Re:6 掌の雪
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【一ヶ月後。】
ー…ゴオオオオオ……
『んー…おかしいなぁ…この時間の飛行機なはずなんだけど…。』
「どれどれ~ちょっと見せてみなさいよ、出口が違うとかじゃないの?」
ヒナが警察での仕事を終えアメリカに旅立って今日でまる一ヶ月。
無事に手術を終え回復し、今日の夜着の飛行機で日本に帰ると言っていたヒナを佐奈達は迎えに来ていた。
「いやあ悪かったね高虎くん、車出してもらっちゃって…。」
「いえ…とんでもないです!!こちらこそ琴子さんまでご一緒させていただいて…!!それにしても朝比奈さん驚くでしょうね、こんなに大人数での出迎え…。」
「はは…まったくだよ。」
孝之助はそう言ってアハハと笑うと、到着ゲートを今か今かと待ちわびる佐奈達を見た。
皆口ではそっけないことを言っていてもやはり仲間が戻るのは嬉しいようで、その嬉々とした表情に孝之助もまた頬を緩めた。
「孝之助さん、それにしたって少々遅くはありませんか?もう全員降りてきたみたいなんですけど。」
「ええ~?お前らちゃんと見てたのかよ~あんなでかくて長髪で目立つ奴そうそういないってのに…。」
「……あの…。」
「ったくヒナ迷子かよ~…あ、ほらほらちょうどこんな……て…ん?」
「俺ですが…。」
「へ?」
「ただいま戻りました。」
『「え……・・・ええええええええええ!!!!!!!!?髪!!!!!」』
誰もいなくなった空港のロビーに、響き渡るような大声で驚いた一同の前に立っていたのは、
腰元まであった長い髪をばっさりと切ったヒナの姿だった。
そのヒナの予想外の変化に、恐らく誰も到着ゲートから現れたヒナに気が付いていなかったのだった。
『ヒ……ヒナさ…髪…切って…いや…それよりもあの……おかえりなさい…!!!!!!!!!!』
「…ただいま。」
一ヶ月ぶりに会ったヒナの顔はどこか穏やかで、切られた髪のせいもあってか別人のようにさえ見えた。
色々な思いで涙ぐみ上手く言葉が出て来ない佐奈に、ヒナは何も言わず佐奈の頭をポンポンとなでた。
「その後の経過はどうよ、もう良さそうか?」
「…はい、ご心配おかけしました…。」
「全くだ、てっめえのせいでこっちは仕事倍になってたんだからな!!明日からこき使ってやる!!」
「和泉こんなこと言ってますけど…ヒナの手術の日、電話の前で不自然にうろうろうろうろして仕事ほっぽり出してましたからね。」
「あ…あれは依頼人の電話待ってただけだっつの!!」
「……。」
わいわいと言い争い笑い合う、そんな何も変わってない自分の大切な人達を、ヒナは一人安心したようにその様子を眺めた。
ほんの数時間前にノアに泣いて見送られ
日本に戻ればこうして涙ぐんで迎えてくれる仲間がいる。
"これからは好きなだけ笑って泣いて怒って生きろ、リョウ!!"
ふと思い出したノアに最後に言われた言葉。
ヒナは自分がいつの間にか一人ぼっちでは無くなっていたことを改めて噛み締め、皆にペコリと頭を下げた。
「あの…長いことわがまま聞いてもらって本当にありがとうございます。明日からまたどうぞ、よろしくお願いします……!!」
『「・・・・!!」』
「え‥?何か……」
『ヒ……ヒナさんが…爽やか…!?』
「ヒ…ヒナお前といえばあの陰気で根暗でキノコ生えそうなのが売りだろうがよなんだその爽やかな言葉は!!気持ち悪!!!!」
「髪とともにアイデンティティー消失しちゃってますよ。」
「ヒ…ヒナ…ノアさんにちょっともっかい連絡してみるか?どっか回路繋げ間違えてるとかじゃ…」
「・・・帰ります。」
「あははは冗談だってヒナ~!!よし、せっかくだから皆でこのまま飲み行くぞ~今日は俺のおごりだから高虎くんも琴子ちゃんも好きなだけ飲んでな!!」
「やだおじさん羽振りいいじゃない~!!じゃあ私ロマネコンティ飲みたーい☆」
「ロマ…!?わ…私も出しますよ南在さん!!!!!!!!!!」
がやがやと空港を後にする皆の少し後ろで、佐奈は一人久しぶりに見るヒナの横顔を眺めていた。
そんな佐奈の視線に気付いたヒナは、そっと皆の輪から外れ佐奈の横を歩き始めた。
「佐奈、これ。」
『はい?』
「あげる。」
そう言って突然ヒナから渡された小さな箱を、佐奈は驚きながらも嬉しそうに受け取った。
きっとアメリカのお土産なのだろうと思いながら気軽に開けた箱の中身を見て、佐奈は言葉をなくしその場で足を止めた。
『へ…ヒナさん……これって…お…おみやげじゃ…ない…?』
「うん。」
『これって……』
「ずっと一緒にいて、佐奈。」
『………!!』
口数少ないヒナらしい、少し足りない言葉。
でもその少し照れたような優しい笑顔と、佐奈の掌の上にあるあの日の雪の結晶のようなその指輪が、全てを物語ってくれた。
佐奈は溢れ出る涙を何度も拭いながら、その不器用なプロポーズに答えを返した。
『……っ…はい…私も…ずっとずっと…一緒にいさせてください……!!』
「…ありがとう…佐奈…。」
「…えっ!?佐奈何泣いてんのよ……ってええええ!?」
『ははは…いや…あの…ははは…』
「孝之助さん、佐奈と結婚することになりました。」
「「えええええええええええ!????」」
まさか自分達の背後でプロポーズが行われているとは思いもよらなかった皆は、本日二度目の響き渡る驚きの声を上げた。
そんな中、琴子は佐奈の指にある指輪を見て、更にその顔色を変えた。
「めっ…メガネ君…!?これハリーウィンストンでしょ!?佐奈これめちゃくちゃ高いやつよ芸能人とかがよく買う…!!」
『め…めちゃくちゃ高いやつ!?確かにダイヤがかなり大きいような…こ…これそんなに高いんですか…?』
「分かんないけど婚約指輪は給料三ヶ月分だとノアに言われたんで…。」
「佐奈!!メガネ君確実に年収一千万以上稼いでるわよ!!!!ロマネコンティおごりなさいよーーー!!」
『いっ…いっせんまん!?!!!!!』
「んなんっだとおおおおお!?!!?おっさん同じ職場で激しく給与格差が生まれてんだけど!!!!」
「ヒナ大口取引多い上に、講義とかセキュリティソフトの金も毎月入ってますしそんなもんでしょ。」
「そもそもやり手がこんだけそろってうちの事務所が儲かってないわけ無いだろ~お前もヒナ見習ってサボらず働けっ!!!」
「みっ…皆さん指輪の値段や年収よりもまずおめでとうが先なのでは…」
ガヤガヤと大騒ぎする皆の声は夜の空に消え、
その後ヒナのおかえりパーティー(という名の飲み会)は、結婚お祝いパーティーに名前を変えて行われた。
宴は夜遅くまで行われ、高虎の心配をよそに"もう本当にいいです。"とヒナが真顔で言うほど、
酔い潰れる酔っ払い達に、夜通しおめでとうと言われ続けたのでありました…。
「「おめでとーーーーっ!!!!」」
「だからもういいです……。」
【 Re6:】掌の雪 -END-
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