリフ…!!!)
(私も全く関係ないのにときめいちゃったわよ…!!童顔ヤクザってギャップだけでも何か萌えるのに…!!)
(あれ?ヤクザさんって怖い人ですよね?正義の味方に見えてきました…。)
(しっかりすんのよ佐奈っっ!!)
向かいに腰を下ろしていた二人がコソコソと高虎の男らしい言葉に胸をときめかせ見つめていると、玄関のドアが勢いよく開いた。
「ただいま~…お、高虎君来てたの!!それに琴子ちゃんまで、なにこの組み合わせ?」
『あ…お…おかえりなさい。』
「お邪魔してます~…。」
事務所に帰ってきた孝之助達三人に赤い顔で挨拶をした佐奈と琴子に、和泉が怪訝そうな顔で尋ねた。
「…なんでそんな顔赤いんだよ。高虎てめえなんかやっただろ!?」
「何にもやってませんよ!!そんな恐れ多い……!!」
『あ、いえ…高虎さんが素敵だったので思わず照れちゃっただけです…すみません。』
照れて赤くなった顔で笑う佐奈を見てムッとした和泉は、高虎の隣にドカッと腰を下ろした。
「あのなあ!!こいつこんな可愛い顔してどぎつい八岐大蛇の刺青いれてるからな!!こいつに惚れてもプールも温泉も行けないからなーっ!!!!」
「…和泉ムキになりすぎ。」
『そうですよ!!高虎さんに失礼ですよっ!!』
そう言って皆が談笑している中、高虎は1人席を立ち、外でたばこを吸っていた孝之助の元へ向かった。
「おう、高虎君どした。」
「本日は先日のお詫びに参りました。本来組長直々に来る予定だったのですが、冴嶋組と繋がっていると周囲に知られればまたご迷惑かと思い、私が代わりに参った次第です。」
「んな堅苦しくしなくていいよ、心配しなくても警察ごとにする気もねえよ。三隅親子もそう言ってた。」
高虎の真に言いたかったことを見透かしたような孝之助の言葉に、高虎は感服し深く頭を下げた。
「…借金取立は渋沢が独自でやっていた事ですが、ルートはこちらで潰しておきます。このご恩は忘れません…本当にありがとうございました。では…」
「もう帰るのか?ケーキ買ってきたから食ってけば?」
孝之助の誘いに高虎は少し寂しそうに微笑むと、ドアの向こうで楽しそうに話す和泉達を見た。
「いえ、私はここで馴れ合ってはいけない人間ですから…では、失礼致します。」
高虎はそう言うと、孝之助に再度頭を下げ、事務所を後にした。
そんな高虎の後ろ姿を見ながら、孝之助は困ったように笑い煙草の火を消したのだった…。
【08.】仲間 -END-
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