08.仲間
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ー…ザク…ザク…
「……ハァ…。」
佐奈を残し車から飛び出した和泉は、陽が落ちたばかりの川沿いを一人歩いていた。
夜風にあたり少し落ち着いた和泉は、自分の行動を思い起こしため息をついた。
(勝手にベラベラ喋って撃沈してキレるって……俺カッコ悪すぎだろ…どんな顔して戻れっつー………ん?)
「…ー!!!!!」
和泉が頭をガシガシと掻きながら目線を向けた先には、聞き込みを約束していた女性が立っていた。
女性は辺りを警戒するようにキョロキョロと見回すと、建物の陰から男性と小学生くらいの子供を手引きした。
(……え……あれって………)
和泉が驚き目を凝らした先にいたのは、和泉達が探していた失踪した男性本人だったのだ。
(まじかよ…探す手間が省けたな。にしてもあの女のあの様子……何だ…?)
女の様子は明らかに挙動不審で、男性を路地裏の細道に逃がすと、何食わぬ顔で来た道を戻って行った。
それを見て不審に思った和泉は、単独男性に近づき声をかけた。
「…あの、三隅さんですよね?」
「……!!」
和泉の顔を見た男性は顔を真っ青にしてその場から逃げ出そうとしたが、和泉に腕を捕まれ観念したようにその場にへたりこんだ。
「あと一ヶ月でいい…待ってください…!!この子には私しかいないんです!!お金は必ずお返ししますから命だけは!!!」
「おい、何言ってんだ…?」
「さ…冴嶋組の方なんじゃ…ないんですか…?借金取立の…」
「!!」
男の口から出た言葉に和泉は顔をしかめた。
そして状況を飲み込めずにいる男に和泉が名刺を渡そうと懐に手を入れた、その時だった。
「助かりましたよ、若。」
「なっ…!!!!」
ー…ガッッ!!!!!!!!!!!
............................
一方、和泉を見つけられずにいた佐奈が道路脇のベンチで一人膝を抱え俯いていると、突如目の前に見覚えのある人影が現れた。
「…どうした?」
『…ヒナさん…!!』
突如現れたヒナの問いに佐奈が口をつぐむと、ヒナは佐奈の隣に腰を下ろした。
「言いたくないなら別に言わなくていい。」
『…ヒナさん。』
そう言ってただ黙って佐奈の隣にいるヒナの優しさに、佐奈の目からは大粒の涙が溢れてきていた。
『私…和泉さんを傷付けてしまいました…和泉さんの過去の話を聞いて、思わず何も言えなくて………』
「うん。」
『何を言ったらいいのか分からなくて…それで……』
「軽蔑した?」
『そ…そんなことは断じてないです!!一瞬怖くなったのは事実ですけど…そんなことで…!!』
ヒナの言葉にくってかかるように答えた佐奈に、ヒナはほんの少し笑みを浮かべて言った。
「だったらそれを伝えてやればいい。」
『…!!』
「和泉もそんなことで軽蔑したりしない。寧ろうわべだけの言葉を言われた方が、きっと辛い。」
『……………はい…!!』
ヒナの言葉に佐奈は涙を拭いながら何度も頷いた。
だが、安心して気が緩んだのか佐奈の涙はなかなか止まらず、しゃっくりあげながら佐奈は必死に目を擦った。
『ひっく…お…かしいな…すみません…!!すぐ…』
「別に…急いでないから。」
素っ気なくも優しいヒナの言葉。
その言葉に益々涙が止まらなくなりそうな佐奈だったが、突如響いた携帯の着信音に、佐奈は慌ててポケットを探った。
『メール…和泉さんだ……え…?ヒナさんこれって…!?』
「何。」
佐奈がヒナに手渡した携帯の画面には、たった一言"予想通り、逃げろ"とだけ書かれていた。
その言葉にピンときた佐奈は、焦ってその事をヒナに告げた。
『和泉さん…依頼人が堅気じゃないって言ってたんです!!冴嶋組じゃないかって…まさかそれで…?』
「対象を追っていたのが冴嶋組で鉢合わせたんなら対象もすぐ近くにいるって事だ。一人でカタをつけたいって事だろうけど…」
『そんな事したらまた和泉さんが…!!!それに逃げろってどういう…!?』
「とりあえず孝之助さんに連絡して、俺は和泉の居場所携帯のGPSで追う。」
『はいっ!!!!』
佐奈はそう返事をすると、孝之助へと電話を繋げる為携帯に手をかざした。
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