Re:5 魚と最後の夏休み
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ー…ザザーン…
『うわああ…!!最高の海日和ですね!!』
「うわああ暑っち~!!」
「……。」
「暑い…。」
晴れ渡る青空に澄み渡った海、そこは人気の海水浴場からは少し離れた知る人ぞ知る穴場のビーチだった。
人もまばらで絶好のスポットを前に喜ぶ面々を横目に、九条は一人浮かない顔で目の前の青を眺めていた。
「九条っち、海には別に入らなくっていいんだからさ!!そう浮かない顔すんなって!!」
「…はあ。」
「えーと…先に準備してくれてるって話だったけど…お、いたいた!!おーい!!」
「?」
孝之助が砂浜をキョロキョロと探し回り声をかけた方に目を向けると、そこには見慣れた顔が揃って手を振っていた。
「あ、佐奈~所長さん~こっちこっち~!!」
「どうも、ご無沙汰しております!!」
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『こ…琴子さんに…高虎さん!?』
浜辺で手を振る琴子たちに驚きながら、皆は三人の方に駆け寄った。
「んもー来るの遅いわよ~!!」
「ご無沙汰しております、皆様、若。」
『こ…孝之助さん琴子さん達も誘ってたんですね!?びっくりしました!!』
「だからあんなかたくなに連れて行こうとしたんですか…。」
「だーってバーベキューなんだから、人数は多い方が楽しいだろうがよ!!」
そう言って孝之助が指さした浜辺際には佐奈には見覚えのない、だが明らかに一般人ではなさそうな二人が必死に火を起こしていた。
その様子に何かを察知した和泉は、明らかに嫌そうな顔を浮かべた。
『…あれは……?』
「獅子尾に亀……なーんでお前らがこんなとこにいんだよ!!」
「若。」
「えっ若!?げっ!!」
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「おいクソ亀、何がげっだ聞こえたぞコラ。」
「ぎゃあああだって若、息をするように俺の事いじめるっすもんんんん!!」
「だいたい冴嶋組はどうなってんだよ…組長と幹部二人が揃いも揃ってバーベキューの火起こしかよ!!」
「…高虎さんのご命令ならば、火起こしだろうと火あぶりだろうと何の問題もありません。」
「相変わらずだなお前…。」
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和泉が呆れたようにそう言うと、佐奈がおずおずと不思議そうに尋ねた。
『和泉さん…こちらの方々は…?』
「あー…そっちの片目は獅子尾、そっちのバカは亀。どっちも虎の昔っからの下っ端。」
「ひどい!!若ひどい!!俺だけ紹介も名前も超適当やないですかい!!亀じゃない!!亀名ですっっ!!」
『かっ…亀名さんと獅子尾さんですね、よ…よろしくお願いいたします。』
「……爪が短い、いい。」
『へっ!?』
突如佐奈の綺麗に切りそろえられた爪をじっと見ていた獅子尾は、うんうんと納得したように頷いた。
そんな獅子尾の行動に戸惑った佐奈との間に、呆れたように琴子が割って入った。
「佐奈怖がらせないの獅子ちゃん!!この人爪長いと風紀を乱すから切れ切れうるさいのよ。」
『お…お父さんのような方なんですね…。』
「そーよ、今日も虎ちゃんと二人で行くって言ったのにやれ危ないやらやれ護衛が付いて無いから連れてけってしつこくて……」
『……………。』
「何よ。」
面倒くさそうにもどこか幸せそうな様子の琴子に、佐奈は頬を染めニヤニヤと琴子を見た。
『何だか幸せそうで何よりで♪』
「……あんたもね。」
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そう言うと佐奈と琴子は嬉しそうに笑い合った。
そんな二人をよそに浜辺からは美味しそうな肉が焼ける匂いがたちこめ、二人はまたニッコリと笑った。
「ほらそこの女子二人~早く来ないと食っちまうぞ~!!」
「もう肉ねえぞ~!!」
「ちょっと待ちなさいよレディファーストでしょ~!!」
『私も食べたいですーっ!!』
こうして南在探偵事務所と冴嶋組による夏の終わりの一日限りの夏休みは、
炎天下の空の下、始まったのであった。