06.南在ゴーストバスターズ
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その後、どのくらいの時間が経ったのか
八十郎の事実を告げ沈黙を続けていた面々であったが、九条がその沈黙を割るように頭を下げた。
「すみません…私達の力不足で紀美子さんのその後までは分からず…中途半端で本当に申し訳ないです…。」
「いえいえとんでもない!!こんな見ず知らずの幽霊にここまでして下さっただけでも…本当に…!!」
そうして九条と八十郎が頭を下げ合っていると、突如玄関のドアが勢いよく開いた。
ー…バンッ!!!!!!
「中途半端な仕事とは…南在探偵事務所所長としては困るねぇ。」
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「こ…孝之助さん…!?」
突如現れた孝之助に四人と八十郎が驚いていると、孝之助は懐から一枚の古びた封筒を取り出した。
「まさか本当に幽霊相手の依頼だったとは驚いたが……西園寺紀美子さんからの手紙…確かに届けたぞ。」
『え…孝之助さん…どうやって…!?何で…!???』
「俺の人脈ナメるんじゃないよ、お前らの倍近くは生きてるんだからね。」
孝之助はそう言うとアパートの部屋に入り、八十郎に封筒を差し出した。
「神波八十郎さんあんた宛だ。紀美子さんが亡くなる間際、女中に託した手紙なんだそうな。見る覚悟があるのなら…俺が読んでやる。」
「孝之助さん…八十郎さん後ろです…。」
「え!?どこ…どこだよ!?紛らわしいな!!」
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「…。」
『…。』
(孝之助さん…………天地がひっくり返っても霊感なさそうだもんな……。)
「ゴホン…気を取り直して…紀美子さんからの手紙、開けるか?」
「宜しく…お願いします…!!」
「よっしゃ、任せとけ。」
孝之助はそう言ってニッと笑うと、八十郎では開けることが出来ない封筒の封を開けた。
中に入っていた便箋には、5枚に渡ってびっしりと文字が書き連ねてあり、
病床で書いたせいか字は弱々しかったが、その一つ一つに八十郎への想いが溢れていた。
八十郎と出逢った日に一目惚れしたこと
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八十郎の事が好きすぎて後を付けてしまったこと
八十郎が本を読む横顔を見るのが大好きだったこと
そして八十郎と付き合う事になって、本当に幸せだったこと
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そのどれも、紀美子が八十郎をどれだけ愛しく大切に思っていたかを知るには十分すぎるものだった。
そして手紙の内容はあの日の事に話を進めた。
あの日あなたが次第に冷たくなっていく傍で、私はただ泣き叫ぶ事しかできなかった。
あとほんの少し早く私が屋敷を抜け出せていたら、きっとあなたは死なずに済んだのだと思う。
ごめんね、本当にごめんね。
そしてあの後私は西園寺家に連れ戻されて結婚をし、あなたのお葬式にも行けなかった。
でもそれから間もなく私は労咳になり、床に伏すこととなりました。
今、病床でこの手紙を書いていますが、アパートに向かうあの日と同じ、嬉しくてたまらない気持ちでいっぱいです。
だって、あなた以外に触れられる事も無く、こんなに早くあなたに会いに行ける事になったのだから。
そして手紙はこうくくられていた。
今度の待ち合わせ場所は天国だね、
もうすぐ向かいますので、待っていてください。
「…!!!!」
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手紙を読み終えた孝之助を前に、八十郎の瞳からは堪えられなくなった大粒の涙が溢れていた。
そして、こぼれる涙もそのままに笑顔を作ると、九条や佐奈の方を見て照れたように言った。
「待ち合わせ場所…変更になってたみたいです…!!」
『ハチさん…!!』
「早く行ってやれよ!!」
「八十郎さん、良かったですね…!!」
八十郎が嬉しそうに頷くと、四人も笑った。
こうして八十郎は成仏することを決め、
"築87年のアパート幽霊退治依頼"は幕を下ろしたのだった…。