05.夜蝶の姫君
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一方その頃和泉はボディーガードの仕事のため、仕事を終えたるなを家まで送り届けていた。
ー…ガチャ
「ありがと、もう家着いたし大丈夫。」
「はーい、じゃあ俺はこれで。」
るなが無事に家に入ったのを確認すると、和泉は眠たそうにあくびをしながらるなの家を後にした。
「…ねえ!!お茶くらい煎れるから…寄ってかない?」
「…。」
№1キャバ嬢の誘いとはいえ依頼人の部屋に入るのも抵抗があったので断ろうとした和泉だったが、
るなの手が小さく震えているのに気付き、少しだけなら、とるなの部屋に入った。
「あ…熱いのがいい?それとも冷たいの?」
「…おかまいなく。」
るなの部屋は派手に着飾った外見とは裏腹に、綺麗に整頓され、荷物も驚くほど少なかった。
そして妙に目についたのが、後で取り付けられたのであろう幾重にも重なった鍵の数々だった。
「あんたこれ…。」
ー…ガシャン!!!!!!
「あ…ご…ごめん…落としちゃった…今…何か音しなかった…?」
「…?何も聞こえなかったけど…。」
先程より酷くなった手の震えと脅えきった目で辺りを見回すと、るなは割れたカップを拾い始めた。
その明らかに尋常ではない様子のるなに、さすがの和泉も心配そうに尋ねた。
「お前…大丈夫か?」
「大丈夫…全然大丈夫よ‥。」
るなの過去に何があったのかまるで知らない和泉だったが、
その尋常でない脅えようは、るなの痛々しい心の傷を露わにしたようだった。
ー…ピンポーン
「!!!!!!!!!!!!!!!」
深夜0時、突如鳴り響いたインターホンの音にるなが動けなくなっていると、その音は次第に狂気じみた音へと変わっていった。
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピン…
「い…やああああああああ!!!!!」
「ちっ…うるっせぇ……。」
鳴り止まぬインターホンの電源をるなが切ろうとすると、和泉がそれを止め返事を返した。
「…何だよ。」
「るなの裏切者。裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者裏切者!!!!!!!!!!!!!」
「…てめぇ…そこで待ってろよ…。」
ー…ブツッ
和泉はそう言うと、素早くるなの部屋からマンションのエントランスまでを全速力で駆け降りた。
ー…ハァ…ハァ…
「ちっ…逃げやがったな…。」
二人がインターホンのあるエントランスに辿り着いた時には既にストーカーの姿は無くなっていた。
だが、るながふとエントランスの集合ポストに目をやると、そこには信じられない光景が広がっていた。
「き…きゃああああああああああああああ!!!!!!!!」
「どうした!?」
その場にへたりこんだるなを押しのけ集合ポストのある部屋に入ると、そこには大量の紙切れが散乱していた。
その紙切れは全てるなの部屋宛のポストから溢れ出たもので、その一枚一枚には赤文字で"裏切者"とだけ書かれていた。
「おいおい…なんっつー暇人だよ…。」
「す…捨てなきゃ…こんなの…見られたくない…!!」
「お前……。」
がくがくと震える手でるなは、そこらじゅうに散らばった紙を拾い集め始めた。
その様子を見た和泉はハアと溜め息をつき、るなの肩に手を置いた。
「俺が片づけといてやるからお前もう部屋戻って寝ろ。」
「で…でも…。」
「朝まで玄関で見張っといてやるから…全然寝れてねえんだろ?お前。」
「っ…う…うわあああああああああ!!!!!!」
和泉の言葉にるなは、一気に張りつめていた糸が切れたように泣き崩れた。
そしてるなは和泉に促されるまま部屋に戻り、数週間ぶりにゆっくり眠ったのだった…。
.....................
ー…チュンチュン…
ー…ガチャ…
「…よお。」
「ほ…本当にいたんだ…。」
朝、目を覚めましたるなが真っ先に玄関のドアを開けると、そこには眠たそうに目をこする和泉が座っていた。
本当に朝まで玄関先にいてくれたことに驚きと安堵を隠せないるなは、溢れ出そうになる涙を飲み込んだ。
「昼間は友達の家に行くから大丈夫だから…。」
「そっか、じゃあ俺はまた店が終わる頃に迎えに来るわ。」
和泉はそう言うとあくびをしながら立ち上がると、るなの部屋の前から立ち去って行った。
「ねえ…!!」
「…?」
「…あ…ありがとう…。」
強気で人に弱みを見せたがらないるなが言ったた精一杯の言葉。
その言葉に和泉はニッと笑って手を振るとそのままエレベーターに乗り、まだ空気の綺麗な街へと消えていった…。