06.南在ゴーストバスターズ
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ー…パサッ…
それから一日、そしてまた一日、
佐奈とヒナは山程ある新聞の記事一つ一つに目を通した。
劣化も激しく読みづらいことこの上ない新聞に悪戦苦闘しながらも、
八十郎が紀美子の事を最後に少しでも知れるようにと、楽にしてやりたいと、必死だった。
『…ん?ああああっ!!!!』
突如佐奈が大声を上げ驚くと、周囲からの冷たい視線が降り注いだ。
「佐奈、ここ図書館。」
『あ…す…すみません…でもヒナさん…これ!!これじゃないですか…!?』
周囲の冷たい視線に何度も頭を下げながら、佐奈はヒナに新聞を手渡した。
「大正15年、上野…新興アパート前にて死亡事故…ホントだ…。」
『ですよねですよね?やっと見つけた…!!』
佐奈とヒナはやっと見つけた当時の事故の記事に目を凝らした。
だが次の瞬間、二人は言葉を失った。
『えっと…自動車と接触し、はねられた…………男……性……?』
「……神波…八十郎…。」
........................
ー…トントン
『ハチさん…入りますね?』
「あ、皆さんお揃いで…!!どうぞどうぞっ!!」
相も変わらず幽霊らしくない爽やかな笑顔で出迎える八十郎に、四人は堅い笑顔を返した。
そのぎこちない笑顔に何かを察したのか、八十郎はビクリと体を揺らした。
「八十郎さん、あの日の事について分かった事があるので今日は…」
「あ、そういえばこの間貰ったバナナですね、すごく美味しかったので…あ、いやお茶でも飲みませんか?ってお茶なんてないって‥」
「八十郎さん。」
明らかに話をはぐらかそうとしている八十郎に、九条は絞り出したような声で呼びかけた。
「あの時の事故で亡くなったのは紀美子さんじゃありません…何となく気付いてたんじゃありませんか…?あの時死んだのは…自分だって…。」
「…。」
「あの日外に出たあなたは車に撥ねられ即死だった。」
「あなたの亡骸にすがり付いて泣き続けていた女性がいたと証言して下さった方がいました…あまりの悲しみように記憶に残っていたと…。」
「その女性が…恐らく紀美子さんでしょう…。」
「…紀美ちゃんが…。」
「あなたがその事実を受け入れられなかっただけなのか、本当に覚えていなかったのかは分かりません、でも…」
「紀美子さんはもうここには来ない。でも……あなたを本当に愛してここに向かっていた、それだけは事実です…!!」
九条はそこまで言うと、声を詰まらせ俯いた。
普段あまり感情を表に出さない九条の辛そうな表情に、佐奈も胸が締め付けられた。
「…ありがとう、本当の事…教えてくれて。」
八十郎は四人に深々と頭を下げると、少し吹っ切れたように話し始めた。
「僕はずっとハッキリそう言われたかったんだと思う…諦め悪くて、紀美ちゃんも幽霊になっていつかここに来てくれるかもとか考えちゃったりしてさ…」
『ハチさん…。』
「でももう紀美ちゃんも…死んじゃってるんでしょ…?」
「…はい。」
「じゃあ…僕がもうここで待っている必要はなかったんだね…。でも紀美ちゃんがここに来てくれていたことだけでも分かって、本当に良かった。」
そう言うと、八十郎はまたいつもの笑顔でニコッと笑った。
だが87年分の想いを必死に覆い隠すような笑顔はとてもとても寂しそうで悲しそうで、
佐奈はいつの間にか溢れ出た涙を、必死でぬぐっていたのだった……。