07.碧眼のサムライ
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「…てな感じ。」
『てな感じ…ですか…。』
和泉の口から出た想像をはるかに超えた話はすべて佐奈の想像も出来ない世界で、
どんな言葉をかけていいか分からなくなった佐奈は思わず口をつぐんだ。
「そんでその後日本に帰ったら冴嶋組の奴らに殺されそうになるわ、その乱闘のせいで捕まるわでもうふんだりけったりで…笑えるよな。」
『そんな…。』
和泉はそう言って笑っていたが、その笑顔が無理に作られた笑顔だという事は佐奈にもすぐに分かった。
『あの…すみません…何かいろいろ…軽々しく聞いて……。』
「何だよ、ただの昔話だろ?俺が勝手に話しただけだしそんな…そんな顔すんなよ…笑えよ!!」
『でも…いえ…はい…。』
そう言って気まずそうに黙りこくった佐奈を見て、和泉はバツが悪そうに呟いた。
「…なんだよ、俺の事が恐ろしくでもなったのかよ…。」
『…え!?そ…そんなつもりじゃないです!!ただ私は…』
佐奈は慌てて必死に弁解しようとしたが、それが逆に和泉をイラつかせた。
「お前なら…とか思った俺がバカだった。」
『え………ー』
ー…ガッ!!!!!
『…痛っ!!!!』
「そうだよな、そりゃ怖ぇよなあ…山程人殺してんだからさ。」
ー…ギチギチギチ…
『い…和泉さ…』
佐奈の両腕を掴み車のシートに押し付けた和泉は、冷たく、どこか辛そうな目で佐奈を見た。
「頼むよ、そんな目で…見ないでくれよ…。」
『…!!!!』
和泉はそう一言だけ言うと、車から飛び出して行ってしまった。
1人車内に残された佐奈は、その和泉の後姿をただ、黙って見送る事しかできなかった。
『和泉さん…。』
怖いと思わなかったと言えば嘘になる。
でも、それ以上に、何を言っても傷付けてしまうと思ったから。
たいした苦労もなく平和に呑気に生きてきた私なんかの言葉が、和泉さんに届くと思えなかったから。
でも、その態度が逆に和泉さんを傷付けてしまったんだ…。
『……ごめん…なさい…!!』
ポロポロと涙を流す佐奈の目には、和泉の残していったまだ封を開けていないプリンとアイスが映った。
さっきまでそれを楽しみに笑っていた和泉。
私があんな顔にさせてしまった。
口は悪いけど、明るくて素直で優しくて
『怖くなんかないってそんな事…分かってたっていうのに…!!』
佐奈はぎゅっと唇を噛み締め涙をぐっとぬぐうと、
アイスとプリンを握りしめ、もう日の落ちた街に飛び出したのだった…。
【07.】碧眼のサムライ -END-
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