05.夜蝶の姫君
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数日後、
報酬の支払いに訪れたるなは驚くべき変貌を遂げていた。
ー…ピーチチチ…
「…いや誰?」
「姫川るな改め、鈴木琴子ですっ♪」
呆気にとられる皆にニコッと笑うるなは、髪を肩までバッサリと切り派手な化粧もやめ、それまでとは全くの別人のようになっていた。
「姫川るなって源氏名だったのね…あのね、源氏名で探偵事務所依頼しないでよ…。」
「あはは、ごめんなさい~。」
呆れる孝之助にるなは笑って謝ると、今回の依頼の報酬を手渡した。
「ん…?何かかなり多いぞ?」
「いいの、迷惑かけたし、私の気持ちだと思って受け取って下さい。"姫川るな"が稼いだお金は…もういらないから。」
「それって…。」
るなは小さく頷くと、何かが吹っ切れたようにニッコリ笑った。
「これからはまた"鈴木琴子"として生きていきます。もうお店は辞めました…あの世界には戻りません。」
「そうか…じゃあ鈴木さん、これで依頼完了ってことで。」
「はい…!!本当に…ありがとうございました…!!!!」
深々と頭を下げ笑う"琴子"の顔は、今まで見た中で一番キラキラとしていて綺麗だった。
こうして№1キャバ嬢"姫川るな"はこの日を境に、歌舞伎町から姿を消したのであった…。
「佐奈ちゃん!!」
『あ…琴子さん…でいいんですよね?』
まだ少し慣れない様子で琴子を呼ぶ佐奈に、琴子は小さく耳打ちした。
「私も好きな人…出来たよ!!」
『えっ!?ま…まさかヒナさんじゃ…!????』
「違うわよ!!あんなパソコンオタク好みじゃないから!!」
『オタッ…!?ヒナさんはオタクじゃありません!!』
「「…?」」
小声で何やら楽しそうに話す女子二人を不思議そうに見ながら、和泉とヒナは首をかしげた。
そして琴子は小さく深呼吸をすると、平静を装い和泉の元へ近づいた。
「…和泉ちゃん!!」
「…おう、えらくまた雰囲気変わったなぁ。いいじゃねーか、そっちのが。」
「……どうも…。」
きっと何気ない和泉の言葉。
こんな社交辞令に近い言葉にさえいちいち一喜一憂してしまう自分に、琴子自身も心底驚いていた。
そして琴子は鞄に手を入れると、意を決したように借りていたジャージの上着を和泉に投げ返した。
ー…バサッ!!!
「私"一途に頑張る"ことに決めたの。一生守りたいって思わせてやるんだから…覚悟してなさい!!」
「じゃあお邪魔しましたっ!!!!!」
ー…バタバタバタ
「なんだそれ…。」
そう一言だけ言うと、琴子はバタバタと嵐のように去って行った。
残された和泉は呆気にとられながらも、一人小さく微笑んでいたのだった…。
........................
『…申し訳ございませんでした!!!!!』
その頃佐奈は、やっとあの日の失態をヒナに謝罪していた。
「別に…気にしてないから…。」
『…ヒナさん…!!』
「ただ次の日身体中筋肉痛になって起き上がるのも辛くて仕事にならなかったけど。」
(メチャクチャ根に持ってるーーーーーー!!!!!!)
『あわわす…すみません……!!!』
ヒナの言葉にこの世の終わりのように落ち込む佐奈に、ヒナは真顔でデコピンした。
「うそ。」
『へ…?嘘…?』
『あの…私他に何か失礼な事言ったりしたりしてませんでしたか…?』
「バカバカ言って暴れてた。」
(本当だったのそっちか~~~~~!!!!!!…じゃあ…あっちは…。)
佐奈はまたがくっと落ち込むと、再び意を決し恐る恐る尋ねた。
『ほ…他には…無いですよね…?』
「他…?」
........................................................
ー…ポカポカポカポカ
『うわ~ん!!和泉さんのバカ!!ヒナさんのバカバカバカ~!!!!!!』
ボトルを一気飲みして倒れた佐奈は、その後泥酔状態で暴れていた。
「しょーがねえなあ、俺が連れて帰ってやるよ。」
『和泉さん嫌です!!』
「何だとこの酔っ払いがああああ!!!!」
ー…ギャーギャー
「…すいません、佐奈連れて帰ります…後は和泉に任せますので。」
「分かった。あ、タクシー呼ぼうか?」
「いえ…乗らないって言ってるし、歩けない距離でもないんで。」
ヒナはるなに軽く会釈ををすると、だだをこねる佐奈を背負って店の外に出た。
ー…ヒュウ…
『う~…涼しいれす…。』
夜風が涼しい夜、ヒナは騒がしいネオン街を抜けて静かな川沿いの道を黙々と歩いていた。
『もう…寂しかったんですからー…。』
「分かった。」
『ヒナさん、ヒナさんのバカー…。』
「…もう分かった。」
『ヒナさん………私だけ…見ててくださいよぉ…。』
「………分かったから…。」
『…うっ…気持ち悪い。』
「…は…?」
『吐く……!!!!トイレに行ってきます!!』
ー…バタバタバター…ガンッ!!!!!!
「佐奈!?佐奈!!!!???」
..................................................................
「他には…吐くってコンビニのトイレに駆け込もうとして、自動ドアに顔面強打してた。」
『ええっ!??そ…それは…忘れて下さい……。』
「…本当に覚えてない?」
『…はい…え?なんでですか?』
「いや、別に。」
『…何!?ヒナさん!??ヒナさんってばーーーっっ!!!!!』
【05.】夜蝶の姫君 -END-
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