07.碧眼のサムライ
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ー…カラン…
『えっと、今回担当させて頂きます橘と…』
「冴嶋です。」
依頼人は物腰柔かい中年男性で、
和泉の名前を聞いた依頼人は、嬉しそうにニコッと笑って手を差し出した。
「あなたが冴嶋さん!!お会いできて…光栄です…!!」
「…?どうも。」
差し出された手を軽く握った和泉は一瞬動きを止め、何かに気付いたかのように依頼人をじっと見た。
「どうかしましたか?」
「…いや。」
『…?』
和泉の何かひっかかる態度が気にかかりながらも、佐奈は目の前の優しげな依頼人の話に耳を傾けた。
『えっと…失踪されたのはご友人の三隅隆弘さん…37歳ですね。』
「はい…お恥ずかしい話ですがお金を少々貸しておりまして…困り果てていた次第です…。」
『そうですか…分かりました!!ではこちらも早速調査に取りかかります!!』
佐奈の言葉を聞いて笑顔で頷いた依頼人は、その後少し細かい打ち合わせをすると、二人に深々と頭を下げて席を立った。
「では、宜しくお願いします。」
『はい、また何かありましたら連絡させて頂きます。』
「…おい。」
依頼人がドアのノブに手をかけようとした瞬間、今まで押し黙っていた和泉が声をかけた。
「あんた…仕事何やってる?」
『い…和泉さん?』
突然の和泉の問いに戸惑う佐奈の隣で、依頼人は一瞬の間をおいて答えた。
「………会社員ですけど、何か?」
「…そうですか、いや、何でもないです。」
『……?』
和泉がそう答え頭を下げると、依頼人はニコッと笑い応接室を後にした。
そして依頼人が立ち去った後も何か考え込んだような顔の和泉を、佐奈は少し心配そうに見つめていた。
..................................
ー…ブロロロロ
『…堅気の人じゃない!?』
あれから聞き込みと調査の為に車に乗り込んだ佐奈は、和泉から依頼人に関する驚きの事実を告げられていた。
「いやまあ…長年の勘ってだけだけど。」
『じゃああの依頼人の方…冴嶋組…なんですかね…?』
「さあな…。」
和泉は確信はないと言葉では言っていたが、その顔は確実にそうだと確信している顔だった。
『孝之助さんに伝えておいた方がいいんじゃありませんか…?』
「でも証拠もねーしなぁ…まあ様子見るしかねーだろ。」
和泉はそう言うと、車のシートにボスンと体を預けた。
次の聞き込みの対象との待ち合わせ時間まで一時間。
それまで時間を潰す事となった二人は、車を人目に付かない路地裏へと停車させた。
そこで佐奈は、今朝から気になっていた、和泉の目の事について尋ねた。
『和泉さんって…どことのハーフなんですか?』
「はあ?」
『す…すみません何でもないです…。』
和泉の被せるようないかつい声に佐奈がしゅんとすると、和泉がため息交じりにポツリと答えた。
「…フランス。」
『…フランス!?じゃあ…お父さんがフランスの方なんですか?』
「逆。母親がフランス人で親父が冴嶋組のクソジジイの息子。」
『そう…なんですか…。』
そこまで言って窓の外を険しい顔で眺めた和泉に、佐奈は話題を変えるように言った。
『じゃあ和泉さんのお母さんって…美人だったんでしょうね…!!』
「……?何で美人だったって思うんだよ。」
和泉はキラキラとした目の佐奈に、不思議そうに尋ねた。
すると佐奈は、和泉が今まで言われた事のなかった言葉を、大真面目に返した。
『だって和泉さんの目、すっごく綺麗でしたもん!!お母さん譲りの目の色なんでしょう?』
「…!?」
『隠してるの、勿体ないって思っちゃいましたよ!!』
「…!!」
そう言って屈託なく笑う佐奈に、和泉は驚き思わず顔を赤らめた。
この目は和泉が生きてきた中で、邪魔にはなれど勿体ないなどと思った事の無いものだったのだ。
和泉は赤くなった顔を隠すように、慌てて佐奈から目をそらした。
「お…俺も母親と一緒にいたのは小さい頃までだからあんま覚えてねえけど…」
『そうなんですね…。』
「ジジイが現れるまでは…それなりに普通の家庭だったんだけどな…。」
『冴嶋組組長のおじいさんですか…何があったんですか…?』
「…そうだなあ…。」
和泉は佐奈の問いに頷くと、ポツリポツリと話し始めた。
自分を生んだ母親の事、父の事。
そして、その家族がたどった道を…