01.難有り探偵社
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ー…ガチャ…
『あれ…?和泉さんと九条さんは…?』
佐奈がデスクのある部屋に戻ると、和泉と九条の姿は無くなっていた。
すっかりヒナの対応に面食らっていた佐奈は、少しビクビクしながら周囲を見渡した。
「別の仕事が入ったんで行って貰ったよ。」
『そうなんですね…。』
そう言って佐奈がホッとしたような表情で答えると、孝之助はそれを見透かしたように少し笑って言った。
「佐奈ちゃん、無理そうなら言っていいよ。」
『え…?』
「あいつらが怖い?」
自分の考えを読まれたかのような孝之助の質問に佐奈はとっさに首を横に振った。
だがそれに続く言葉は見当たらず、すぐに顔に出てしまう性格ゆえか素直に俯いてしまった。
「隠してもしょうがないから言うけど、和泉は冴嶋組の跡取りで九条は元詐欺師。ヒナも前科持ちのハッカーで、全員警察にご厄介になってた奴等だ。」
『ハッ…カー…?』
「過去の過ちのせいで散々つまはじきにされててな、更生しようにも出来ないでいたとこを俺が連れて来たんだ。」
『…。』
「あいつらには才能がある。俺は…あいつらにその才能をもう犯罪なんかに使わないように生きて欲しいんだ。」
『南在さん…。』
そう言って笑う孝之助の顔は、まるで子供を思う親のような優しい顔だった。
そんな孝之助を見ていた佐奈は、ギュッと胸が締め付けられるような気持ちに襲われた。
「…でもこれは俺の思いであって、佐奈ちゃんが無理してここで働くことはないよ。好きなように…」
『…働きます。』
「え…?」
佐奈は手をギュッと握りしめると、先程までとは全く違うまっすぐな目で孝之助を見た。
『私もここに拾われた身です。どうぞ…一緒に働かせて下さい…!!』
「佐奈ちゃん…。」
ー…パーンパパパパーン!!!!!!
『…ぎゃあああああ!!!!!!!!何!?何!???』
突然部屋中に鳴り響いた破裂音に、佐奈は思わず耳を塞ぎしゃがみ込んだ。
「なーんてな☆」
『え…?え??』
佐奈が恐る恐る顔を出すと、目の前にはクラッカーを持った孝之助と和泉、そして九条と部屋から引きずり出されたであろうヒナの姿があった。
「いや~良かった良かった、本当辞められたらどうしようかと思ったよ~。」
「銃まで見せることなかったでしょ、あんなの誰だってドン引きですよ。」
「でもあれがうちの日常茶飯事なんだもん。」
『み…皆さんお仕事に行ったんじゃ…何で…?』
状況がよく呑み込めない佐奈の前に、美味しそうなケーキを並べながら九条が笑った。
「せっかくですから歓迎会でもと思ってケーキを買って来たんですが、その前にちゃんと覚悟を聞いておきたいって孝之助さんが言うので隠れてました。」
「俺はクラッカー買いに行ってたぞ!!」
「…モグモグ。」
「ヒナ!!食べるだけ食べて部屋に戻るな!!」
和気あいあいとした空気に佐奈が呆気にとられていると、孝之助が佐奈の肩をポンと叩いた。
「試すような事して悪かったな、度胸のいる仕事だから、覚悟ってもんが見たくってな。」
『じゃあ今までのは…全部嘘…!?』
「いやいや、それはホントだけどね!!」
ガクッと肩を落とす佐奈に、九条が笑顔で話し掛けた。
「佐奈さん、入り口に書いてあったでしょ?」
『へ…何て…?』
「"難有り"探偵事務所って。」
『…難有り…?』
「九条っちやめてよ~それじゃ俺自身が難有りみたいじゃんよ……ー」
ー…ガッシャーン!!!!!!!!!!!!!!!
『!?』
孝之助の言葉を遮るように鳴り響いた破壊音に、佐奈は驚き振り返った。
「冴嶋和泉ぃぃぃ!!貴様よくもうちのもんのエモノ持っていきよったなぁ!!下りて来んかいワレ!!!!!!」
「和泉、お客さんだよ。」
「やべ、ジジイの組のじゃなかったんだな!!アハハ!!!」
「アハハじゃないわバカ!!ケーキ食ってないで早く返してきなさい和泉!!!!ヒナこら手ぇかせ!!!!」
「ほらね?」
『…いやあああああ!!!!!!!!!!』
こうして佐奈の就活崖っぷち生活は21社目にして終わりを告げ、
難有り探偵事務所、もとい南在探偵事務所での波乱に満ちた新生活が
幕を開けたのであった…。
【01.】難有り探偵事務所 -END-
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