04.寝癖と女心
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ー…チッ…チッ…
時計の音だけが響く室内。
この状況を警戒し初めは黙りこくっていた佐奈だったが、
パソコンとにらめっこしたまま一言も発しないヒナといるこの空気に早くも耐えられなくなっていた。
『あのそれ…私も聞いてみちゃだめですか?面白そう…。』
ヒナがずっと聞いている集音機が気になった佐奈は、興味津々に近づいた。
「別に面白くないけど…はい。」
そう言ってヒナに渡された片方のイヤホンを耳に付けた佐奈は、その場に凍りついた。
「ああっ!!!あん…そこは…はああ!!」
「はあ…はあ…ズル…グチュ…」
『・・・・・・!!』
イヤホンから聞こえてきたのは隣の部屋で行われているであろう行為の最中の喘ぎ声だった。
その予想を遥かに超えた衝撃に、佐奈は顔を真っ赤にして素早くイヤホンを外した。
「だから面白くないって。」
『・・・・・・。』
真顔で顔色一つ変えずに言うヒナを、佐奈は変なものを見るような目でまじまじと見つめた。
(こ…こんな喘ぎ声とかやってる音とかあんな無表情で聞いてたの!?この人~!!!!!!!!)
「…途中で必要な情報が聞こえれば録音するからそれを後で聞けばいい。女が聞くには耐えないと思…」
『いえ………………聞きます…。』
「?」
『私だって探偵のはしくれです…これくらい聞けます…!!』
佐奈はそう言うと、ヒナから片方のイヤホンを再び奪い耳につけた。
それは何も他に手伝えることもなかった佐奈のせめてもの意地でもあった。
ー…ギシッ…ギシッ
「んああっ!!あんっ!!ああっ…!!」
「……。」
『……。』
静かな部屋に二人、イヤホンを片方ずつ付けヒナと佐奈は黙って隣のあえぎ声とベッドの軋む音を聞き続けた。
(何か…変な気分になってきた…。)
仕事だとはいえラブホテルの一室で、更に耳からはいやらしい音ばかりが聞こえている。
この完全に妙な状況に佐奈は頭のネジが外れ、ヒナを見上げて思わず素直過ぎる疑問をぶつけてしまった。
『あの…仕事とはいえ、こういう状況で…その…そういう気になったり…しないんですか…?』
「…?」
『あ…いえ…!!えっと…そっか、横にいるのが私じゃそんな気にならないですよね!!く…下らない事聞きました忘れてくださいすみません!!』
「…。」
(わあああ私何言ってんだー!!!!!!!!!これじゃ手出してくれないんですか?って聞いてるようなもんじゃん~~~~~!!!!!!)
カアッと赤くなる顔をおさえて俯く佐奈に、ヒナは表情を変えることなく答えた。
「別にそういう気に、なってないわけじゃないけど。」
『へ…?』
その思いもよらなかったヒナの返答に、佐奈は驚き顔を上げた。
イヤホンを二人で使っている為顔をあげるとヒナの顔は目の前にあり、佐奈が顔を赤らめうつむいた…瞬間だった。
「ハァ…ハァ…今度はジョイントやってやろうか‥なあ…。」
「!!」
突如イヤホンから聞こえた男の言葉にヒナは動きを止め、注意深く聞き入った。
『ヒ…ナさん…?』
「黙って。」
「やっぱこれ吸ってからやると全然ちゃうやろ…?」
「うん…気持ちよくなってきた…もっと…もっと…。」
「お前も好きやなぁ…。ほんなら今度はもっと楽しめるやつを持ってきてやるけんの…。」
『ヒ…ヒナさんこれって…?』
「…マリファナ。やっぱりこの男…薬のブローカーだ。」
『……!!』
先程までのふわふわとした空気は一変し、ヒナはまた隣の会話に注意深く耳を傾けた。
辺りに漂う妙な緊張感に佐奈もまた仕事モードに切り替わっていた…
はずが、どうしても先程の事が頭から離れず一人悶々としていた。
(さっきの言葉は……つまり…イヤイヤイヤイヤ私の方こそ何て事聞いてんのって話よ!だいたい普通の男の人ならこんな状況、好き嫌い関係なくそんな気分になるに決まって…というか今仕事中………)
「佐奈、コード踏んでる。 」
『ええっ!?あ、はい!!!!すみません!!』
ヒナに声をかけられただけで声が裏返ってしまった佐奈は、バツが悪そうに縮こまった。
(あああもう!!忘れるんだ!!邪魔しないで~~~!!!!!!)
それから夜がふけ隣から音が消える時まで、ヒナと佐奈は隣の盗聴を続けた。
そしてそれは佐奈にとって、
とても長い長い夜に感じたのであった…。