07.碧眼のサムライ
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…ーバタン
『よし、早いとこ終わらそう…。』
本来の出勤時間の数時間前。
佐奈は昨日の残りの仕事を片付ける為、早朝から事務所に出勤していた。
ー……ザザザ…バシャ…
(水の音…ヒナさんシャワーでも浴びてるのかな…?)
南在探偵事務所は元々居住スペースを改装して作られた事務所で、普段仕事をしている部屋の奥には台所や風呂もあった。
そこで皆仮眠をとったり食事をしたりするのだが、ヒナは防犯と深夜の依頼受付をかねてそこに住み込んでいた。
(…お風呂上がりのヒナさんとか見たら動揺して仕事どころじゃなくなる…あっち見ないようにしよう…。)
佐奈は一旦呼吸を整えると、シャワーの水音を気にしないように報告書を書く為パソコンに集中した。
ー…パチパチパチ…パチ
(よしっ…後は印刷するだけ…あれ…インク切れてる…。)
佐奈は面倒くさそうに溜め息をつきプリンタを閉じると、
プリンタのインクを取る為、部屋の奥にある備品置き場の棚の扉を開けた。
…その時だった。
ー…バンッ
『わっ…!!!!え…え!?????』
「!!」
突如目の前に現れた人影に、佐奈は驚き目を丸くした。
ヒナだとばかり思っていた風呂場から出てきた人物は、薄い緑の瞳に、傷だらけの体の男だったからだ。
『き…きゃああああああ!!!ヒ…ヒナさんっ不法侵入者です!!!!!!!』
「…は?お前何言ってんの?」
『…へ?』
「佐奈、それうちのゲームバカ。」
佐奈の叫び声に部屋から顔を出したヒナが呆れたように言うと、佐奈はもう一度まじまじと目の前の男を見た。
『…え……和泉さん………!????』
「バカで気付くな!!…ったく寝ぼけたまんま出勤すんじゃねーよ、こっちは夜通し張込みで寝てねえっつーのに…。」
和泉はそう言うと、ガシガシとタオルで髪を拭きながらソファに腰を下ろした。
佐奈はなんだか申し訳ない気持ちになり、おずおずと和泉に近づいた。
『すみません勘違いして…何か雰囲気違うから別人に見えました…目、カラコンですか…?』
佐奈はそう言うと、和泉の綺麗な緑色の瞳をじっと見た。
和泉は急接近してきた佐奈に、少し顔を赤くしながら目をそらした。
「…ああ…いつものがな。」
『あーやっぱり……ってえ?いつものがカラコン!?』
驚く佐奈の問いから逃げるように、和泉はタオルを洗濯機に入れに事務所の奥に向かった。
「和泉ね、ハーフなんだよ。」
『…九条さん!!』
笑顔で出勤してきた九条が、驚く佐奈にこっそり耳打ちした。
「でもいつもは黒っぽいカラコンしてるの、何か昔嫌な事でもあったんでしょ。」
『え…じゃあ和泉さんあの髪の毛も地毛なんですか!?染めてるとばかり思ってましたが…。』
「なんか大人になるにつれて茶髪から銀髪になってったらしいよ。でもストレスかもね~そのうちハゲたりして。」
「おい!!聞こえたぞコラ!!!!」
「あはは。」
和泉の罵声を軽く笑って受け流す九条に、佐奈はまたこっそり尋ねた。
『あの…和泉さんの体の傷は…あれは…軍隊にいたっていう頃の…ですか?』
「"大半は"…そうだと思うよ。」
『…?』
「はいはーい、朝礼するぞー。」
九条の言葉を濁したような返答が気に掛かりながらも、佐奈は朝礼の為、自分のデスクへと戻った。
...................
『…人探し…ですか?』
「ああ、親友が突然いなくなちまったんだと。」
孝之助から渡された依頼書に目を通した佐奈は、不思議そうに尋ねた。
『こういうのって…警察に捜索願出したりするもんじゃないんですか…?』
「警察は毎日何百件と捜索願出されてるんだ、事件性が薄いならほとんど捜索なんかしてくれやしねえよ。」
『そういう事なんですね…。』
一人納得する佐奈に、和泉がニヤニヤと笑いながら言った。
「生きてるといいなあ、捜索対象。」
『…えっ!???またその手の話なんですか!?』
「人探しは対象が遺体で発見とかザラだぞ~。」
『………!!!!!』
思わず卒倒しそうになる佐奈をケラケラと他人事のように笑う和泉に、孝之助は淡々と言った。
「何他人事みたいに言ってんだ。和泉、お前も行くんだぞ。」
「え…ええええええええええええ!?何で!!こいつと組んでんのはヒナだろ!?」
「何か知らんが和泉の評判を聞いたらしく、依頼人のご指名なんだよ。後でヒナも合流させるから、先に依頼人から話聞いて下調べしてろ。」
「…何の…評判だよ…。」
『……フッ。』
「……佐奈てめえ今笑ったなコラ!!!!」
「依頼人来てんだからいーから早く行けっっ!!!!!」
そうして佐奈は夜勤明けでウダウダ文句を言う和泉と共に、依頼人の待つ応接室へ向かったのだった。
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