05.夜蝶の姫君
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ーキャハハハ!!!
『……。』
あれから一時間。
るなは別のテーブルに呼ばれ、佐奈はヒナに携帯を見てもらう美女たちを横目に一人グラスを空け続けていた。
(やっぱり付いてくるんじゃなかったかなぁ…。)
見る限りはヒナが楽しんでるとは思えなかったが、
目の前で好きな人が女の人に囲まれているのを見るのは、やはりどうにも息が詰まる思いだった。
「ねえ朝比奈さん~これはどうやってやったらいいの~?」
「お礼にこれ私の電話番号なの、朝比奈さん好みだから特別に教えてあげる♪」
『……。』
ー…イラッ
(…和泉さんは和泉さんで好き放題やってるし…もう、みんなヒナさんから離れてよ~~~!!)
そうは思っても自分はヒナの嫁でも彼女でもなんでもないただの同僚。
そんな事…本当は思う権利もないのだ。
佐奈は涙目になりながら、やけくそ気味に置いてあったジュースのボトルを手に取り全て飲み干した。
ー…ぐらっ
『あ…あれ…?』
「……佐奈?」
ー…ガシャーン!!!!!!!
佐奈がその飲み物を飲み干した瞬間、佐奈の目の前の視界はぐらりと反転した。
それが酒だったと認識する間もないまま、佐奈の意識はそこでぷっつりと途切れたのだった……。
........................................................
ー…ギシッ…
『ん………?』
ー…ガバッ!!!!!
『え……?…頭…痛っ…。』
ズキズキと痛む頭の痛みに佐奈が目をあけると、そこは見慣れた事務所の天井だった。
『あれ…?私何で…事務所にいるの…?』
「あ、目が覚めましたか。大丈夫ですか?佐奈さん。」
『く……九条さん…?』
全く状況が飲み込めない佐奈が体を起こすと、目の前にはコップの水を差し出す九条がいた。
『い…今何時ですか…?私何で事務所に…。』
「今23時ですよ。佐奈さん、ジュースと間違えてきっついお酒のボトル一気飲みして倒れたみたいです。」
『えっ…!?…そ…それは…ご迷惑おかけしました…!!!!!』
そう言ってズキズキと痛む頭を下げる佐奈を見て、九条は笑って首を横に振って言った。
「ここまで佐奈さん背負って帰ってきたのは、ヒナだよ。」
『・・・え?』
佐奈の酔いと頭痛を一気に覚ますような一言を放った九条は、
固まる佐奈の反応を見てまた面白そうにクスクスと笑った。
「何か佐奈さんタクシー乗りたくないって言ったらしくて、歌舞伎町からヒナ背負ったまま歩いて帰ってきたみたいだよ。」
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『・・・・・・・・!!!!!』
「覚えてない?」
(お‥覚えて…ない…!!!!)
驚きの事実が多すぎて一瞬で血の気が引いた佐奈は、一体何から聞いて何から謝ればいいのか頭の中がパンク寸前なままおずおずと尋ねた。
『それでその…ヒナさんは…?』
「さっき出て行ったから、コンビニに買い物行ったんじゃないかな?」
『そ…そうですか…。』
大事な仕事の邪魔をしたどころか歌舞伎町から恐れ多くも背負って帰らせて、
本当はあの綺麗なお姉さん達と話すのも凄くヒナさんが楽しんでたんだとしたら……
…最悪だ。
(どうせ嫌われるなら…最後にヒナさんの背中に背負われてた記憶くらい残しておいて欲しかった…。)
頭を整理し終わり状況が最悪だと気付いた佐奈は、思わずこぼれそうになる涙をぬぐった。
その様子を見ていた九条は、少し微笑み佐奈の頭をポンポンと撫でた。
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「ふふ…そんなに落ち込まなくってもヒナ怒ってないよ。むしろああいう場所嫌いだから抜け出せて良かったって。」
『へ…?』
「あとヒナ、キャバ嬢みたいな子タイプじゃないから心配しなくていいよ。」
『…な…何で…!?』
まるで佐奈の心を見透かしたかのような九条の言葉に、佐奈は驚き慌てたふためいた。
「あはは、ごめん。どんな反応するかと思って様子見てた。」
『~~~~!!!!九条さん…意地悪です…!!!!』
「あれ?今更気が付いた?」
そうしらじらしく言って笑う九条を、佐奈は顔を真っ赤にしながらポカポカ叩いた。
「でも、こんなに好きになってもらえて…ヒナが羨ましいなあ…。」
『…へ?九条さんだって彼女さんいるじゃないですか!!結婚目前だって…和泉さん言ってましたよ…?』
「さあ…どうなんだろうね…。」
『…?』
一瞬そうつぶやいた九条の顔が曇ったような気がしたが、またいつもの笑顔で九条は佐奈に笑いかけた。
その九条の様子を気のせいかなと気にかけながらも、佐奈は九条の横顔を見つめた。
「じゃあ僕は帰るから、帰るなら送るけど?」
『いえ…ヒナさんに謝りたいので…もうちょっと待ってみます。』
「そっか、分かった。」
九条は笑ってお疲れ様、と言うと、佐奈に手を振り事務所を後にした。
一人残された佐奈は思い出したようにズキズキと痛む頭を抑えると、その場にバタリと力尽きたように頭をうずめたのだった…。