08.仲間
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「なっ…!?」
「………。」
乾いた銃声とともに走った衝撃は和泉の頭を貫通することなく、銃弾は天井へとめり込んでいた。
何が起こったかよく分からない和泉が後ろを振り返ると、そこには和泉の銃を持った孝之助が立っていた。
「お…おっさん……?」
「待たせたな。」
孝之助はそう言って笑うと、持っていた銃を遠くに投げ捨てた。
その様子を見ていた渋沢達は、皆一斉に孝之助と和泉に銃口を向けた。
「これはこれは…手に負えない猛獣を引き取っちゃ面倒みてる変人弁護士さん。いや、今は探偵事務所所長…だったかな。」
『…弁…護士…?』
孝之助の初めて知った事実に佐奈が驚いていると、渋沢は孝之助を睨みつけながら続けた。
「こちとらあんたが若を弁護してくれたおかげで多大な実刑くらっててな…その節のお礼はお前にもさせてもらいたいと思ってたんだよ…。」
「いやあ…お礼なんて気を使ってくれなくても良かったんですけどね…。」
孝之助がそう言ってニッと笑うと、渋沢もまた不敵な笑みを浮かべた。
「でもまあ…よくこんな逸材集めて手懐けたもんだよ。闇金潰しの天才詐欺師に、人間兵器とまで言われたハッカー。
で、裏社会を牛耳る冴嶋組の後継者…国でも落とせそうじゃないかい。」
渋沢の言葉にそれまで笑っていた孝之助の表情は豹変し、渋沢を睨みつけた。
「こいつらにどんな過去があっても今はただのうちの従業員で俺の息子や娘みたいなもんだ…そんな事に誰が使うか…!!」
「…おっさん……。」
『孝之助さん……。』
孝之助の鬼気迫る表情と言葉に、佐奈達だけでなく組員達も気を取られていると、
佐奈の腕に突如何かが触れた。
『…………え…?』
ー…ザクッ
(九条さん…!?)
組員の気が孝之助に向いている隙に背後に現れた九条は、静かに二人を縛っていた紐を切り落とした。
その様子を気付かれないように確認した孝之助と和泉は、三人が組員の傍から離れるのを固唾を飲んで見守った。
「ふん…刑期を終えれば善良な一般市民だって…?お前らは俺達同様一生社会不適合者のクズなんだよ!!他人に迷惑かける才能しかねえくせに白々しい顔してんじゃねぇぞクズどもが!!!!!!」
「……。」
「………お前な…。」
渋沢の言葉に背後に潜んでいた九条とヒナ、そして和泉は全く表情を変えなかった。
だが、佐奈から見える3人のその横顔や背中が言葉無くともどこか寂しそうで苦しそうで、
締め付けられるような思いと沸き上がる怒りが頂点に達した佐奈は、思わず声をあげてしまっていた。
『…皆さんはクズなんかじゃない!!!!!!!…優しくて頼りになって、人助けを仕事にしている私の大切な仲間です!!!!!!!』
「…はあ?」
『…あっ。』
((…バカ…。))
思わずこらえきれずに反論した佐奈に、孝之助をはじめ全員がハアと溜め息をつきながらも困ったように笑った。
「殺されてぇのかこの女……って紐が……!!!!!?????」
「佐奈さんしゃがんで!!!!!」
『へっ!??』
ー…バキイイッツッ ドスッ!!!!
『く…九条さん…ヒナさん…。』
言われた通りしゃがみ込んだ佐奈が恐る恐る顔を上げると、
パイプ椅子で組員二人を気絶させたヒナと九条が立っていた。
「…ヒナ、そんな目一杯殴ったら死んじゃうよ、椅子へこみすぎ。」
「はあ…なかなか力加減が…分かんないです。」
「貴…様らあああああ…くたばれええええ!!!!!!」
「くたばるのはてめえだああああああああ!!!!!!」
ー…バキイッツ!!!!!!!!!!
銃を放とうとした渋沢を和泉が殴り飛ばすと、渋沢はその場に倒れ込んだ。
そうしてその場にいた組員全員を制圧した探偵事務所チームは、互いに顔を見合わせて笑った。
「てかバカ佐奈!!人質が逃げる時に声あげる奴があるか!!」
『だって頭にきたんですもん仕方ないでしょ!!!!!』
「何とかいい感じにいったからよかったもののなーーーー!!!」
和泉と言い合い孝之助になだめられた佐奈は、いじけたように言った。
『でも…すみませんでした…足手まといばっかりなのにあんな事して…。』
涙目で申し訳なさそうにシュンとする佐奈に、和泉はハアと溜め息をつき恥ずかしそうに言った。
「いや…でもまあ…嬉しかったし……ありがとな。」
『和泉さん…。』
「和泉顔真っ赤だよ。」
「髪が白いから目立つ。」
「ほっとけ!!!!!!!」
必死に照れを隠す和泉に、孝之助がニヤニヤしながら近寄った。
「なあなあ俺には感謝の言葉ねえの?佐奈ちゃんだけ~?俺も感動的な事言ってたじゃん~!!」
「自分でそういう事言うからダメなんだろ、おっさんは。」
『私は感動しましたよ!!!!私もこれから孝之助さんの事は東京のお父さんと思わせて頂きます!!』
「え~佐奈なら娘より恋人の方がいいなぁ~。」
「オーバー40が何言ってるんですか…。」
『にしても孝之助さん達よくここが分かりましたね…私電話できなかったのに…。』
「ああ、ヒナがメールくれたんだよ。」
『ヒナさんが…?一体いつの間に…!?』
佐奈が首をかしげると孝之助はくしゃくしゃと佐奈の頭を撫でた。
「まあまあ無事だったんだしいいじゃねえか娘よ!!」
『…あはは!!そうですね…。』
五人は緊張の糸が切れたように談笑し、
さっきまで泣きながらうずくまっていた佐奈も、佐奈に拒絶されたと落ち込んでいた和泉もいつもの笑顔に戻っていた。
そうして五人は建物の奥で怯え隠れていた調査対象の親子に、声をかけたのだった。