08.仲間
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ー…グググ………
(ハァ…ハァ……あいつら…許さねぇ…!!誰か一人だけでも…道連れにしてやる………!!)
ー…チャキ
「……死ね!!!」
『ー…え?』
ー…ドンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
突如後方から響いた銃声に、その場にいた全員が驚き振り返った。
だが振り返った先にあったのは、血の出た手を押さえてもがく渋沢と、予想だにしなかった人物の姿だった。
ー…カラン…
「渋沢さん、これ以上冴嶋組の名を落とすような真似をするなら容赦はしません。」
「くっ………てめぇ……高虎…!!!!!!!!」
「虎…!?」
「若…ご無沙汰しております…!!!!」
冷酷な目と圧倒的な雰囲気で渋沢から銃を奪った高虎だったが、和泉を見つけるといつもの優しげな笑顔を見せた。
「本当だよ…なんでお前がこんなとこに…!?」
「俺が連絡したんだよ。にしても来るの遅かったじゃねーか。」
「連絡頂いた時にちょうど他県にいまして…これでも全速力で駆けつけたんで見逃して下さい~!!」
「だから何で虎とおっさんが知り合いなんだよ!?」
よく状況が掴めていない和泉の隣で、孝之助が呆れたように答えた。
「なんでってお前…お前の弁護士費用誰が俺に払ったと思ってんの。」
「…え?まさか虎が払ってたっていうのか!?ちょ…それは…!!!」
思わぬ事実を知り詰め寄った和泉に、高虎は笑いながら首を横に振った。
「俺じゃありませんよ、若……組長です。」
「…は?」
「あ、ちょうど噂をすれば…。」
そう言って高虎が振り返ると、そこには和泉の嫌な意味で見慣れた黒塗りの車が停車し、
中からこれまた嫌な意味で見慣れた顔が現れ、和泉はあからさまに嫌そうな顔をした。
「クソジジイ…。」
『あの人が…和泉さんの…。』
ー…バンッ
「ひっ…組長…!!!!」
「南在さん、こん度はうちのもんがとんだご無礼を致しました…」
「あ、いえいえ…こうしてみんな無事なわけですし…。」
深く頭を下げて詫びる組長に孝之助が恐縮そうに笑って答えると、組長は軽く会釈しうずくまった渋沢に目を向けた。
「渋沢、話は戻ってからよう聞かせてもらう。帰るぞ。」
「……はい…。」
組長の鶴の一声で流石の渋沢も観念したようにヨロヨロと車に乗り込み、他の組員もそれに続くようにぞろぞろと姿を消した。
そして最後に残った高虎は五人に再度深く頭を下げ、車に乗り込んでいった。
「虎…。」
「さて…と、三隅隆弘さん!!もう大丈夫ですよ~!!」
「…!!」
笑顔で手招きする孝之助に、物陰に隠れ息を潜めていた三隅親子は恐る恐る顔を出した。
「あ…あの…。」
「あんたには俺の後輩の腕のいい弁護士紹介してやるよ、もう取り立ても来ねえと思うから…取られすぎた利息分返してもらいな。」
「…!!!あ…ありがとうございます…!!!」
「いいって事よ!!もうヤミ金になんて手ぇ出すんじゃないよ、お父さん。」
「はい…!!」
そう言って孝之助が三隅の肩に手を置き笑うと、三隅は何度も何度も五人に頭を下げたのであった…。
.............................................................
『それにしても…孝之助さんって弁護士だったんですね…。』
初めて知った事実がまだ信じられない佐奈は、車に戻る道中九条に尋ねた。
「そうだよ、あれでも結構有名で腕の立つ弁護士だったんだから。」
『そうだったんですか…!!全然知らなかったです…。』
「俺達三人に弁護士としてついてくれたのが孝之助さんでね、あのヤクザが言った通りホント手に負えない猛獣相手に根気よく話聞いてくれて…」
毎日毎日やって来て
あの手この手で歩み寄ろうとしてくれて
「いつも真剣に俺達の事を考えてくれてたよ…。」
『孝之助さんが…。』
佐奈が驚いたように頷くと、九条は昔を懐かしむように笑って言った。
「俺達三人みんな…孝之助さんに居場所を貰って、救われたんだよ。」
『…!!』
きっと和泉だけではない、九条にもヒナにも、佐奈の知らない暗い過去があるのだろう。
だが今の九条の穏やかな笑顔を見ていると、佐奈は孝之助のすごさを感じずにはいられなかった。
『私も…孝之助さんに救われました…!!!』
「じゃあ‥四人みんな、に訂正だね。」
九条はそう言うと、佐奈と顔を見合わせて笑った。
「おーい!!早く乗れ~行くぞ!!」
『……孝之助さんっっ!!私…一生孝之助さんに付いて行きますっ!!!』
「え?何それ?プロポーズ?」
かくして、冴嶋組の絡んだ失踪者捜索依頼は
なんとか危機を乗り越え無事、幕を閉じることとなったのであった…。